日曜日、天気はとってもよかった。でもお天気とは関係なく、映画3本みて、ライブ1本いった。
この日はアストリアのMuseum of the Moving Imageで、昨年ニュージーランドのアーカイブで突然発見された75本のフィルムのうち、John Fordの"Upstream" (1927)のリストアされたやつがNew Yorkプレミア上映されるということなので、これは行かないわけにはいかないの。
そうすると、その前後もついでだし、ということになって3本。
そのあとのライブは、これはこれでしょうがないのね。(人生て、しょうがないことまみれなのよね)
昼間の明るい時間帯に久々にアストリアのあの辺を歩いてみる。
周囲はいろいろ変わっていておもしろかった。
通りの反対側にFrank Sinatra School of the Arts ていうでっかい建物ができていた。
でかでかと、"Founded by Tony Bennett" て書いてある。
ここに入学したらみんなSinatraとかTony Bennettみたいなぎんぎんのエンタテイナーになって出てくるのかしらん、とか。 校歌はやっぱし"My Way"なのか、とか。
おなじく通りの反対側に5 Napkin Burgerができていた。
これは、はっきりと危険だ。
Moving Imageに1時半くらいに入って、カフェでりんごのデニッシュとコーヒーを頂いて、やっぱしなんか洗練されちゃったねえ、と思ってシアターに入ってみたら、いた。
金曜の晩の映画は若者向けだったからか、かつて常連だったじいさんばあさんがぜんぜんいなかったの。
けど、この日は演目のせいもあるのか、うようよいて、例によってどうでもいいような映画のことばっかりべらべら喋ってる。
なんか、放流していた鮭が戻ってきたのをみたような、いや、戻ってきたのは自分のほうなのだが、なんとも言えないかんじになった。 この、映画を取ったらあとになにも残んなさそうな老人たちの居場所を奪ってはいかんよね、て。
で、2時から上映されたのが、メキシコ産のサイレント映画で"The Ghost Train (El tren fantasma)" (1927)ていうの。 電車もの、タイトルからするとオカルトホラーみたいなのか、ひょっとしたらブニュエルのメキシコものみたいにシュールなやつかと思っていたら、結構ちがった。
ある駅に赴任してきた電車技師が、駅員の娘にひとめぼれするのだが、彼女にはアプローチかけてきている別の男がいて、そいつが実は闇の電車窃盗団のリーダーで、女もふたまたかけてて、結構悪いやつなの。
で、窃盗団をなんとかやっつけるのと、彼女をこっちに寄せるのと、ふたつの話のあいまに電車(蒸気機関車ではなくて、当時最先端の「電車」)がびゅーん、て走っていくかんじ。
殴り合いとかどんぱちとか、馬から電車に飛び乗るとことか、スタントなしでがんばっているのでそれなりに迫力あっておもしろいのだが、どちらかというと窃盗団のなかのいろんな顔キャラ、特にいつも煙草ぷかぷかふかしているガキ"Chango"とか、そっちのほうがよりおもしろかったりする。
この作品、当時世界を侵食しつつあったハリウッド映画に対抗すべくメキシコが国の威信をかけて作ったやつで、国内では大ヒットして、そいで世界のマーケットにうってでようとしたら世界大恐慌でおじゃんになった。
と解説には書いてあった。 でもメヒコ! てかんじでおもしろいよー。
尚、作品のピアノ伴奏は、ここでのサイレント上映には欠かせないDonald Sosinさん。
ひさしぶりでしたね。
5:00からはJohn Fordの”Upstream” (1927)
今年の元旦、一番はじめにみたのがJohn Fordだった。 だから今年はJohn Fordの年なの。
この作品は長らく、John Fordの失われたサイレントの1本(Fordのサイレントは全部で60本以上はあって、残っているのは1ダースくらいだって)、とされてきたやつで、こいつが昨年NZで見つかった。 発見されるやいなや20世紀FOXが即座にこいつをひっつかんで西海岸に運び、強制入院、袋叩きするかのようにリストアしたのがこれ。 早かったねえ。
今回の特別上映では、伴奏がDonald Sosinさんだけでなく、バイオリン、クラリネット、ドラム、ヴォーカルのバンドが入る。 当初は有料、て書いてあったが、結局Museumの入場料だけで、メンバーは勿論タダ。
本編の前に、同じく今回の発見のなかに含まれていたFordの"Strong Boy" (1929) - これも失われた1本とされている - の修復された予告がかかる。 ううう、これもめちゃくちゃおもしろそうなのに(涎)。
”Upstream”はバックステージもので、NYのどこかの貧乏下宿屋に間借りしている劇団・芸人一座の変なひとたちをざーっと描いて、そこからひとり、演技はさえないけど、苗字(家系)だけはちょっと有名なやつがロンドンのハムレットの上演に呼ばれるの。 下宿のみんなは喜んで、そのなかにはそいつの彼女もいたのだが、とりあえず送別会して、送りだしてあげる。
そういうみんなの支援とか祈りもあって、彼の演技は異国で認められるのだが、そのけっか、もともと嫌なやつだったのがすんげえ鼻もちならないやろうになっていくの。
他方、彼女は彼女のことを好きだったナイフ投げの若者と一緒になることにして、よりによってその結婚式の日にそいつが帰ってきて-。
とにかく、ぜったいおもしろいんだよう。
下宿の変な住人ひとりひとりを紹介するかたちでディナーのテーブルがはじまって、そこで一気にいろんなことを説明してしまうとことか、演技にまったく自信のないやつがハムレット俳優として目覚める(勝手に思いこむ)瞬間の描写とか、ナイフ投げが彼女にプロポーズする(ぼくはナイフを投げるけど、きみはぼくにお皿を投げるんだよね)とことか、最後、かつての恩を忘れたやろうにみんなして仕返しするとことか。
作品解説の紙には、当時FOXに招かれて"Sunrise"を撮り始めたムルナウからの影響について、或いはこの作品の前後にベルリンに渡ってムルナウのとこで映画製作のノウハウを学んできたFordに、当時のドイツ映画からの影響はあったのかなかったのか、ようなことが書いてあったが(わたしはムルナウをそんなに見ていないので判断しようがない)、例えば、いまMOMAでやっているワイマール映画特集のあいだに挟んでも、そんな違和感ないかんじはした。
表情やひとの動き、部屋や建物の組みかた、とかすべてがすごくきちんと組みたてられた枠のなかにあって、でもどこを切っても不思議とチャーミングでおもしろい。 このおもしろさは、けっこう謎の秘薬なのかも。
2.01.2011
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