4.03.2021

[film] Donnie Darko (2001)

3月28日、土曜日の昼、MatrographのVirtualでやっていたので、なんとなく久々に見たくなった。
(そういえばMetrographの映画館のフロアには等身大のウサギのFrankが置いてあったなあ)
2001年の公開時のNYは911でそれどころではなくて、見たのは2004年に公開されたDirector’s Cutの方だった。その後もTV等で放映された時に見たりしていたのだが、たぶん10年ぶりくらい。

そういえば今日からイースターの4連休に入ったが昨年の今頃には丁度”Southland Tales” (2006)を見ている。

1988年10月2日、バージニアのミドルセックスの高校生Donnie Darko (Jake Gyllenhaal)がどこかの山道で自転車の横で目覚めて、そこで世界の終わりが近い -  今から28日6時間42分12秒後に世界が終わるってお告げを受けて、そこから10/6, 10/10, 10/18, 10/24, 10/26, 10/29, 10/30と刻々と終わりに向かっていく時間のなかで、Donnieが見た世界、経験した世界あれこれ。 あらすじなんて追ってもしょうもない。

Donnieは世界はいつか(もうじき)終わる、っていうのと人はひとりで死ぬ、とかいろんな考えにとりつかれたり幻影を見たりしていて、そのおおもとには教師のKaren (Drew Barrymore)が授業で使ったグレアム・グリーンの『破壊者』とか、タイムトラベルのこととか、体育教師やいんちき自己啓発野郎のJim Cunningham (Patrick Swayze)とか近所の謎めいた老婆 - Grandma Death (Patience Cleveland)とか転校してきたGretchen Ross (Jena Malone)とか、気がつけば横にいるでっかいウサギのFrankとか、いろんなのがいて、でも両親がDonnieにつけた精神科医 Dr. Thurman (Katharine Ross)によると彼の幻影は妄想性統合失調症によるものらしいので、なにがどこでどう繋がっているのやら。

同様に飛行機のエンジン(エンジンだけ)が自宅に落ちてきたり、学校が洪水になったり、銅像の頭に斧が刺さっていたり、壁の落書きには”They made me do it”ってあったりするので、総合すると、やがては終わる運命にある世界が、そこにおいてひとりで死んでしまう自分や周囲の人に対していろんなことを強いていて、その行方や軌跡は定められたものとしてポータルを通して幻視することができるのだ、って。 で?

こうして「世界の終わり」があることを「自分はいつか必ず死ぬ」ことを知ってしまうと、しかもそれを強烈に知って意識してしまうと、世界に溢れる知とか悪とか政治とか愛とかそれらを統御している時間とかがはっきりとある力を伴って自分を縛りにくることが見えてくる。それってストーリーにしようとするとなんでもありの荒唐無稽なSFになってしまうのかもしれないし、ただのひとりよがりな思春期ウィルスを散らしただけのものになってしまうのかもしれない。

のだが、ここでのDonnie Darkoの思い込みはとてつもなく強固でそれ故に切実なので(その理由は最後に)、そのストーリーとイメージの絡みかたも含めて自分がかつて見た夢のように、彼の軌跡を - 生への執着を追ってしまう - そういう強さで迫ってくるという点で、これはとてもピュアな青春映画、と言ってよいのだと思う。
世界が終わってしまうもんなら、こんなてきとーに生きさせるじゃねえよくそったれ、って。(& Drew Barrymoreの絶叫)

そして、”Southland Tales”ではこのなんでもありのストーリーテリングをできあがった(腐れた)大人の、政治の世界に敷衍し、より具体的にどうしようもなく迫ってきた世界の終わりと、死ぬだけではない、「生き残ること」についても真剣に語ろうとしているような。 でもこちらはやはり”Tales”であって、ここの、”Donnie Darko”その人の生の物語とは違うなにかではないか。

ひとついつも気になってて余り掘ったことがないのは、これってとっても男子の世界の側で起こりそうなお話だよな、って。それが滅びる話なので別にいいんだけど、このお話の熱狂的なファン層 - 世界中にいろんなフォーラムとかある - の男女比とか、どうなっているのか少しだけ知りたい。

あとは狙ったとしか思えないサウンドトラック。"The Killing Moon”も"Head over Heels”も"Under the Milky Way”も、当時あれらの曲を真剣に聴いていたひとなら、ああいう場面で鳴るはず、というのをイメージした、ほぼその通りにイントロが鳴り響いたりする。 これだけでこの映画のDonnieのように運命的ななにかを感じてしまうに違いない。 エンディングは"Mad World”だしね。 そしてこれらの楽曲が英国のだったのはたぶん偶然ではないの。

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