疲れた、というのとはちょっと違って目がまわってて、2本目が終わってロビーに出てしゃがみこんでいたら、すぐ目のまえにJonas Mekasさんがいたので、せんせいー、って平伏しそうになった。 トレードマークのつば広帽ではなくて、ぴっちりしたニットを被っていた。
この日の3本目は、7:00から、Gillian Armstrongによるオーストラリア映画"My Brilliant Career" (1979)。
だからなんで香港電影の武闘映画からオージー乙女映画に突然飛ぶよ?
客のこともすこしは考えたらどうかね、とか思ったが、両方見てたひとって殆どいなかったかも。
マイルズ・フランクリンの同名自伝小説の映画化で、邦題は『わが青春の輝き』、翻訳本は岩波少年文庫から出ているもよう。
映画のほうは、オーストラリアン・ニューウェーブ(ヌーヴェルバーグ)の古典と言われているやつで、殆ど女性のみのスタッフで撮られているそう。
"My Brilliant Career"とかいうと、今の日本だと就活のはなし? みたいになってしまうのかもしれないが、ここでのCareerは野望とか志(こころざし)とか、そういうやつのほうね。
とにかくすばらしかった。 これは青春の輝き、としか言いようがないし、それ自体が堂々と輝いている作品だとおもった。
まだぴちぴちですっぴんのJudy Davisが主人公のSybyllaで、茶色のちぢれ毛のそばかすだらけのはねっかえりで、生活が苦しいので祖母の邸宅に預けられていろいろ学ぶ。 母は由緒ある旧家の出なのに出自ではなくて愛で結ばれる結婚を選んだが故に苦しい生活を強いられている、と説明を受け、ぼんくらとの縁談とかいろいろ来るし、ほんの少しのロマンス(これもまだぴちぴちのSam Neill)もあったりするのだが、あたしは小説を書きたいんだ、と断固つっぱねる。
いつの時代にも、どこの地方にも必ずある「現実をみなさい」というばばあの国からの警句に対して、彼女のちぢれ毛が逆立ち、瞳が怒りに燃え、「このくそあまー」と口が歪む。 あたいは絶対負けない。 そんな少女のあらゆる表情と挙動を一瞬も、一滴もとりこぼさないことにスタッフは全神経を注いでいるかのようだった。
だから終盤、更に家が苦しくなって、農家の大家族に丁稚奉公にだされて糞まみれみたいな生活に入ってもまったく画面のトーンは揺るがず、湿っぽくきついかんじにはならない。
Brilliant。
この強くて断固負けないかんじは、最近でいうと”Bright Star” (2009) のなかにもはっきりとあった。
あれもオーストラリアで、オーストラリアの少女映画にはウォンバットのように地味だけどどっしりとしたなにかがあるのかもしれない。
リストレーションのおかげかも知れないが、全体に画面が、屋外でも室内でも、どこを切ってもレース織りみたいに見事にきれいで、ずうっとうっとりしながら見てた。
ふたりが走りまわって枕でぼかすかやるシーン、いいよねえ。 やってみたいねえ。
監督のGillian Armstrongにとってはこれが劇場長編デビューで、このひとはこの後、94年に『若草物語』を - そういえばBAMのSusan Sarandon特集でなんでこれを上映しないのか? - Winona Ryder - Trini Alvarado - Kirsten Dunst - Claire Danes - というすんばらしいキャストでつくった。
昔の『若草』にくらべて弱いとかあるのかもしれないが、94年という年に、この映画がこのキャストで作られたことの意義を、そろそろ誰かちゃんと書いたりしない? もうどっかにある?
ああそれにしても、79年か80年頃に、ちゃんとこの映画に出あっていたら、こんなザマにはならなかったかもしれないねえ、としんみりしつつ帰った。
2.15.2011
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