4.13.2021

[film] Moonrise (1948)

4月4日、日曜日の昼、Criterion Channelで見ました。 監督がFrank Borzageの最後の作品とあったから、くらい。原作はCosmopolitan誌に掲載されたTheodore Straussの同名小説。日本での公開情報は不明。

冒頭、シルエットのみで、絞首刑が実行される暗いシーンが描かれる。そのシーンに続くかたちでバージニア州の小さな町に暮らす少年Danny は、首吊り男の〜、犯罪者の子供~、って周囲の子供たちから散々に虐められている。

大きくなったDanny (Dane Clark)は、あまり変わらず虐められ蔑みの対象になっていて、あまり明るいふうではなくて、ダンスパーティーの晩にも同級生だったJerry Sykes (Lloyd Bridges) が昔のようにねちねち因縁つけてくるのでいいかげんにしてくれ、って森で殴り合いになって、そのつもりはなかったのに正当防衛に近いかたちで彼を殺してしまい、動転しつつも自分は悪くないし、って死体を薮の奥の方に隠す。

Dannyは、自分が犯してしまった罪がばれて捕まることに怯えつつもSykesと婚約しようとしていたGilly (Gail Russell)に近づいて仲良くなって、でも明るく真面目な彼女と親密になればなるほど、結婚とか意識しようとすればするほど、Sykesのことが重くのしかかってきて、村の外れの小屋で犬と暮らす黒人のMose (Rex Ingram)と血とか神様をめぐって会話したり、Dannyが現場に落としてしまった彼のナイフを拾った唖の少年Billy (Harry Morgan)に辛くあたってしまったり、祖母(Ethel Barrymore)に父のことを聞いたりしていって、反対側で行方不明になったSykesを探して彼の父親 - 裕福な銀行家 - やシェリフを中心に捜査網が敷かれて聞きこみが始まり、精神的にも追い込まれて身動きが取れなくなっていって…

故意ではなく犯してしまった犯罪を隠しきれるのか、っていう過酷で辛い因果や運命を晒していくノワールの体裁を取りながらも、人はなぜ罪を犯してしまうのか、その血は遺伝したりするものなのか、それは避けられない、救われない社会の因襲のようなものなのか、といったテーマの周りで恋人、隠者、障害者、シェリフ、アライグマ、などがDannyにいろんなことを語りかけてくる。特に猟犬に追い詰められた木の上のアライグマへの仕打ちはDannyにとってはきついし、まっすぐにDannyを信じてくれるGillyにはどんな顔をして会ったりすればいいのか、とか。 正答はないけど、理由はどうあれ、人を殺してしまった事実を消すことはできない。

ただなんでDannyがGillyに近寄っていったのか、GillyはなんでSykesからDannyにあっさり切り替えてしまったのか、その辺が少し腑に落ちなかったかも。最初はDannyによる復讐の連鎖とか口封じとかダークでネガティブな道行きになるのかと思ったら、その逆の方でそのままだと落ちて底に沈んでしまうところをなんとか、少しでも明るい方に引っぱりあげようとするドラマになっていた。だから”Sunrise”ではなくて”Moonrise”(見あげてごらん)なのか。

お先まっ暗の悲劇に終わらなくて、少しだけ希望が見えたりするのはFrank Borzageだとは思ったものの、興行的にはまったく当たらなかった、というのはなんかわかって、戦後のテーマとしては暗すぎたか、まだあまり目を向けたくないやつだったのかも、って。

あと、ここで展開されているアメリカの小さな町での被害 - 加害(虐め)の構図 - そこに据えられた弱者が弱者のまま抜け出せなくなる沼 - って今に至るまでずっと変わっていないよね。いま見てもわかるし、辛くなるし。 直接の繋がりはないけど間もなく現れる公民権運動もこういう土壌からのー。


今日から屋外での会食とか、生活必需品以外のお店とかヘアサロンとかが再オープンした。 とりあえず夕方、Hatchards(本屋)に行って、チケットを買ったのに行けずに終わったベルギーのJan van Eyckの展覧会のカタログとかでっかいやつをどかすか買った。ここの3階の床をぎしぎしさせながら棚を渡っていく気持ちよさときたら。 今朝は雪が降って寒かったのだが、外で飲みたい人たちはほんとに幸せそうにやっていた。 4回目が来ても構うもんかっていう笑顔。

今日Hatchardsで買ったガイド本。知っているところもあるけどまだまだ。がんばる。
https://www.accartbooks.com/uk/book/writers-london/

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