10.12.2022

[film] They Were Expendable (1945)

10月1日、土曜日の夕方、シネマヴェーラのジョン・フォード特集で見ました。
この日3本目のジョン・フォード。結局これがジョン・フォード特集の終わりになった。邦題は『コレヒドール戦記』。

真珠湾攻撃の後の日本軍がもってきたフィリピンの戦い(1941-42) をベースにしたWilliam Lindsay Whiteによる同名の本(1942)が原作で、中心のふたりの軍人にはモデルがいる。タイトルをそのまま訳すと「彼らは消耗品だった」で、邦題はよくわからない - コレヒドールが主な戦地になっているわけでもないし。

冒頭、米海軍のPTボート部隊を指揮するBrick (Robert Montgomery)が提督にボートの機動力や俊敏さをデモする(まだ実戦経験なし)のだが、あまりアピールしなかったらしく、Brickの仲間のRusty (John Wayne)は戦闘に参加したいのにつまんないから転属願いを書いていたら真珠湾攻撃が起こって、続けて日本軍がフィリピンに侵攻してきたのでそれどころではなくなる。

PTボート部隊での出撃以前に右手の怪我をなんとかしないとやばい、となったRustyは病院に入って、そこでSandy (Donna Reed)と知り合って仲良くなったりしている脇で、PTボートは犠牲者を出しながらも戦績をあげて認められるようになっていって、でも戦局はどんどんひどくなって撤退したりマッカーサーとかの幹部をオーストラリアに移送したりする必要が出てきて、各地を転々と敗走していくなか、PTボートもBrickのとRustyのの最後の二梃になっていって…

一応最初にマッカーサーの米軍を讃える言葉も入って、明らかに米国/軍の戦意高揚映画として作られてはいるものの、ここで描かれている戦争は米軍がどんより敗走していく様を描いてあんまりかっこよいものではない(かっこよい戦争なんてないけど) – はっきりとロクなものではなくて、死んでいく兵士もいっぱいいるし、RustyとSandyの恋も電話線頼りになって切れたままになるし、BrickもRustyもPTボートを使ってそこそこの手柄をたてるけど、全体から見ればそんなにすごいことでもなさそうで、タイトル通り”They Were Expendable”として使われたりたらい回しにされたりしていくばかりのような。 最後だってPTボートが使えそうながわかったので米国に戻って量産のラインに入ってほしい、って言われて飛行機で帰国できることになったのに、直前にやーめた、って前線に戻ろうとするし、そんなんでいいのか?

誇張したってしょうがないのでやけくそのようにそのままを描いたらなんだかざらっとかっこよいふうになった – これってボグダノヴィッチがフォードから聞きだそうとした『敗北における栄光』のようなものかというとやっぱりそうでもないような。人は死ぬし離れ離れになるし船は必ず壊れれるし戦争が止むことはないし – この限りにおいて勝ちも負けもあるとは思えないし、それらが意味を持つようにもみえないし – つまりはみんな消耗品なんだよ、それだけ、って。

そういうなかでぽつんと描かれるRustyとSandyのやりとりとかふたりのダンスがすばらしいの。ほんとに一夜の、あの時だけだったにしても、あの場にいたふたりは消耗品ではなくて、あそこで生きて恋のなかにいた。

戦闘の場面は軍の協力もありお金をかけているせいか、結構ダイナミックですごい - 構図とか『地獄の黙示録』(1979)なんかで見たようなのが既にあったり(ヘリコプターの空撮はないけど)、海の飛沫とか火の粉とかどこから飛んでくるかわからない銃弾 - 『肉弾鬼中隊』のあれ - などに囲まれて翻弄されていく中で、John WayneもRobert Montgomeryも他の男たちも、泣き叫んだり慟哭したりすることもなく極めてプレーンな表情で言われたからやるだけ – どうせ消耗品ですから、みたいに戦地に向かっていく。喜劇でも悲劇でもないし善だの正義だのもしらん – そこには”Mary of Scotland” (1936)のMaryのようなつーんと突っぱねる何かがあって、なんかいいなー、って。

自分が戦争ドラマに求めているのはたぶんこういう平熱だったり冴えなかったりのいろんな顔が出てきて淡々と吹っ飛ばしたり吹っ飛ばされたりするやつで、それは名前が少し似ている「娯楽大作」 - “The Expendables” (2010 - )の楽天さともぜんぜん違って、今だったら”Andor” (2022 - )あたりにありそうなやつ。そういえばこれも”Rogue One” (2016)も、人の間でドロイドが印象的な動きをするよね。

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