1日、日曜日の午後、BFIのElia Kazan特集で見ました。 この午後は彼の60年代初の3本を続けて見て(110分 – 124分– 168分)、へとへとになったけどどれもすばらしかったので書いておきたい。邦題は『荒れ狂う河』。
30年代のテネシー州で、毎年洪水による被害がひどくみんな大変な思いをしています、っていうモノクロのニュース映像の後、治水ダムを作るべくTVA (Tennessee Valley Authority)から若いChuck (Montgomery Clift)が派遣されてくる。
彼の使命は洪水の季節が始まる前にダムで沈む地域の住民にどいて貰うこと、中でも河の中洲の真ん中の家からひとり断固立ち退こうとしない老婆Ella (Jo Van Fleet)を説得して動いてもらうことなのだが、Chuckが中州に渡ってひとり説得に赴いてもまったく歯がたたないし誰も助けてくれない。でもとにかく話をしていかなきゃ、とEllaの孫娘で子供がいる未亡人のCarol (Lee Remick) と目があって話を始めると親密になっていくの。(Ellaと、ではなくCarolと)
今これをドラマにするとしたらChris Evansあたりがきりっと現地に降りたって、様々な困難に直面しながらも実直に対応してだんだん周囲に認められて、最後はなにをもってそういうのかわかんないけど勝利する、みたいなかんじになる気がするのだが、ここのChuckは外見はそこそこで真面目そうなのにちっとも強そうに見えなくて、町の荒くれが来ても喧嘩は弱くてやられてばかりであんたまだいるの? みたいに見られて、他方でCarolとはずるずる仲良くなってそのままなんとなく結婚してしまったり。
ここで一番強いのは大地に根を張ってすべてを見つめてきたEllaで、ChuckはEllaの力強い言葉に尤もだよね、ってならざるを得なくて、一応周囲の農夫たちを対岸に移したりするものの、自分はCarol のところに入り浸ったりしてあんま仕事しない、それにしてもこのCarolの家でのふたりのやりとりがすばらしくて、窓の外を見て内を振り返り、ぜんぜん緊張感のない、というかそこから逃げるように怯えるように一緒にいて見つめ合ったりしているだけなのだが、ここに(水害の脅威とかこれからのこととかに対する)いろんな弱さとか儚さがむき出しで現れている。西部劇のような爽快な活劇シーンなんてこれぽっちもなくて、TVAの役人が欺瞞たっぷりに語る安全な未来の反対側で、こんなふうにしんみりと描かれるアメリカの30年代っていいな、って。
Ellaの家とか向こう岸にあるCarolの家の縁側を中心としたぼろぼろの造形もよくて、最後にEllaが家を出て振り返るところで庭にあった大きな木が切り倒されて、それが遠ざかっていくところが残る。こんなふうに追われて移動してから一帯は大きな河の下に沈められて、っていう大きな物語に対置される未亡人と仕事人のちいさな恋と、ひっそりと消えていく老婆と。
TVAのオフィスの事務員役でBarbara Lodenが出てくる。これが彼女の映画デビュー作なのね。
3.04.2020
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