10.04.2022

[film] Bucking Broadway (1917)

9月27日、火曜日の晩、シネマヴェーラのジョン・フォード特集で見ました。

邦題は『鄙より都会へ』(読み:ひなよりとかいへ)。サイレントで、失われたものとされていたが2002年にフランスのアーカイブで発見されたものだそう。

ワイオミングのカウボーイ、Cheyenne Harry (Harry Carey)が牧場主の娘Helen (Molly Malone)と恋におちて、義父となる牧場主(L. M. Wells)からも認められて、彼女にお守りみたいのも渡してにぎにぎしていたら都会から馬の買い付けに現れたThornton (Vester Pegg)がHelenに近寄って、都会人が.. ってバカにしていたら暴れ馬とかも軽く乗りこなしちゃったりしたのでHelenはぽーっとなって、いきなり置手紙をして彼とNYに駆け落ちしてしまう。

あーあ、ってしょんぼりするHarryと義父のふたりだったが、ある日Helenからの手紙に渡したお守りの半欠けが同封されているのを発見し、これはヘルプを必要としているにちがいないぞ! ってひとりでNYに乗りこんでいって、これの裏で並行して馬の受け渡しにNYに向かう牧童たちがいて…

最初から展開は見え見えなのだが、パーティ会場に潜入して見るからに楽しんでいないHelenと地元に戻るなり傲慢で乱暴な本性を露わにしたThorntonを見るなりHarryの拳がうなりをあげて、でもひとりなので返り討ちのぼこぼこに… ってなったところでブロードウェイを馬で疾走してくる牧童たちの雄姿が!(弁士がいたら壇上でバシバシ引っ叩きまくって壇をこわすとこ)彼らがブロードウェイを北上してくるのを正面からとらえていてかっこいい。

で、連中が一斉に帽子をぶん投げてから始まる狂乱の乱闘シーンは遠近とかめちゃくちゃなのだが、そのダイナミックさ込みで沸騰していくかんじで、とにかく都会野郎なんてやっつけちまえ! なので異議なし。

それにしても、わかんないのはなんでHelenは見るからに怪しくて胡散臭いあんなのにぽーっとなって付いていっちゃったのか、って。そういうもんかしらー。

あと、ついていた伴奏音楽がややじゃんじゃかやかましすぎて、そこだけ。


Steamboat Round the Bend (1935)

9月27日の晩、↑ のに続けて見ました。問答無用の『周遊する蒸気船』

上映前に蓮實重彥さんのトークつき。今回の特集で彼のお話しを聞いたのはこれが初めて。チケットなんて取れないし。

Will Rogersの話、フォードにおける船の映画の話、当たり前かもだけど完成された話芸としか言いようがない面白さ。淀川長治さんと蓮實さんが最初に出会ったのはフィルムセンターでのこの作品の上映の時だったと聞いて、そういえばお二人が並んでいるのを見た最初って、シネセゾン渋谷で『生きるべきか死ぬべきか』(1942)の一回きりの上映があった時だったなー、とか懐かしく思い出した。でもそこよりも、あの晩は『生きるべきか死ぬべきか』の底抜けのすばらしさに唖然として、自分のなかで何かが変わったことははっきりと記憶している。

『周遊する蒸気船』。前にも一回見ていて、めちゃくちゃすごい(変な)ことはわかっていたので、淡々と余裕で入って、タコの足みたいに蒸気船が自分で自分を燃やしながらぶっとばし始めるあたりから前のめりになる。お酒を手放すことができないFrancis Fordが怪しげなお酒「ポカホンタス」(実際にあるのか少し調べてみたけど、なさそう)をボイラーにひゅん、て投げこんだらどかん!って爆発する一連の動作がキートンの映画みたいにおかしくて最高で、画面の向こうでもたまんねえなこれ、ってかんじでどかんどかんやりだして止まらなくなる。そもそもは、殺人の冤罪を着せられた甥を絞首台から救うために預言者のNewモーゼ(Berton Churchill)- 超うさんくさ - を探せ! ってなんだか思い出すのもどうだってよい適当でいいかげんなホラ話みたいなやつで、最後には絞首刑と結婚式が紙一重で交錯する。そこになんでぼろぼろの蒸気船(ぴーっ)で突撃してしまうのか、っていうばかばかしさ(とっても褒めてる)。

あと、出てくるのは変で狂った男(老人)とか蝋人形(燃料)とかばかりなのだが、婚約者のAnne Shirleyだけ浮きあがったように可憐で、そこの奇妙な非現実感もすてきだった。 こういうのに想像しただけで吐きそうな「国葬」の日に浸かることができてよかったなあ。

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