10.30.2018

[film] Blaze (2018)

10月20日、土曜日の午後、CurzonのSOHOで見ました。LFFからの1本。

上映前に監督のEthan Hawkeが現れて、飛行機が3時間遅延して空港からの道路も渋滞がひどくてそのまま駆け込んだからこんな恰好(ジャージ姿)でごめん、ちゃんと着替えてくるからさ、とほぼそれだけ言って消える..

テキサスに実在したミュージシャンBlaze Foley(1949 - 1989)の評伝ドラマ。彼の妻だったSybil Rosenの本を原作にSybil RosenとEthan Hawkeが脚本を書いている。(Sybil Rosen本人も劇中のSybil Rosenの母親役で登場する)

Blaze Foley (Ben Dickey)は既に酒場とかライブハウスでギターを抱えて歌ったりしていて、レコード契約するところ、レコーディングスタジオでの光景、Sybil (Alia Shawkat)と出会って恋に落ちて一緒になるところ、彼が亡くなった後にTownes Van Zandt (Charlie Sexton)が彼を回想するところ、などなど、時系列ばらばらなエピソードが団子になって展開していく。

ぐでんぐでんになりながらどさ周りして歌を歌って、野次られたり周囲との小競り合いを繰り返しつつ、最期にあっけなく撃たれて殺されちゃった …  それでもひとり静かにぼつぼつと歌っていく彼の姿と音楽がまずあって、個々のエピソードの展開や繋がりは見えにくいけど、ああこんな人のこんな音楽、というのは十分に伝わってくるので、それでよいのだと思った。

“A Star is Born”なんかとは全く逆のベクトルの、歌のなかに埋もれてその歌も森の奥に消えていった.. かに見えて、でもこんな形で突然再生されて我々の耳に届けられるものもある。音楽との出会いって殆どがこういうのだと思うし、Ben Dickeyの丸っこい体躯を見ていると、森の熊さんだねえ、とか思って、こんなの教えてくれてありがとう熊さんというか底なしだわ熊おそるべし、て思うか。

Foleyを演じたBen Dickeyは、Fugaziに影響を受けて90年代にはハードコアやっていた人で、2005年くらいにFoleyの音楽に出会って衝撃を受け、丁度同じ頃にFoleyの音楽を追い始めたEthan Hawkeと共に勉強したりカバーしたりするようになってそういうのを8年くらい続けていて、Ethanから映画化の連絡があったときも、ほぼ一発で決まりだった(と後のQ&AでEthanは言っていた。WilcoもFoleyのファンですごくやりたがったそう)。そしてついこないだ、EthanとCharlie SextonがBen Dickeyの音楽をリリースするためにレーベル立ち上げた話が入ってくる。

Foley = Ben Dickeyの音楽にびっちり浸る、というのがひとつのテーマなのだが、それ以外にはSybilとの出会いの頃とか一緒になった頃のエピソードもよくて、映画的な美男美女とは違うのだけど、それでもふたりが一緒にいるだけで絵になって、ほんと素敵なカップルだったんだろうなーというのは十分にわかる。

上映後、ちゃんと着替えて登場したEthan Hawkeのトークは、トークじゃなくてそれ漫談だろ、くらいのノリで、Ben Dickeyを選んだ経緯とかCharlie Sextonとのこと(演技のことを教えてほしい、って”Boyhood” (2014) の頃に向こうから来たって)とか、ひとつの質問に対してずーっと楽しくおしゃべりしていた。彼のおしゃべりを聞くのは2回めで、最初のは随分昔にMOMAでみたRichard Linklaterとの対談、あの時もすごーくおもしろかったの。

映画が時系列じゃなくいろんな団子になって流れていく件については、こんなふうに人物を描く場合はこういうやり方のほうがよい、とRichard Linklaterに学んだとか。

そうそう、レコード契約のときにやってくる3人組がえらくおかしくて、それがSam Rockwell, Steve Zahn, Richard Linklaterのトリオって、なんだそりゃ、なの。

サントラ欲しいけど、まだ出ていないのかしら。秋の夜長にぴったりなのにー。

Ethan Hawke、こないだの”First Reformed”もすごかったけど、最近どうしちゃったのですか? ていう失礼な質問も飛んでいたねえ。

あと、Charlie Sextonはかっこよすぎる(彼がこんなんなるなんて誰が想像しただろうか?)。そのままTownes Van Zandtの映画を作って主演やるべき。

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