5月2日の晩、ヒューマントラストシネマ渋谷のJacques Rivette特集で見ました。これは見たことないやつだった。160分。
どうでもいいけど、”Merry Go Round”というとThe Replacementsの曲がぐるぐる回り出す病。
撮影はWilliam Lubtchansky。ネルヴァルの『火の娘たち』から構想された四部作が”Duelle (Une quarantaine)” (1976)と”Noroît” (1976)で頓挫し、78年に撮られたもののRivette自身も倒れたりして、81年に漸く形になった作品。
冒頭からバスクラリネット(John Surman)とコントラバス (Barre Phillips)のデュオの音がぶっとい蛇のようにうねうねぬたくる - 彼らの演奏風景はしばしばバイクのエンジンをふかすかのように挿入される - 中、ミステリーなのか犯罪なのか冒険なのかサイコなのか、とっ散らかったお話しが転がっていく。
音楽については”Duelle”でも”Noroit”でも展開されるドラマの横 - 内側でライブで演奏される構図があったが、ここでの演奏風景はドラマの場面とは切り離されて - 本編撮影後に別で撮られて挿入されたものらしい - でも一番やかましくぶっきらぼうに鳴り響いて気持ちよい。
パリのElizabeth (Danièle Gégauff)からの手紙を貰った妹のLéo (Maria Schneider → 途中から彼女が降りてHermine Karagheuzに替わる)がローマから、(Ex-?)彼のBen (Joe Dallesandro)がNYから飛んできて、同じホテルの隣同士になって睨みあう。
ふたりでElizabethに会いに行っても彼女はいなくて、情報を細々と撚りあわせていくと、富豪で飛行機事故で亡くなったはずの彼女たちの父は実は生きていて、彼の遺した保険金だの遺産だのがスイスの貸金庫にごっそりあるらしいのだが、鍵とかその暗証番号を握っているのがElizabethとLéoで、Elizabethは会えたと思ったらJean-François Stévenin(空手使い)などによりどこかに連れ去られて、LéoとBenが協力したり疑ったりごろごろ食事したりしながら謎とか番号に近づいていく - 数字の”3”がヒントだとかー。
やがて彼女たちの父親の愛人だったShirley (Sylvie Matton)が実はBenの姉でもあって、裏の真ん中でなにか企んで動いているらしいとか、Shirleyの雇った怪しげな霊媒師 - Julius (Maurice Garrel)が出てきたりとか、父は本当に生きているのかやっぱり死んでいるのか、遺産なんてあるのかないのかあるんだったら何処に? などを巡って愛しあうべきか殺しあうべきかやっぱり逃げたほうがいいのか、のような駆け引きが延々続いていって止まらない。
この頃のRivetteお得意の地下の陰謀とサバイバルのゲームがもろ70年代のOld Waveふうファッションでもって走り込み/追跡/逃亡劇として展開されて、妄想なのか現実なのか、森のなかを逃げ回るBenを鎧甲冑に白馬の騎士が追いかけたり、ドーベルマンの群れが追いかけたり、砂漠に追いこまれたLéoに大蛇が絡みついてきたり、いろいろ大変な試練にごたごたが何度も繰り返され、これらの変てこ一連隊が同じような家とか場所の周囲をぐるぐる回り続ける - これがMerry-Go-Round。 もちろん簡単に真相 - Merry-Go-Roundを回している/真ん中にいるなにか - は明かされなくて、ようやくそれらしい男がでてきたと思ったらめちゃくちゃ胡散臭いMaurice Garrel(素敵)だったり。
こうして散りばめたいろんな要素を更に散文調に蹴散らしながらふたりの女性がパリの街を彷徨っていくのがこの後の『北の橋』 (1982) とかで、これはパリの街を”Merry-Go-Round”ならぬ双六にして巡っていくのだが、この地点からははっきりとなにかを吹っ切ったパンクの香り - デニムから革ジャンへ - がしたり、そういう点でも過渡期なのかもしれない。 それでも十分におもしろかった。
他の作品のようにあまり特定の町や土地 - パリとか島とか - には縛られていない、ふつうの家やホテルの屋内と外とか森とか海とか砂丘とかの中と外 - 屋内ではだいたいごろごろして外に出るとバイクや車で走って追いかけっこ、というのの繰り返しもあって、そのなかではサーディン缶(トマト)でディナーするところがたまんなくて食べたくなる - あれとバゲットだけでいい。 あとは唐突にでてくる子猫の凶暴なかわいさときたら。
5.10.2022
[film] Merry-Go-Round (1981)
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