12月22日、火曜日の晩、BFI Playerで見ました。
暮れ間近にはいつもどこかしらおっかない1本を見ることにしているのだが、今回はこれがそれ。
とにかく泣きそうになるくらい怖くて(ああいうふうに出血するのだめ)、最初の数分だけできつかったのだが、なんとか持ちこたえる。
冒頭、黒人の若い女性が電極みたいな五寸釘みたいな針を頭のてっぺんに刺して(そこだけでもう…)、自分の感情をテストするような動作をしてからエレベーターに乗ってパーティー会場に行って、そこにいた偉そうな男の喉をかっ切る(ここでもう十分だめ)と、実行した彼女は駆けつけた警官に撃ち殺される。
これの直後に別の場面ではいろんな機材に繋がれた女性Vos (Andrea Riseborough)が起きあがると上司らしい女性Girder (Jennifer Jason Leigh)から記憶のテストのようなものを受けて、彼女が自分の記憶を持った正常なひとに戻っていることを確認している。
Vosは電極を刺した人にそのインプラントを通してその人に憑依(Possess)して契約ベースで殺人を実行する組織の一員で、それをやるためにはそれなりのスキル - 殺人を実行する人に憑依して、殺人の時だけ彼/彼女の感情とか感覚をコントロールする - が必要で、更に実行後に憑依者を切り離して自身に戻ってくるためにはその場で憑依している奴(自分)を殺すしかないのだが、最初の殺人のシーンで彼女は憑依者を殺すことができない。上司でVosを育ててきた殺し屋Girderは、今のところそこが彼女の弱点で、そこには彼女の別居している夫と息子(への未練?)も影響しているらしい、と。
次の契約のターゲットはでっかいやつで、データマイニングをやっている企業のCEOのJohn Parse (Sean Bean)とその娘のAva (Tuppence Middleton)。 VosがPossessするのはAvaの婚約者のColin Tate (Christopher Abbott)で、周到に準備して相手を殺すところまではなんとか実行するのだが、その後でColinを殺す段になるとやはり自分で自分に引き金を引くことができない。その状態で逃げたりもがき苦しんだりしていると、Vosが入っているColinの肉が目覚めてきて…
こういうのはSF小説とか(既にどっかにありそう)で文字で読むのであれば各自イメージできて楽しいのだろうが、リアルな実写で肉とどうやって繋いでそこから侵入してその先で殺して殺されて、ってやられる - しかもそれを作っているのはDavid Cronenbergの息子さんのBrandon Cronenbergで、こういう血と肉とワイヤーと各種計器とか、それを刺したり抜いたり飛び散ったりに関しては容赦ない筋金入りの人(々)なので、怖いったらない。
確かに暗殺を専門のやくざとかロボットにやらせるのは身元や契約元が割れてやばくなったりするけど、内部に精通している身内がやる - そいつにそれなりの動機があって自暴自棄になっているのであれば、そいつの体を乗っ取って実行してしまえば、割と怪しまれなくてすむに違いない。 殺人藁人形を本人ではなくその隣にいる人に仕掛ける、というか。
この映画はこれまでは祟りとか呪いといったスピリチュアル界隈で使われていた「憑依」を現実世界のテクノロジーを使ってやる - そういうアイデアを示すだけではなくて、このやり方が孕む危険性をワイヤーで繋がっている自己と他者の血肉のレベルの相克とか侵食とか混濁が起こるこんなところあんなところまで含めて示している。 それをわかりやすい(わかりやすすぎる)手に汗握る活劇にもっていったところは賛否あるのかもしれないが、もうこんなやばいことやめましょうよ、って叫びたくなるくらい嫌なかんじにはなっているので、よいのかも。
続編(あるとしたら)は憑依したボディガードが標的を守るというVosたちの対抗企業が現れる、か、肉を乗っ取った世界にハッキングしてそれを外部から操ろうとする組織が現れる、か、Possessor同士のどんぱち(←これは直接やれや).. になるのではないかしら。こわい世の中になったもんだわ。
あーあ、明日から仕事なんだわ。ぜんぜんそれらしくないクリスマスと新年を過ごしたのだから、ここしばらくの間はぜんぜん仕事らしくない仕事になってもだれもなにも言わないでほしいな、とか。
1.04.2021
[film] Possessor (2020)
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