1.26.2021

[film] MLK/FBI (2020)

1月18日、月曜日の晩、BFI Playerで見ました。Martin Luther King Jr. Dayだったから。

このテーマではピュリッツァー賞を受賞したDavid Garrowの著作があるし、Garrow自身もこのフィルムには出てくるので、知ってるよ、なことも多かった気がするが、とてもわかりやすく纏められたドキュメンタリーだった。

冒頭が1967年4月4日、ワシントンDCでのMartin Luther King Jr.(以下MLK)の演説で、ここでの熱の高まりを見て、公民権運動の指導者としてMLKが熱狂的な支持を集めていることを危惧したJ. Edgar Hoover(以下JEH)率いるFBIは明確な危機感をもってMLKを危険人物として仕立てあげようとする - “It’s clear that Martin Luther King is the most dangerous Negro in America.” とかなんとか。 

当時、ノーベル平和賞を受賞してジョンソン大統領とも懇意になって最強だったMLKのイメージを貶めて黒人のリーダー・救世主としての地位から陥落させ、結果として公民権運動を失速させようと、JEHは盗聴活動に必要となる司法長官 - Robert F. Kennedyからの許可を取りつけて、彼の自宅や滞在先の電話や回線に工作して情報採取を開始する。当初FBIが狙っていたのはMLKの活動と国を挙げての脅威としていた共産主義との接点を見いだすこと(確信していたらしい)だったのだが、盗聴を開始したら思ってみなかった角度からの情報が採れてしまったので攻め方を変えることにする。

それはMLKが滞在先のホテル等で妻以外の女性(達)と性的交渉を持っていた(or いかがわしいことをしていた)、というもので、このイメージはJEH/FBIの白人(特に女性)にとって黒人を性的脅威の対象として見るという従来の偏向路線(ここで『國民の創生』のクリップ)にも沿っていたのでこれ幸い、とメディアに対するキャンペーンを張る。

こうしてMLKを“the most notorious liar”と断定するFBIのコメントが付された記事がワシントンポストやNYタイムズに掲載されて、実際に世論調査でのMLKの支持率はFBIのそれよりもぜんぜん低くなるのだが、それでもこのキャンペーンは成功しなかった。おそらくJEH/FBIが次の一手に踏みこむ前にMLKが暗殺されてしまった、というのもあるのだろうが、なんでうまくいかなかったのか、についてはちょっと踏みこんでほしかったかも。

これはこれで怖い話だけど、これとは別に戦慄したのは1924年から1972年迄の48年間、FBI長官として君臨した JEHのやり口の方だった。国民の正義の味方 – “G-Men”としてのFBIをTVや映画を通して前面に押し出し、その反対側でコミュニズム/コミュニストを絶対的な仮想敵としてやり玉にあげて、これらを通して国民に団結と結束を呼び掛ける。その裏側でここにあったような盗聴のような工作活動や赤狩りを繰り広げて敵のイメージを練りあげる、ってものすごくきちんと噛み合ってて機能して/させていたのだろうな、って。当時の彼らがSNSを手にしていたらどこまでやったのかしら.. ? とか。

でも個人的に謎なのは当時の彼らってコミュニズムがこういうものだから危険とか、ちゃんと説明していたのだろうか? って。これは今もウヨの人たちがふた言目にはアカとか中共とか馬鹿のひとつ覚えみたいに繰り返すのと同じで、あれこれ思考停止の隘路に見事にはまっているようでなんかー  というのはいつも思うこと。

でね、ここでJEH/FBIが危惧していた民主主義を根底から破壊するような行為 - テロが2021年に、コミュニストや黒人たちの手によってではなく、彼らが「自国民」ど真ん中として想定・認知していた愛国白人層を中心にして起こってしまった、っていうのはおもしろい(おもしろくないけど)。これって急激に何かがひっくり返った、ということではなくて、その根もやり口もこの頃から用意されていた(そして自分たちでその穴に..)のだと思う。

話を戻すと、FBIの諜報活動によって1963年から68年の間に採取されたMLKのテープは現在National Archivesに保管されていて、2027年にはこれらが公のものとなる。その時に何が明らかにされるのかわかんないし、それまで生きていられるかもわかんないけど、その時にどれだけMLKのレガシーが毀損されようとも、MLKの成し遂げようとした理想はまだ揺るぐことなく輝いてて達成されていますように。BLMがあたりまえのこととして実現されていますように。

最後はいつも自分の国のことを振り返ってしまうのだが、にっぽんには当然MLKはいなくてFBIもいなくて、替わりに自民党と代理店とメディアが頭の中で鎖国して、にっぽんすごい、美しい、えらい、をえんえんやり続けてどこまでも分断と(幼児)退行が止まらない状態になっているの。 … ゴジラに期待するのもむりないわ。

やたらかっこよく鳴ってる音楽はPreservation Hall Jazz Bandだった。


トランプという世界最悪の害獣がいなくなった世界に”GDZ/KNG”の予告が現れていまのところこれが全世界がもっとも待望するなにか、になっている気がする。 戦略として007の再々延期はぜったい失敗だったと思うんだけど。 コロナに打ち勝った証として体育大会をやりたいとかいう謎の国と同じ匂いがする。

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