4.26.2020

[film] The Navigator: A Medieval Odyssey (1988)

17日、金曜日の晩、BFI Playerで見ました。
オーストラリア - ニュージーランド映画で、1988年のカンヌのコンペティション部門に出品され、受賞は逃したものの5分間のスタンディングオベーションを受けて、他にもいろんな賞を受賞している。 知らない作品だったけど、とってもおもしろいパンデミック対応中世歴史ロマン。

14世紀のカンブリア(Cumbria - 英国の北西)の山間の小さな村で、ヨーロッパ全土を黒死病の恐怖が覆っていて、うちにもそろそろ来るのをなんとかせねば、と幻視者の少年Griffin (Hamish McFarlane) と勇敢な青年Connor (Bruce Lyons)を中心としたグループが組まれる。使命は次の満月の晩までに銅鉱石から銅の十字架を作って、それをいちばんでっかいキリスト教会の尖塔の天辺に取り付けて神のご加護を得るのじゃ、って、彼らは洞窟の奥深くに分け入っていく。

と、丁度満月が高く昇ったところでみんなどこかに滑り落ちて、梯子があったのでわけもわからずそれを昇ってみると、20世紀のニュージーランドのどこかの幹線道路の脇、に出てしまう。 もちろん村人たちにはそんなことは一切わからないからなんなのこれ?  になる。 そして画面はモノクロからカラーになるの。

道路は車がびゅんびゅんで、簡単には渡れそうになくて渡ろうとするとなんか鳴らしてきたりおっかないし、彷徨っていると救ってくれたのはなんと精錬所の人たちで、彼らもなんだこいつら、とか怪しみつつ銅の十字架も鋳型から作ってくれて、でもこれをどこに..  って探していたら大教会あったー、って。

ふつうこういう旧い時代から新しいところにやってくる時間旅行モノって、新しい方で遭遇するモノとか技術とかいろんなギャップにびっくりあたふたがポイントになる気がするのだが、彼らにとってそんなのはどうでもよくて、自分たちはどうやって戻れるのか戻れないのか、戻って自分らの村を救うにはどうしたらよいのか、どうすべきなのかそれしかなくて、全てはGriffinの予知というのか幻視というのかにかかっているのだが、そのビジョンはどこまで行っても晴れない - モノクロのままダークなで不可解な情景がずっと浮かんでくるのはなんで..?

パンデミックの世界で、頼れるのは科学とか医療技術ではなく、信仰とか呪術しかない、そういう時代の人々がどう考えて行動をしていくのか - まさに”A Medieval Odyssey” - を具体的に描いてみたとても考えさせてくれる時代劇で、さらに主人公を真摯な眼差しの少年とすることで切なさ切実さもたっぷりで。

Covid-19のパンデミックに苦しむ我々が同じように穴に落ちて700年後の未来に抜けてしまったら…  Distancingが超徹底していて即座に全員引き離されて遺伝子クレンジングされてさようなら、とか。 いや、とっくにさよなら人類になっているか… 


NYのPruneのCloseが本当だとしたら、こんなに悲しいことはない。
こないだの“Other Music”の映画の感想で、一軒のレコード屋がなくなっても次はあるのだ、と書いたが、レストランはこういうのとは別なの。レストランはおいしいお食事をした時間とお皿の記憶がそのまま維持・保存されている特別な、血の通った人格と歴史をもった生き物で、それは「他」とか「次」で代替できるなにかではないの。あそこで供されるラディッシュもはっぱもパスタもオムレツも牛も豚も兎もタコもブランジーノもデザートもラストのチョコ塊も、あそこでしか味わうことのできないものであったが故にそのすべてを愛していた。 一皿一皿の上で起こる一回きりの特別で劇的な変化と同じようなことがレストランとそこを訪れる我々の間でも起こっていて、こういう出会いって一生にそうあるもんではないわ、って断言できるくらいの素敵なやつだったのに。

穴に落ちて時間旅行できるなら、(どこの年に行くべきか5時間くらいかけて悩むだろうが例えば)10年くらい前のNYでレコードと本買いまくってPruneで食べまくりたい。ところで向こう側で買ったレコードとか本は時間旅行で戻るときも一緒についてきてくれるのだろうか ?

最後に行ったのは3月7日になってしまった..   次にNY行くときはどこに行ったらよいのか..  途方に暮れるってこういうこと。 落ち着いたらまたなにか書くかも。

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