(高飛び間際でそんな時間ないのに)新年に見て、まだ書いていなかったやつを。
年の初めのはいつもクラシックを見るって決めていて、でも元旦に開いているとこってイメージフォーラムくらいなので、昨年と同様Carl Theodor Dreyer特集になった。”Vampyr” (1932) – すばらしい初夢、というかなんというか。
1月2日にはシネマヴェーラが開いたので、今年もよろしく~ とは言えないもののしばしのお別れをしに、そして特集『Film Gris 赤狩り時代のフィルム・ノワール』を見て気を引き締める。
ある意味”Vampyr”よかホラーで怖くてためになりそうなやつ。こんなテンションを抱えて一年を送りたいもの – ちがう。
監督はJohn Berry、音楽はAndré Previn。
冒頭、殺人課の警部補がカメラに向かって、容疑者から自白を引きだして解決するやりかたとして、必要なのはテンションだよ、テンションを加えていくこと - 「ぱちん!」て確信に満ちたふうに語ってお話しに入る。
カリフォルニアの24時間営業のドラッグストアでマネージャーをしているQuimby (Richard Basehart)は眼鏡の見るからに真面目さんで朝までせっせと働いてお金を貯めているのだが、妻のClaire (Audrey Totter)はそんな彼に愛想をつかして毎晩夜遊びし放題で、彼ががんばって買った家を見せてもちっとも喜んでくれず、ビーチ沿いに家を持つ金持ちのBarney (Lloyd Gough)のところに入り浸っている。
いいかげんにしろよって、Barneyのところに赴いて直談判したら彼に逆に殴られて、あたまにきたのでこいつを殺して完全犯罪をやったる、って決意して、眼鏡をコンタクトに変えてPaul Sothernという名前で見知らぬ土地に家を借りて計画を練るのだが、借りた家の隣に暮らすMary (Cyd Charisse)と仲良くなったりして、決行の晩も彼の家に入るものの手を下す手前でなんとなくやめてしまう... と、突然Claireが戻ってきて、Barneyが殺された… というと、すぐに警察が現れて心当たりはないか、と調べ始める。
警察は参考人としてPaul Sothern氏を探しているようなのだが、Paulであれ彼になりすましたQuimbyであれ、Barneyを殺す動機は十分にあるし、QuimbyがPaulであることがばれたら – Paulは殺しを実行するために作られたキャラなので、確実に相当にやばい。
本当はいちばん近くにいたClaireがまず疑われてもよさそうなもん、て思うのだが、彼女は警察にうまく取り入って被害者のふりをしているので、どうしよう…
真面目に妻に尽くしているのにちっとも報われない夫の殺意が、いじわるな妻ではなく妻を囲っている金持ち野郎に向かうところとか、その殺人のために作ったパーソナリティに新たな恋が生まれてしまうとか、ここまででやめちゃって十分だったのに殺人事件に巻きこまれちゃってなんてこった.. とか、ぜんぶQuimbyが思った方に向かわないってのに、その反対側でClaireはやりたい放題だとか、そういう事態にいちいちぜんぶ突っこみたくなるのが止まらなくて、それらが最後にどうなるのかー は見てのお楽しみ。
ひとの、世の闇を表にひっぱりだして戦慄するノワールだけじゃなくて、まっ暗どんよりな世で起こったこんな「他人事」をすごいなー、って眺める、そんなノワールもある。
The Big Night (1951)
12月31日、2023年の最後、シネマヴェーラで見ました。
監督Joseph Loseyが赤狩りのためヨーロッパに逃れる前、アメリカで最後に撮った作品。
Stanley Ellinの小説 - “Dreadful Summit” (1948) を彼とJoseph Losey他数名が脚色していて、助監督はRobert Aldrich、ボクシングマッチのシーンで少しだけ画面に出てくる。
17歳の誕生日を迎えたGeorgie (John Barrymore, Jr.)は内気で奥手で自分でもどうしたものかになっていて、バーをやっている父のAndy (Preston Foster)がケーキで祝ってくれても蝋燭の最後の一本を吹き消すことができないでいると、突然スポーツコラムニストのAl Judge (Howard St. John)がバーにやってきて父をステッキでぼこぼこに叩きのめすと出ていって、復讐を誓ったGeorgieは拳銃を手に夜の街に出ていって、いろんな人々 - 教授とその恋人、恋人の妹のMarion (Joan Lorring)、差別的なことを言って気まずくなってしまう黒人歌手、などに会って、お酒を飲んで、恋みたいなこととか、痛い目も含めていろんな経験をしてなんなんだこの世の中は … になる。
大人の世界ってなんでこんなにも面倒で野蛮で生き辛いのか、っていうGeorgieの目線はそのまま嬉々として赤狩りに勤しむアメリカ合衆国にも向けられているようで、そんなところに広がっている”The Big Night”。
これの前に上の”Tension”のJohn Berryが16mmで撮った(この後、彼もアメリカで映画を撮れなくなる)15分のドキュメンタリー作品 - “The Hollywood Ten”`が上映される。10人を淡々と紹介しておかしいだろ? って言うだけなのだが、ちっとも他人事じゃないのよ。
1.10.2024
[film] Tension (1949)
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