4.27.2014

[film] 残菊物語 (1956)

19日の土曜日、京橋の特集「日本の初期カラー映画」で見ました。

溝口健二の有名な同タイトルの(1939)と原作はおなじ村松梢風、脚本もおなじ依田義賢。
主演のふたりが、花柳章太郎 + 森赫子から長谷川一夫 + 淡島千景になって、白黒からカラーになって。

歌舞伎役者の尾上菊之助(長谷川一夫)は養子に入った二代目で、でも周囲からいまいち、とか言われててめそめそしているときにお徳(淡島千景)と出会って、彼女に芸のことをきつく言われるのだが逆に惹かれて仲良くなって、でも身分違いの恋なので周囲の反対にあって、菊之助は家なんか捨てて大阪に行くから駆け落ちしよう、て誘うのだが、お徳は駅のホームで身をひくの。

こうして大阪でひとり精進しているとお徳がひょっこり現れてよかったね、と思ったら大阪の師匠が突然亡くなって、行き場を失ったふたりはどさ回り歌舞伎団のきつい旅に入って、菊之助は荒れるわお徳は体を壊してしまうし散々なのだが、そんな地道な努力が認められて東京から戻らんか、と言われて、でも東京に戻る電車でまたお徳は身をひくの。 東京で菊之助はスターになるのだがお徳は...  なの。

みっしり入ったご年配のお客さん達のずるずるぐすぐすがホワイトノイズのように耳の周りで延々鳴り続けてて、確かにかわいそうなことばっかり転がっていくのでかわいそうなのだが、でもふたりはほぼずうっと一緒にいられたんだし、とかそっちのよい面をなんとか見てしまうのだった。

そうするとかわいそうばっかりでもなくて、ふたりが大阪で再会するとこの「きちゃった... 」「まじかよ」みたいな無言の切り返しは素敵だし、すいかもよいし、大阪でふたりを世話するおばちゃん浪花千栄子も楽しい(みかん... )し、悪くないの。

長谷川一夫の菊之助の強がり言う癖になよなよだめなとこと、淡島千景のむかしのにっぽんの女性、みたいに生活にやつれても芯だけは、ていう組み合わせも普遍的なかんじがしてよいの。 好き嫌いでいうと、けっ、だけど(組み合わせがね)。

あとカラーの色具合が抑えめで、淡色系の和の色が綺麗に出ていて、夏に始まって秋から冬へと流れるにっぽんの四季の美しくて儚くて、終りのほうのお徳の幽霊みたいな顔色も含めてよいのだった。

溝口の「残菊」を見たのは随分昔のことなので細かい比較はできないのだが、溝口のがシャープで残酷で救いようがなくて、こっちのがエモでウエットで、でもふたりがかわいそうなとこはおなじで、リメイクするくらいかわいそうに思うんだったらなんとかしてやれよ歌舞伎関係者、とかおもった。


でも今日みた「神様はつらい」と比べたらこんなの超極楽だよね、てしみじみおもったの。

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