4.05.2021

[film] Golden Gate Girls (2013)

3月28日、日曜日の晩、Queer Visions Virtualからの配信で見ました。
中国系アメリカ女性として初の女性監督 - Esther Eng (1914-1970)の足跡を追ったドキュメンタリー。

女性監督の作品と彼女たちの作品が映画史のなかでどう扱われてきたのか、については00年代にAlice Guy-Blachéの作品を知ってからなんとなく追っかけてきていて、Alice Guy-Blachéのドキュメンタリーについては”Be Natural: The Untold Story of Alice Guy-Blaché” (2018)ができて、女性監督映画史については大作 - ”Women Make Film: A New Road Movie Through Cinema" (2018)ができて、これらを見ると女性監督による映画ってまだまだ知られていないので知られないと、と思っている(理由を述べていると長くなるけど、これくらいわかってほしい。わかんないかな?)。

で、Esther Engの名前は”Women Make Film”のなかにもその名前は出てきていなくて、そうするともっと知りたくなる。

Esther Engの名前が書いてある沢山の写真の入った箱が(おそらく近辺の倉庫から)SF空港近くのゴミ箱に捨てられていて、それを小道具商が見つけて、それを香港のフィルムアーカイブに持って行って取引をしようとした。アーカイブ側は取引を持ちかけられてもお金ないので困っていたあたりで、この作品の監督のLouisa Weiさんが手にすることができた、と。

映画は主にアメリカで中国語の映画を作っていったEster Engの軌跡を追いつつ、同時代のアメリカの映画人であるAnna May WongやDorothy Arznerとの対比と、戦前〜戦後のSFのチャイナタウンの歴史や、アメリカの中国系移民の歴史も押さえられている。

1897年に中国から渡ってきた移民の10人兄弟の4番目として生まれて、広東オペラをやっていたマンダリンシアターで1000本の映画を見てアートの世界に浸かり、パール・バックの「大地」の評価やアメリカの中国人コミュニティの興隆にも後押しされて最初の映画 - “Heartaches” (1935) - をプロデュースして、その後香港に渡って戦争で戻ってきて、ハリウッドで映画を作っていくようになる。ドキュメンタリーのタイトルになっている”Golden Gate Girl” (1941) - ブルースリーの映画デビュー作でもある、とか、36人のキャスト全てが女性だという”It’s a Women’s World” (1939) - これの7ヶ月後に、George Cukorの”The Women”がリリースされる - とか、かの”Back Street”のリメイクである1948年の作品とか、いろいろ見てみたくなるのがいっぱい。

50年代にNYに渡って、チャイナタウンにレストラン(最初に一軒、続いてもう一軒)を開いて映画界からは距離を置いてしまうようなのだが、中国からのオペラ座の人たちとの交流とかコミュニティの社交家としての活動はあれこれやっていたとか。(彼女がやっていたお店がチャイナタウンのどの辺にあったのかを調べてみたり、彼女がミッドタウンに開いていたお店が自分が昔住んでいたとこの向かいだったことがわかったり)

1930年代のアメリカの映画界で、チャイナタウンのコミュニティで、明らかにレズビアンとわかるショートカットとパンツ姿(Dorothy Arznerも同様だったという)で生きて、そうやって映画を作っていくことがどれくらい大変だったのか知る由もないのだが、ドキュメンタリーからうかがうことができるのは、なにがあってもどこに渡っても人の面倒をみたりみられたりしながら自由に飄々と生きていく、そういう姿で、それは歴史の表から突然姿を消してしまったかに見えるAnna May Wongとは対照的なように思えた。もちろん、本当のところどうだったのかは彼女の名前が広がって更に深く研究が進んでいくことを祈るしかない。

ただ、こういうのって彼女の作った映画を見てみないことには、なのでなんとか探して見てみよう。坂根田鶴子のもいつかできれば。 あと、こないだ見た”Center Stage” (1991)で描かれた阮玲玉 - Ruan Lingyuとの接点とかなかったのかしら? とか。

SFのチャイナタウンの入り組んで底のないかんじは本当に好きで、NYのとも違っていて、そこいくとロンドンのはなんかつまんないのよね。また行きたいなー、あのぐちゃぐちゃごった返した日曜朝の飲茶とか、なんでもありそうな魚屋とか。

あと、直接の関係はないけど、アメリカのアジア系の人たちに対するヘイトクライムのことはずっと頭にあって、やりきれない。

史上最低さいあくにつまんないイースター四連休もあと1日。あーあー。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。