12.31.2013

[film] Only Lovers Left Alive (2013)

31日 - 本日の昼間、新宿でみてきました。 お片づけはどうした。

Jim Jarmuschによる吸血鬼映画。
デトロイトに住むアダムがTom Hiddleston、その妻でタンジールに住むイブがTilda Swinton、LAに住むその妹がMia Wasikowska、タンジールに住む長老がJohn Hurt。

人目を忍んで闇夜に生きている。人は襲わずに病院から調達したO型のRHマイナスをグラスで飲み干す。武闘派ではなく、音楽とか読書とか文系の世界にしっとり暗く浸っている。
もう何百年も生きているけど絶滅危惧種で、でも自分たちで種の維持とかを考えているわけではないらしい。

別の族との抗争や共闘があったり、人間との恋愛や戦いがあったり、つらい逃避行があったりするわけではない。 冒頭のターンテーブルのシーンのように、その針(牙)が時間の溝をどこまでもぐるぐると削りながら回っていく。その様を上から俯瞰するものはおらず、その回転は永遠に続くかに見えて、曲の終り、溝の終端はやがてやってくるだろう。

その様を非情感たっぷりに描くのでも激情のエモで埋めつくすのでもなく、走っていく車とそこを流れていくデトロイトの路面(ターンテーブルのイメージ)、そこにえんえん流し込まれていく抑えこまれた憤怒を、まっかな血のしたたりと夜の光のなかに浮かびあがらせる。 木製のたった一発の銃弾と共に。

前々作"Broken Flowers" (2005)でも前作"The Limits of Control" (2009)でも、Jim Jarmuschはぶすぶすと内に向けて怒っていたが、今回はそれがより明確で、人間達を「ゾンビ」と呼んでゴミ扱いしている。そうだよねえ、彼らから見たら人間こそが肉の腐れたなれの果てだよねえ。
ゾンビが殲滅されるべきものであり吸血鬼もやがて滅びて行くものである以上、両者は永遠に相容れることはなくて、唯一言えるのは - "Only Lovers Left Alive" なのだ。 わかったか。

"Thor"でのぼんくらっぽい姿しか知らなかったTom Hiddlestonがあまりにかっこよいので驚いたが、それ以上にTilda Swintonのすばらしいこと。 あの鳥類としか思えない横顔と容姿、ふたりが変てこに絡み合って横たわる寝姿の妖艶なこと。 吸血鬼の夫婦としか言いようのないふたり。

あと、おいしい血をいただいて満足げに笑う牙付きのMia Wasikowskaがまるで猫のようでかわいい。
あと、Anton Yelchinはただのロシア人(でぶ)になりつつあるのね。

Jozef van Wissemの音楽はガレージでゴスでブルージーで、澱んだギターノイズのなかに永遠がある。 新宿武蔵野館のぜんぜんよくない音響でも、であるからこそどっしりそこに居座る、そんな質感の音。

もういっかい見たいなー。


映画を見終わって、いいかげん帰ってお片づけをしないと、なのだったがデトロイトの部屋にアナログ盤とか音楽機材一式を置いて戻らぬ旅に出てしまったアダムの潔さと力強さを見習うべく、もう一本見て帰ることにした(殴)。

シネマヴェーラの今年最後の1本。"Die Austernprinzessin (The Oyster Princess)" (1919) -『牡蠣の女王』。
2010-2011年、MOMAのワイマール映画特集 - "Weimar Cinema, 1919–1933: Daydreams and Nightmares"で見て、ほんとに大好きになった1本をふたたび見よう! ということで。

牡蠣の王様の娘の結婚のどたばた喜劇でめちゃくちゃなのだが、半裸も入浴もベッドインもあってエロくてすごいの。 リメイクするとしたら姫をLena Dunham、パパをJohn Goodmanでおねがい。

しみじみくそったれだった2013年もあと1時間をきりました。 くそったれ。
よい新年をお迎えくださいませ。

そして2013年ベストの検討に入ります。

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