12.10.2011

[film] Mysteries of Lisbon (2010)

4日の日曜日(もう一週間前かあ..)、Brooklyn MuseumのあとでBAMに行って見ました。

BAMのCinematekでは、12月の頭から"Sound and Fury"というタイトルでポルトガル映画特集をやってて、そのなかの1本。 ちなみに同時期にLincoln CenterのFilmのとこはルーマニア映画祭やってた。 どっちも知らない世界ばっかしだったのだが、せめてこれくらいは、と。

昨年他界したチリ生まれの映画作家、Raul Ruizの遺作。原作は19世紀のCamilo Castelo Brancoの小説。 元々は1時間 x 6回のTVシリーズとして製作されたものを編集したもの。

休憩が1回はいる272分。この前の週は237分のだった。 これやると日曜の午後がぜんぶ潰れてしまうのだが、どっちにしても見れる機会がそうあるとは思えないから見よう、と。

そして"A Brighter Summer Day"もそうだったように、これもある時代の、ある場所の少年の彷徨いをみっちり描いていく。 ただ、そこに流れる時間のありようは、やはり、まったくちがう。

大枠は、孤児院に預けられている14歳のJoãoの自身の出生の謎を探る旅、なのであるが、途中からなにがなんだかわからなくなっていく。関わってくる人物がそのまま自身の過去を語り、更にその中の誰かがどっかに飛んで、誰かが誰かになって、記憶と回想とそれらを語る複数の声が交錯し反響し、どこに連れていかれるのかわからないようなナラティブのなかに閉じ込められてしまう。

Joãoが常に持ち運んでいる(母が与えたものだ)小さな玩具の舞台のなかですべては進行していくかに見えて、その舞台装置もまた、少年の置かれた時間のなかにある。

そんなふうに過去がまるごとぶちこまれた装置の総体を"Mysteries"と呼ぶことができるのかもしれないが、そこに難解さやとっつきにくさは全くなく、むしろ目眩を引きおこすような美しさが延々続いていくのでうっとりしているうちに終ってしまう。ソクーロフの「エルミタージュ..」のあの驚異が、どこを切っても、どこから見ても溜息がでるような瞬間の持続が4時間続く。

ポルトガル語の語り、何を考えているのかわからない顔、何かを考えている顔、強い目、建物の天井、壁、調度、光と影、晴れと雨、いろんなドレス、ひらひら。

でもこれは美術館ではなくて、これが、これこそが映画的経験としか言いようがないもので、そのために用意された4時間だったのだねえ、と。


ぜんぜん関係ありませんが、BAMのCinematekではこのあと、”Adventures in the 80s with David Gordon Green”ていう特集が始まったの。

"The Sitter"(Jonah Hillさいこう、たぶん)を作ったDavid Gordon Greenセレクトによる80年代の5本。 いいよねえ。見たかったよう。

- Risky Business (1983)
- Adventures in Babysitting (1987)
- Uncle Buck (1989)
- After Hours (1985)
- Something Wild (1986)

Jonah Hillにはもうちょっと歳取ったら"Uncle Buck"のリメイクをやってほしい。
だからあんま痩せないでね。

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