2.17.2022

[film] West Side Story (2021)

2月11日、金曜日の夕方、109シネマズの二子玉川で見ました。なんとなくIMAXで。
シネマヴェーラで競輪に浸かったあと、NYのWest Sideに飛ぶ。みんな必死で漕いでいた時代。

問答無用のクラシックであるRobert Wise - Jerome Robbins - Leonard Bernstein - Stephen SondheimがWilliam Shakespeareの”Romeo and Juliet”を元にした1957年のブロードウェイ・ミュージカルを61年に映画化したのをSteven Spielbergが約60年ぶりにリメイクしたもの。マトリョーシカ。

今回の脚本は“Angels in America” (1991)の、Spielbergとも何度も組んでいるTony Kushnerで、ダンスパートにはJustin Peckが振り付けに加わっている。

ルネサンス時代のヴェローナから戦後復興期のニューヨークにかけて夢の軌跡を描いたクラシックをなんでいまリメイクする必要があるのか? ブロードウェイの方でも3年前にIvo van HoveとAnne Teresa De Keersmaekerによるリバイバルがあったが、民族や種族の居場所の取りあいを巡る諍いとそれによって引き裂かれる恋とか家族とか、というテーマが世界の至るところで - になってきている今、そこにおける(例えば)「正義」とか「善」ってなんなのか、が問われるようになっている、のかしら?

Lincoln Centerの建設のため、建物が取り壊され地面に穴がぼこぼこ掘られ、近辺の住民に立ち退きが迫られていた時代、地元の白人の若者たちが中心でRiff (Mike Faist)がリーダーのThe Jetsと、プエルトリコ系移民の若者たちが中心でボクサーのBernardo (David Alvarez)がリーダーのThe Sharksはことあるごとに対立していて、とにかくなにごとにもぶつかって犬のように吠えまくって止まないので、一晩だけ実験的に両方を呼んでダンスパーティーをすることにしたら、そこで出会ってしまった敵同士のMaria (Rachel Zegler)とTony (Ansel Elgort)がおちてはいけない恋におちて..

冒頭から両部族がばらばらと寄り集まってきて入り乱れていくダンスシーンのキレとスピードはとんでもなくて、レミングの突撃みたいな怒涛のうねりに巻き込まれてやられるような臨場感で、ここだけでもすごくて近寄れない(ので映画館で見よう)。これらの踊り場とか乱闘の場 – どちらにしても彼ら全員の明日は(あまり)ない - の反対側にValentina (Rita Moreno) がいるDoc’s Drugstore という定点というか磁場があって、ここは歴史の溜まり場でもあって - Rita Morenoは61年版でAnitaを演じていた - ここで更生したTonyは世話になっていて、でもValentinaはプエルトリカンなので、両方の人たちがくる。そういういろんな場所を巡るドラマの、その場所そのものが無くなっちゃうのだとしたら。

ポーランド系移民のTonyは傷害事件を起こしたムショ帰りで、でもThe Jestsのなかでは孤立しているふう、他方でMariaの兄はBernardoで、Anita (Ariana DeBose)とは結婚の手前で、一族ががっちり固まっているふうで、でもというかだからというか、好きになっちゃったんだからどうしようもない、とか言っていると悲劇が。

なのだが、最後の悲劇(ナイフではなく銃による)は穴に落ちた、くらいの軽いかんじに見えるし、ふたりが一瞬で恋に落ちる、瞬間の魔法とか殺法がなんか薄いような。Ansel Elgortの例の件があったのでそう見てしまう、だけではなくて、なんだかTonyの生気がないしダンスもさえない。ムショ帰りの悪(のはず)なので”They Live by Night “(1948)や”Thieves Like Us” (1974)のBowie & Keechieくらいの明日なき暴走を見せてほしかったのにな。

そんなのも飲みこんで、だからこそ人は歌うのだし踊るのだし、だから大丈夫でしょ - と人々の家は取り壊されて後にはでっかい「文化施設」ができて、ここではバレエやオペラが毎日演じられていて、お金持ちが毎日やってきてお金をおとして経済はまわって、という俯瞰図。

NYのWest Side(のここよりは少し上の方)でいろんな国の人たちのうねりがもたらす強烈な磁場、その揺るがない強さを示したのが例えば昨年の“In the Heights” (2021)で、あそこにあった重力を歪めてしまう(壁が90度回転)ほどのカメラの動きは、Janusz Kaminskiなのでさすがになかった。けどレンズフレアが少し多めのテクニカラーでは切り取れないような瞬間をうまくとらえていてすごいと思った。

“In the Heights”は見終わって映画館を出てスキップしたくなった。けどこれは背中を撃たれてうぅ..  ばったり、でおわり。 ダンスして喧嘩して終わり、みたいなB級のでもよかったのに。

ああNew York行きたいよう - 結局はそこに。

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