水曜日の晩、Film ForumのFritz Lang特集はやっぱしちゃんと見ておけばよかった、という気に突然なって、もう残り時間も限られてきたし、”You Only Live Once” だしな、ということで帰りぎわ、9時半の回だけ見る。 併映の"You and Me" (1938) - 『真人間』 は見れず。
"You and Me" で 『真人間』 もそうだが、これの邦題 - 『暗黒街の弾痕』 - も相当よくわからない。 けどいいや。
国選弁護人の秘書をしている明るく気だてのいい娘さん(Sylvia Sidney)が刑務所から出てきた暗い彼(Henry Fonda - もう3回ムショに入れられているので後がない)とようやく一緒になれて、結婚しておうちも買って、彼も今度こそ更生してがんばるぜ、だったところにいろんなケチがついて、ホテルは追いだされるわ失業するわ強盗にさせられるわでどんどん転落していってもう世間なんてしらん、になってふたりで絶望的な逃避行にでるの。 しみじみついてなくてかわいそうなの。
DVDのパッケージには"Bonnie & Clyde"や"Natural Born Killers"の先がけとなった作品、とあったが、あれらほど強烈ではないし、『夜の人々』 - ”They Live by Night” (1949) ほど泣けるものでもなかった。 なんでだろ。
恨みがあったりやけになったりして世間に反撃に出るはなしではないし、さんざんひどいめにあったということとふたりの境遇や強い愛を対比してどちらかを際立たせるようなつくりにはなっていない。 タイトルの主語は"They"ではなくて、"You"で、つまりは更生しようとがんばる(でもどこか目が虚ろで変だ)Henry Fondaとそれを簡単には許さない世間と、それでも彼を盲目的に信じて愛する彼女と、彼の理解者である神父と、それらが織りなすドラマとして描かれているからかも。
牢獄の延長としてある格子模様の社会、それでも"You Only Live Once" と言い放つ冷たさ。
この冷たさがベースにあるが故に、Sylvia Sidneyのうるんだ瞳とか頬をつたう涙がほんとに美しいのだし、そんな彼女がずうっとそばにいてくれて、最期に神父の声も聞こえたし、上出来なじんせいだったのでは、とかおもったらいけないのかしら。
そういう冷たさとか異様さ、というのはLangのドイツ時代のねっとりした影を引き摺っているようで(この作品はLangがHollywoodに渡ってからの2作目)、主人公が出所するときの刑務所の描写とか、けろけろカエルの前で愛を誓うふたりとか、進み方がそのはじめっから全く穏やかではないので、そういうことよね、とか。
なんか似ているかも、と思ったのは溝口の『近松物語』(1954)あたりかも。
あれもかわいそうなお話しだったけど、暗くてねちっこくて、でも全体としてはなんか美しいのよね。
あれとかこれとかを美しいと言ってはいけないのだろうか、と倫理のねっこに目を向けさせるようなところもね。 で、世紀の名作というのはこういうのを言うのだとおもった。
で、まだ氷点下なの。
2.11.2011
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