20日、土曜日の昼、Embankment Garden Theaterで見ました。 これもLFFでの1本。
前の晩の舞台挨拶にMelissa McCarthyさんは来ていたので、来るかなー会えるかなーだったのだが、やはり午前開始のには来てくれなかったわ。
作家Lee Israel (1939-2014)の同名の回顧録(未読)を元にした実話ベースのドラマ。
91年のNY、午前3時過ぎのオフィスで居残り残業をしているらしいLee (Melissa McCarthy)はふてくされて酒をちびちび飲みながら仕事してて、そういうのに我慢できなくなった上司はクビを言い渡す。
くたびれ果てた彼女がアパートに戻ると12歳の老黒白猫が待ってて、猫は具合がよくないので病院に連れて行ってもまず治療費滞納分を払え、って言われてしまうし、家賃を滞納していて衛生状態がよくないからかハエがぷーんて飛んでくるし、どこもどん詰まり状態で、かつてのエージェントに頭を下げるかとパーティとかに出てみても居場所がないのでクロークから他人のコートをかっさらって帰ってきたり、要するに元作家なのに完全な失業・破産状態で、少しでもお金を作らなきゃ、と古本屋に手持ちの本を売りに行けば、自分の書いた本が叩き売りされてて嘲笑われてしまう。
どうしようもなくなって、額装して宝物にしていたKatharine Hepburnの直筆の手紙(Leeは彼女の取材記事を書いたことがあった)を持っていったら結構な値になって、これはひょっとして.. と図書館の本に挟まっていた手紙にちょっと細工(P.S.文言の追加とか)をして業者に持ちこむと、これは珍しいかも、って震えるような高値で売れてしまう。
これだ! ってなった彼女は古いタイプライターを作家別に揃えて、サインの字体を真似たり、作家のレターヘッド入りの便箋を入手したり、オーブンで紙をうっすら炙って変色させるとか、偽装・改竄の技術を高めたり、図書館からオリジナルの手紙を盗みだしたりして量産するようになり、そこに友達のゲイのごろつきJack (Richard E. Grant) も売り手として加わって順調に進んでいるように見えた。 のだが裏では怪しいからこいつからは買うな、が出回り始めていて、やがてFBIが…
犯罪ドラマ、というよりも四方から追い詰められてそちらの方に踏みこまざるを得なくなった、しかもそれはただのかっぱらいみたいな仕事ではない、個々の作家の事情や特性を知っている自分のような者でなければ作り得ない、そういう点では創意を掻き立てられるようなやつで、だからやってて楽しいし、それをやってお金の余裕たっぷりな連中から少しくらい頂戴したっていいじゃんか? ていうのが彼女の(言わないけど)言い分で、そこに彼女の境遇 – ずっとひとりで家族も身寄りもなく、猫とゲイだけが友達、が被さってくると、誰もが”Can You Ever Forgive Her?” とつい呟きたくなってしまう、そういう流れがしっかりとあって、更にMelissa McCarthyの見事な演技が加わることで何とも言えないひとりの女性のドラマになっている。
Melissa McCarthy の犯罪モノ、というと“Identity Thief” (2013)があって、あれもおもしろかったけど、残念ながらおもしろかっただけで、こっちのは間違いなく彼女がひとりぽつんとそこにいる、そういうドラマができていて、それは監督の手法もあるけどそういう佇まいを捩じり出したのは彼女の演技で、最後の判事を前にしたステートメントの泣けることったらないの。
いまやだれもがネットでちょっとコピペ – 改竄したくらいでだれも責任負わないへっちゃら天国になっちゃったので、こういう目に見えるドラマは作りにくくなっちゃった気もするし、そういうのからしたら彼女のやったことなんて小さい方じゃん、とか思ったり。
彼女が”Forgive Me?” て訴えたのは判事とか市民とかに対してだったのか、おそらく彼女が勝手に文言を足しちゃったりした作家たちに対してではなかったのかしらん。
あとは、たったひとりで過ごすマンハッタンの描写 – 小さな本屋、バーのカウンター、薄汚れたアパートの部屋 + 猫 .. 晴れ晴れしたところがなにひとつないしょぼくれた街と人のかんじが描けていて、そこにBlossom DearieやPatti Pageが響いてくる。 ここまでよく絞って、雰囲気を作ったもんだなー。
とにかく、ここのMelissa McCarthy はすごいから見てみて。
貧乏人叩き、ブス叩きが大好きな卑怯者の国にっぽんでもぜひ公開されてほしいもんだわ。
10.27.2018
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