6.12.2013

[art] PUNK: Chaos to Couture

8日の土曜日は映画いっぽん("Frances Ha")だけ。 9日の日曜日は、11時まで仕事があって、そのあとでばたばた、展覧会2 - 映画2 - ライブ0.5。
この日は、Puerto Rican Day Paradeの日だった...  つまり、Uptown方面の地上の道路網は壊滅状態になるので、移動がなかなか面倒になる。

このMetropolitan Museumの展示もぜったい見なければ、のやつだった。
Alexander McQueenのときみたいにぱんぱんだったらどうしよう、だったのだが11時半くらいに行っても、がらがらだった。
まあね、Metに$25払ってPunkを見に(聴きに、じゃない)くるひとなんて、そんなにはいないよね。

少し前のNew York Magazineに在NYの(自称)Punk100人に聞きました、という特集があって、なかなかちゃんとしたサーベイで、おもしろかった。
CBGBのトイレを知ってるひと? という質問に"Yes"だったのは30人くらいだった。 そんなもんなのよ。

展覧会を入ってすぐのところにそのトイレの実物大複製が展示されている(中には入れないし、当然小便もできない)。
きれいすぎてぜんぜんだわ。 どうせなら匂いと煙も再現すべきだったのよ。 この世のあらゆる腐臭と異臭に塩素をまぶしたあれを。

他の実物大だと、70年代末のSeditionariesの店内が再現されている。 こっちは行ったことないけど、これも文句でるだろうなー。

途中で気づいたのだが(おせーよ)、これはあくまでMetのCostume Instituteの展示であって、Punkの音楽や思想や背景を紹介するものではないのだった。
Metのサイトの紹介にもあるようにPunkのコンセプト(のひとつ)である"do-it-yourself"と、Coutureのコンセプトである"made-to-measure"の連関にフォーカスしている。  どこまでもマイナーでアンダーグラウンドであることとか、反体制とか、その身体や身振り、といったあたりはスコープには入っていない。

あるいは、MetのCEOが言っているように“Punk’s signature mixing of references was fueled by artistic developments such as Dada and postmodernism” というあたりとか。 
なるほどなー。 言いようだなー。

Punkがふざけんじゃねえよこのあほんだら、と破って切り裂いて粉みじんに破壊しつくしたその後で、撚り合わされていったその糸、その切れ端がいかにHigh Fashionとして、新たなエスタブリッシュメントとして組み上げられ、肥えたブタであるところの顧客を取り込み、自身のシステムをより強固なものとしていったのか、そのしたたかでやーらしい策略と謀略の、マーケティングの目線をこれでもかと見せつけてくれる。

教科書的にはこれぞCreation! これぞArt! なのだろうが、Punkにしてみればこれこそが下衆の極み、John Lydonがその目をひんむいて糾弾し、Post Punkがモグラ叩きで潰していこうとした廃棄物としてのPunk、Punkの死、については当然のことながら触れられていない。 Punkこそがファッションを活性化し、新たな血と快楽(=金づる)をもたらした革命的なムーブメント(けっ)だったのである、と。

たぶんそうなのだろうし、歴史を否定するわけでもないけど、でもやっぱしそれはPunkそのものとはなんの関係もないんだよ。
Punkって、Punkするまさにその瞬間のことで、それって時間のアートであるところの音楽が自身の身体に突き立てたナイフ、ギターの電撃、ドラムスの爆竹、それだけでしかなくて、それなのに、それゆえに、そこに開いた穴には大量のゴミだの汚物だのが流れこんでくる(CBGBのトイレみたいに)。 その醜悪で腐敗した構図を美の殿堂であるところの美術館で堂々と曝してみる、という倒錯した目線、目配りがもう少しあってもよかった。 Curatorの Andrew Boltonさんはたぶんわかっていて、入口に便所を配置したのもそういうことなんだろうが。

Punkはどこまでも敗者の、Loserのものなの。 ここに展示されているのは勝ち誇った勝者の旗であり、レッドカーペット用の制服でしかない。 この落差。

あとね、決定的なこというと、蝋人形館とおなじで、ださいわ。 
日本のファッション誌によくでてる「ロックな」という形容がどこまでいってもださいのとおなじく。
Punkはライブハウスにあるもんでしょ。 ここにある服を着てライブなんか行けないでしょ。 とか。

でも、10000歩譲って、お子様にはよいのではないか。 とか。

出口の売店のとこで売っていたTシャツ: Vivianのが$100、Rodarteのが$115、Moschinoのが$355、Givenchyのが$665。
何人もの客が両手をあげて「ふぁああーーっく!」て言ってた。

革命はまだまだ遠いようだ。

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