4.23.2021

[film] Promising Young Woman (2020)

4月16日、金曜日の晩、Sky TVで見ました。なんかTVではふつうにがんがんリピート放映している。

昨年、英国の一回目のロックダウン終了後の映画館で予告がかかっていたので、もっと早く見れると思っていたのに結構時間が掛かって、気が付けばオスカーにノミネートされていたりBAFTAでもオリジナル脚本賞とかOutstanding British Film of the Yearとか獲っちゃったりすごいことになっている。チープなB級の佳作 – ざっけんじゃねえよくそったれー  以上。でいいのに、とか。

作、監督はこれが長編作デビューとなるEmerald Fennellで、Margot Robbieがプロデューサーとして入っている。Variety誌の批評家が主人公の役はCarey MulliganよりもMargot Robbieの方が相応しいのではないか、と女優の外見にまで言及したことで謝罪騒ぎにまで発展したの(ちゃんと読んでいないのでどっちがどう、については保留)は記憶に新しい。こういうところも含めて各方面にいろんな議論を呼んでもおかしくなさそうな作品。

Cassandra - Cassie (Carey Mulligan)はバーで酔っ払ってぐでんぐでんで制御不能になっているところに声を掛けてきた男を引っかけて(男性からすると彼らが引っかけて)、部屋に招かれてコトに及ぼうとしたところで素面になり「なにやってんだおら」って恫喝して脅迫して、というのを繰り返してノートに記録している。

彼女は有望かつ優秀な医学生だったが、在学中のパーティで同級生のAl Monroe(Chris Lowell)にずっと一緒にいた幼馴染の親友Ninaをレイプされ、それに続く自殺で失って - 映画のなかではNinaとの具体的な思い出もレイプという言葉もそれらの映像も一切出てこなくて、Cassieの口から語られるのみ -  彼女はその後に大学を辞めて、カフェのカウンターでバイトをしながら、事件に関わった連中 - 加害者の男子だけでなく、現場で様子を傍観していた同窓生の女子も、Ninaの訴えを証拠不十分として却下した医学部の学部長(女性)も、Ninaに嫌がらせをして告訴を取り下げさせたアルの弁護士 (Alfred Molina)も、それぞれのやり方で – なかなかひどい – 痛めつけて踏んづけていく。

他方で同居している両親はずっと独りでいるCassieを心配しているし、Ninaのママ (Molly Shannon)ももう忘れてあなたの道を行って、というし、偶然再会した同級生で小児科医のRyan (Bo Burnham)とはよい関係になりそうだし、もういいか.. になった辺りで、会って過去を掘り返して酷い目に遭わせてやった同窓の女性が暴行の現場を撮影した携帯の映像を持ってきて、そこにRyanの姿を見つけた彼女は..

みんな揃って加害者をくそ擁護して「正論」を振りかざしてCassieだってひどいじゃないか、とかぴーぴーわめく卑怯者が群れをなすのが容易に想像できる(いまのにっぽんだ)が、なにが正しいのかとか正義なのかとか、そういう問題提起をしたい映画ではない気がして(もちろんしたい人はどうぞ)、幼馴染を殺されてブチ切れたPromising Young Womanがいかにひとりひとりを血祭りにあげていくのか。 Quentin Tarantinoがオトコのねちっこさで嬉々として練りあげる(みんなかっこいい! って喝采したりする)復讐のドラマとは別の角度で、絶望の底に叩き落されたひとりの女性が(そこから這い上がるのではなく)がむしゃらに走り抜けようとするその突端を淡々と追っかけている気がした。見たけりゃ傍聴券でも貰ってその辺で見てな、って。

おそらく両親が用意した高校生時代の状態のままで時間が止まっているCassieの部屋のインテリアも、「復讐」に向かう時の彼女の装いもメイクも、もうすでに(Ninaとともに)彼女も既に死んでいることを示している気がした。Ryanとの出会いはほんの少し彼女を生の方に向かわせてくれるかに見えて、それが実は…  地獄っていうのはこういうどこまでも抜けられないどん詰まりの事態をいう。 だからせめて、みたいなラスト。

あと、こういう話は今も過去もいくらでもあったんだろうな、とふつうに思わせてくれる感があるって、なにがどうなってきたからなのか。果たして10年前、20年前にリリースすることが可能だっただろうか? これまでもレイプに対する復讐劇はあったけど、これは痛手を負って”Promising”も”Young”も剥奪された白人女性が白人社会でどうやって生きていこうとするのか、そういうドラマ。

Harley Quinnよか数段苛酷できつくて、ここのCarey Mulliganはすばらしいと思った。


夕方のBBCでLes McKeownの訃報を伝えている。スコットランドっていうところにはイギリスとは違う文化があるらしい、って知ったのはこのバンドあたりからだったかも。

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