2.21.2022

[film] Operation Mincemeat (2021)

ひとつ前に書いた「クマ王国」とシチリア侵攻繋がり(こちらは実話ベース)なので、先に書いておく。
2月18日、金曜日の晩、Tohoシネマズの日比谷で見ました。『オペレーション・ミンスミート ―ナチを欺いた死体』

これの少し前に同名のバーレスク・ミュージカルもあるようだが、こちらはシリアスな歴史ドラマで、監督はJohn Madden、原作はBen Macintyreの”Operation Mincemeat: The True Spy Story that Changed the Course of World War II” (2010)で、原作者自身もコンサルタントとして参加している。 英国でのリリースは4月、米国は5月だそう。

“Minced Meat”だったら『ひき肉大作戦』になって最高だったのだが、Mincemeatなので、ミンスパイのフィリングの乾物と軟物の混じったあのぐじゃぐじゃ(割と好き)になる。それでも作戦名としてはなんか素敵かも。

冒頭、暴風雨のなかの深夜、隠れ家で息をひそめて祈るように連絡を待っているチームがいて、そこで突然電文機ががしゃがしゃ唸りをあげて電文を打ちはじめる..

第二次大戦中の1943年、シチリア侵攻を計画していた英国軍だったが、あそこはドイツが最新鋭兵器でがっちり固めていて正面から攻めるのは無理。それならば、と諜報部 - MI5が計画したのが、英国はギリシャへの侵攻を計画中、というそれっぽい偽機密文書を用意した偽の軍幹部の溺死体に持たせて、スペイン沖に流す。あの近辺に何かを抱えた英国軍人の死体があがった、となるとその沿岸はドイツスパイの密集地帯だから食らいついてくるに違いない、というやつで、冗談にしてもおもしろいよな、みたいに思っていたらチャーチルからまさかのGO! が出てしまったので、全員がこれの捏造工作に向けてばたばたしていくことになる。

中心にいたのは少佐のEwen Montagu (Colin Firth)と大尉のCharles Cholmondeley (Matthew Macfadyen)で、Charlesは兄がインドで戦死していて、Ewenは弟にロシアでのスパイ疑惑がかけられていて、それぞれに家族の事情がある。

まずは身寄りのない/出自が割れない適当な死体の調達から始まって、そっくりさんを探して彼の写真付きIDを作り、彼が持っているであろうGFの写真のことからチームにJean (Kelly Macdonald)が加わって、死体に持たせる機密文書の精度や折り目に蝋印、海に浸っても落ちないレベルのインクとかから、死体とGF – Pamという名前にしてふたりはどんなやりとりをしていたかまで、ストーリーを拵えたり、死体のコートに彼女のまつ毛を付けたり、その細かさとどうでもいいとこまで含めた頭の使いようのねちっこくて暗いことときたら、英国人だなあ、って感心する。

あとはスペイン側で、漂着した死体の回収に始まってドイツ側のどこをどう経由して情報が行き渡るようにすべきかのシナリオ作りもあって、そんなのは実際に始まってみると当然のように思っていた通りにはいかなくて…

並行してシチリア沖合には英国海軍が配備展開されていて、後戻りできなくて、この作戦が当たったか外れたか(ドイツがまだ沿岸にいるか情報を真に受けてギリシャに移ったか)は実際に突撃してみないことにはわからない。(これ、攻めにいく兵隊からすればすごく嫌なかんじだよね)

作戦がどうやって組みあげられていったのか、のメインの流れの他に、JeanとEwenの恋とかEwenの二重スパイ疑惑とか、ドイツ側にばれてるばれてないの話とかの横槍もてんこ盛りで、ややとっ散らかった印象はあるものの、捏造~騙しに戦局を賭けるっていういちかばちかの危うさとおかしさ、後ろめたさがこれまでの戦争ドラマとは異なる緊張感を生んでいておもしろかった。

英国では2016年頃からなんでか英国万歳寄りの戦争ドラマがいっぱい作られていて、”Their Finest” (2016)とか“Dunkirk” (2017)とかChurchillモノ - “Darkest Hour” (2017)とか”Churchill”(2017)とか、そのなかでは”Their Finest”と同じくらい好きかも。どちらも戦時下にフィクションに賭ける、というドラマ。 

真ん中のふたり - Colin FirthとMatthew Macfadyenは、どっちも“Pride & Prejudice” -『高慢と偏見』でMr. Darcyを演じていたりする。要するにそういう奴らがさー。 彼らとは別に、揺れ動いていくKelly Macdonaldさんがすばらしい。

あと、本当かどうかは知らんが、作戦チームのなかにはIan Fleming (Johnny Flynn)がいて、スパイ小説を書いていたりするの。

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