12.13.2011

[film] Winter's Bone (2010)

一日だけ会社行ったってどうなるもんでもない、脳みそすかすかでなにも入ってこないし、昔のはぜんぶ忘れてるし。
そんな金曜日の晩、やけくそになって日比谷でみました。

見ておかないと次に帰ってくるころには終わっちゃいそうなやつ。
そいで、昨年、見そびれていたやつ。

山奥の村で、弟と妹と精神を病んだ母親とくらしているRee (Jennifer Lawrence)は、保釈中の父が行方不明になってて、このまま見つからないと父が勝手に担保にして置いていった今の家から出てってもらうことになる、と告げられる。

で、ひとりで身寄りとか伝手を頼って父の消息を尋ねていくのだが、誰ひとりいい顔はしなくて、首を突っこむな、と言われるし、脅迫みたいなことまで受ける。 彼女はそれらを通して、父はもうこの世にいないのだな、ということを悟り、今度は彼の死体を探すことにする。 彼の死を証明できない限り同じ目にあうことは見えているので-。

ものすごく寒くて冷たい、どんづまりの世界がここにはある。
それは、Occupied...の人たちが主張する99%のなんかとか格差とか、そういうのとは全く異なるレイヤーにあるそれで、社会の法とか流通とは別の経路にある掟、みたいなとこで動いていて、でも彼らはずうっとそうやって生活してきた。

Reeが迫害されるのは父の死の真相を探ろうとしたから、というよりは掟の外側で動こうとしていたからだ、ということが彼女にも、見ている我々にもわかってくる。 そういうふうにある社会とその端っこに立っているひとりの女の子の後姿が、ミズーリの冬の荒んだ景色(潰れた赤茶色の)と"Winter's Bone"というタイトルから寒風のようにこちらに向かって吹いてくる。

そんな守ってくれるんだが虐めてるんだかわからない親族共にたったひとり仏頂面で立ち向かうJennifer Lawrenceの存在感がすばらしいのだが、もうひとり、やさしくはないし狂犬のヤク中だし、でもなにかと彼女の側にいて動いてくれるおじ(父の兄)のTeardropを演じるJohn Hawkesもよいの。

このひと、こないだの"Martha Marcy May Marlene"でもMartha Mayを骨抜きにしてしまうカルトのリーダーをほとんどおなじ存在感で演じていたが、なんだろうね。 
がりがりの犬顔男と丸っこくてぶすっとした猫娘の組み合わせ。

犬とか牛とかいろんな家畜と同じ列でじーっと生きて動いているこれら、その風景がひたすら圧倒的なの。 すごいものが映っている、というよりはフィルムを塗りつぶすかのような光と湿度、水の冷たさが、まったく晴れ間と若葉のない世界がそこにある、ということが。
逃げ出そうとあがくわけでも、がんじがらめで身動きがとれないわけでもない、ただのぺたんこな地面としてそこにある、そういうー。

あと、2010年にこういう映画が出てきたことの意味を考えてみることだよね。

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