4.10.2021

[theatre] Romeo and Juliet - National Theatre

4月4日、日曜日の夜21:00にSky Artsチャンネルで放映されたのを見ました。そりゃ見るわ。

今から約1年前、演出のSimon GodwinがNational Theatre向けに、このキャストで上演の準備を進めていた舞台がCovid-19で実現できなくなった。でも折角準備を進めていたNational Theatreは、これまでのNational Theatre Live - 観客に向かった舞台で上演されたものを映像に収めたものではなく、この劇をNational TheatreのLyttelton stageを使って17日間に渡って上演(とは言わないか..)して撮影して、それを”An original film for TV”として放映することにする。スクリーンやTV画面で見られることを前提に作られた演劇。 長さは90分。

関係者のインタビューを読んだりすると、演劇関係者が映画の撮りかたや編集を学んだりしながら試行錯誤して作っていったのがわかる。いろいろ苦労したのだろうけど、イメージしたのはリハーサルとかワークショップとか朗読劇とかをちょっと綺麗に整えただけ - 舞台での一定期間の興行で得られたであろう収入との収支計算もあったのだろう - のようにも見える。フラッシュバックもフラッシュフォワードもあるし、クローズアップもいっぱいなのだが、技巧としてはとっても稚拙でストレートすぎる気がしたり – 例えば誰もがよく知っているBaz Luhrmannのぎんぎらに凝りまくった“Romeo + Juliet” (1996)と比べてしまうと - 編集も衣装も音楽も(たぶん予算規模も)大人と子供ではないか、と思ってしまう。

でもたぶんそれがこの90分の「フィルム」ではうまく機能している気がした。

最初のシーンはいろんな仕掛けや機材がむき出しの稽古場のようなところに登場人物全員が集まってリハーサルでも始めようか、というシーン(少しだけIvo van Hoveふう)。全員が互いの顔を見ながらこいつはどんなものかな、みたいに値踏みをしているような場面で、Juliet (Jessie Buckley)は挑発的な微笑みでRomeo (Josh O’Connor)を見つめて、Romeoがその一撃で持っていかれる瞬間を見ることができる。ここから先の90分間は、その衝突の流れ弾がCapuletとMontagueの両家に飛んでって、ダンスフロアとか月夜の晩に跳ね返って正面から衝突したふたりはその勢いと思い込みを抱えて前のめりにつんのめったままぼぅん、て自滅する。それだけの、2分で終わってなんも残らないパンクみたいなやつ。儚さもくそもないような。

舞台は1ステージ上に組まれたセットのみなのでカメラが屋外に出ることはなくて、その中心に寄った四角四面の行き場のない世界で、”The Crown”のPrince Charlesで、“Only You” (2018)で、“God's Own Country” (2017)でたっぷりみることのできる自嘲と嘲笑の渦にまみれ自身のエモに溺れてわけわかんなくなって自壊するあのJosh O’Connorの演技と、始まる前から”I'm Thinking of Ending Things”になっているJessie Buckleyが正面からぶつかって、どんな色の火花を散らして月夜の晩の歓喜から絶望まで一直線に転がりおちて台の上に横たわるのか、それを囲む家族や友人たちがどんな顔をしてそれを眺めるのか、見てほしい。

彼らの他に、氷のように冷たいLady Capulet (Tamsin Greig)とかその反対で温かいNurse (Deborah Findlay)とか、ゲイのMercutio (Fisayo Akinade)とか、Friar Laurence (Lucian Msamati)とか、印象に残る演者もいっぱいなのだが、やはり真ん中のふたりが良すぎてどうでもよくなるような。

ここでのJessie Buckleyさんは“Romeo + Juliet”のClaire Danesに少し似ている。でも“Romeo + Juliet”でどうしてもぎりぎり好きになれないのはLeonardo DiCaprioのRomeoなので、こっちのふたりの方がー、とかいろいろ悩んだり。

舞台の上でこのふたりがのたうちまわって重なって動かなくなるまでを3時間くらいかけてライブでじっくり眺めたい、と思ってしまった、ということはこの作品は失敗なのだろうか? でもこれはこれでよくて、集中力で疾走したデモテープの勢いがあるので、この放映が当たって、ちゃんとした舞台版か、映画でもよい(監督は誰がよいだろう? 女性に撮ってもらいたいな)から、再演してほしい。


お昼少し前にエディンバラ公爵フィリップ王配の訃報が入ってきて、あらゆるTVプログラムはフィリップ追悼で埋められてしまった。いろんな過去のニュース映像 - ウェディングだけで何種類あるんだ? - が次々に流れてきて、どれもおもしろいのでずっと見ている。彼、The Durrellsのコルフ島で生まれたのね。 わたしにとって彼とJohn le Carréが英国のかっこいい老人(男)の代表格だったので、もう英国のかっこいい老人類(男)は全滅してしまった、ということになる。
どの記録映像を見ても、ほんとうに女王は彼のことを好きだったんだなー、ふたりは愛し合っていたんだなー、ってしみじみする。そんなふたりを70年以上に渡って見ることができた英国民は幸せだったと思うよ。
いまは女王様のことがとても心配。

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