3.02.2013

[film] For Ellen (2012)

修羅場目前の21日木曜日の21時くらいに見ました。
どうやって抜け出したのか、すでにあまり憶えていない。思いだしたくない。

場所はCurzon Soho ていうアート系のシネコンで、シアターは地下2階に3つ、地下1階にソファとかがあって、3/1公開の"Stoker"(Mia Wasikowska vs. Nicole Kidman。 はやくみたい)の宣伝用の看板がでかでかと置いてあってたのしい。 どのシアターも音はTHX certifiedでなかなかよいし。

この映画は去年、Film Forumでやってて、見たかったのだが叶わず、Londonに来てようやく。でもこっちでも既に1日2回上映くらい。 この回も5人くらいしか入ってない..

Paul Danoが主演で、製作にも関わっている。
彼はぎすぎすやつれたロック・ミュージシャン(外見だけだと少し前のシアトル系)で凍てつく冬の道路を車でずっと走って妻との離婚調停に向かうとこで、バンドのお仕事もうまくいっていないようで、ついてねーやってらんねーオーラを全身で発している。

離婚担当の弁護士がややマザコンのJon Hederで、こんな弁護士じゃ勝てるわけもないのでさらにぐだぐだに荒れていく。
で、彼の唯一の希望はもう目も合わせてくれず復縁の見込みもまったくない妻、ではなくて娘のEllenのほうで、ずっと会っていなかった彼女に一目惚れしてしまった彼は、彼女に生きる希望の光を見いだして、一日彼女を連れ出していい日になると、どっかの雑誌から切り抜いたパパのための娘アテンドマニュアルみたいのを握りしめてめちゃくちゃ張り切る … けどあまり当たらない。「アイスクリームきらい」って言われちゃうし。 要は彼女は彼をパパとして認知していないの。「だってずっと家にいなかったし」

でも、なんとしても諦めきれなくて、お別れしたあと、彼女がひとりでいる部屋に窓から入りこんで対面でお話しするシーンがとってもいい。 Paul Danoが出てくる映画って、変によれたテンション(テンションのタイプでいうと、今回のは"There Will Be Blood"に近いかも)のが多くてあまり泣けるとこがないのが普通のような気がするが、これは珍しく泣けるやつかも。

タイトルの"For Ellen"は、ベートーベンの"Für Elise" -「エリーゼのために」から来ているの。

ロック・ミュージシャンが出てくる映画なのにロックはそんなに流れてこない。
唯一あるのが、弁護士とふたりでゲーセンに行った彼が、Whitesnakeの"Still of the Night"にのって変な痙攣ダンスをするとこ。 でもそれをじっと見つめるJon Hederの目ははっきりと、オレのがもっと、オレだったらもっと … て言っている。

それからラスト、冬の凍りつく大地にド演歌のような力強さで吹いてくるThe Nationalの"Sorrow"。このバンド、ほんとにいいなあなんでこんなに滲みるかなあ、ってしみじみする。

あ、最後のほうで現在の彼女役でJena Maloneがちょこっと出てくる。
なんだちゃんと彼女いるじゃん、とかおもうの。

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