5月8日の午後、シネマヴェーラの特集『アメリカ映画史上の女性先駆者たち』で見ました。
この特集で見た最後の1本。女性映画というより最強の猫映画だった..
H. Allen Smithのベストセラーになった同名小説(1946)をDorothy Davenportが脚色してArthur Lubinが監督したもの。
主演猫のOrangey - 映画のなかでは目の色までYellowだと言われている - は獣たちのオスカーであるPATSY Awardsをこれと”Breakfast at Tiffany's” (1961)で受賞している。「ルバーブ」って、ジャムとかになるおいしく赤いあれじゃなくて、野球とかの乱闘を指す、というのは知らなかった。猫がジャムを作る or 舐める話だとか、ルバーブみたいに赤い猫の話なのかって思っていた。
冒頭、凶悪な顔だちの猫がシャーッて威嚇して犬を追いかけて、それだけで痺れる - そんな人向け。
万年ダメ球団The Brooklyn Loonsのオーナーの大富豪 - Thaddeus J. Banner (Gene Lockhart)がいて、ゴルフ場の草叢に住みついていつもゴルフボールを横取りするので顰蹙をかってて、どんな犬が来ても追い返してしまう猛野良猫のすさまじい闘争心に惚れて、部下で球団の広報をやっているEric (Ray Milland)に猫を捕獲して屋敷に連れてくるように命じる。Ericは散々な目にあいながら大金を投じた捕獲作戦を決行してなんとか猫を持ち帰り、 Thaddeusは猫を「ルバーブ」と名付けて幸せに暮らしていくのだが、亡くなるときに「ふふふ」って膨大な遺産全額をルバーブに遺しちゃったものだから大騒ぎになる。
ただの世話係からルバーブの膨大な遺産も含めた後見人になったEricは球団マネージャーの娘のPolly (Jan Sterling)との結婚が延びちゃうし、さらに彼女が猫アレルギーであることがわかったりの踏んだり蹴ったりで、自分たちのオーナーが猫であることを知った球団選手たちがふざけんな、って拗ねて、でもやがてルバーブにタッチしてゲームに出ると勝利のご利益があることがわかったので球団の守護神にしたり、遺産を持っていかれて気に食わないThaddeusの娘のMyra (Elsie Holmes)が訴訟 – 本当のルバーブは実は死んでて今いるのは別の茶黄猫にちがいないとか – を起こしたり、いろんなことがばたばたと勃発して、そういうのに真面目に応対していくRay Millandは偉いなあ、って。
こうしてルバーブのご加護のもと順調に勝ちあがっていくBrooklyn Loonsは、ついにNY Yankeesと頂上対決のときを迎えるのだが、賭博のノミ屋の元締めであるNYのギャングが損したくないからルバーブを誘拐しちゃって、いろいろと絶体絶命になるの。
あとはルバーブに会いにいっつも球場に(飼い主に連れられて)やってきて彼をじっと見つめる女の子猫のこととか、ギャングのアジトを抜けだしてマンハッタンの8th Aveからブルックリンまで渡っていくルバーブを狂ったように追いかけるメディア - 手伝ってやれよ - とか、最後まで猫を中心にまわっていくお金、組織、恋愛、スポーツ、賭博、裁判、病気、と猫を境目にきれいに分かれていく善玉と悪玉とか、どこまでも猫がまんなかにいる世界のありようがすばらしい。 しかもその中心にいる奴ときたら図太い睨み顔に鋭い爪と牙をもつ「乱闘」って名前の猫なんだから。
これらの騒動の渦中にある戯画化された猫の扱いとそれに振り回されて(一部)滅茶苦茶にされる人々の挙動をおおよそそのまま「女性」 - ファム・ファタールとかに絡まってくるあれこれに置き換えたときに見えてくるものっていろいろある気がして、もちろんDorothy Davenportはそこまでを狙ったわけではないだろうが、そんな見方もできる。それくらいによくできた、懐の深い猫活劇映画で、ルバーブがのしのし歩いているのを見るだけでよくてさ ← ただの猫バカ。
今回の特集『アメリカ映画史上の女性先駆者たち』は、ここまでで、過去に見たのも含めてだいたい見たかったのは見れたのでよかった。もちろん、まだ見ていないのもものすごくいっぱいあるのであれこれ見ていきたい。「女性映画監督」も「女性映画」も「女優」も関係なくよいものを市場で手に取るように見れればいいね、なのかもしれないが、残念なことに世界はまだぜんぜんそこまで行っていないからー。
5.18.2022
[film] Rhubarb (1951)
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