1.24.2024

[art] January 20 - Paris

1月20日の土曜日、日帰りでパリに行って帰ってきた。
パリはここ数年、届きそうで届かない半端な憧れ状態のまんなかが続いていて、前回滞在時のロックダウンの際にもなんとか行けないか隙間を狙って何度か画策したのだが難しすぎた。その前に行った時は地下鉄がストでものすごく動きにくかったし。

今回はどうしても見たいわ見なきゃの展覧会が3つ連なってあり、うち2つが1月の末で終わってしまうので、チケットは英国に渡る前に確保して、Eurostarのチケットも来て早々に取った。それくらいに行ったる、という決意は固かったの。

日帰りなのでいつも近所をふらふらする時のRough Tradeのずた袋だけ下げて、行きはKing’s Crossの駅を6時半に出る始発だったのだが、出国・入国のところはいつも激混みではらはらするので早めに行って並ぶ。それでも不安になってしまうのは(飛行機だったら諦めきれるけど)列車だとまた(目の前で)行かれちゃったあーあー… になりがちだからだろうか?

トンネルを抜けてフランスに出たらいきなり真っ白の雪景色だったので少しびっくりしたが、駅についてからはNavigoのカードを(初めて)買って地下鉄に乗ってつんのめるように祈るようにー。


Mark Rothko @ Fondation Louis Vuitton

地下鉄のLes Sablonsで降りて、雪まじり半凍りの路面だとぜったい(転ぶからふだんなら)転ばないようにペンギン小走りで着いたときには10:40で、チケットは10:00のスロットだったのだがもちろん平気。

初期の地下鉄の駅や人物を描いた具象寄りの絵の空間や輪郭、その錯綜具合に臨んでいるような、どうしても抽象に向かってしまう形象がおもしろくて、その線と形がMondrian的な方には向かわずに歪んであの色と面の四角に塗り潰されていく様がそうならざるを得なくなる溜息とか重力込みで展示されているかのような。計算されていたような(そりゃ計算するよ)部屋ごとの照明もみごと。private collectionのにおもしろいのがいっぱいあったかも。

次のパリ市立美術館までまだ時間があったのでオルセーに行ってみる。混んでいて入れなかったらスキップすればよいし。大人気のVincent van Gogh のはどうせ無理って諦めていたので、これを。


Peter Doig - Reflets du siècle / Reflections of the Century  @ Musée d'Orsay

同館が所蔵するPeter Doigの絵画数点と、彼自身がオルセーの所蔵品から選んだ影響を受けたという作品たちを一緒に並べてみる企画展。彼のセレクションは古典から印象派までいろいろあって、でもなんかやっぱり輪郭がよれて崩れたり滲んだりしたなにかが広がっているようなのが多いかも。Édouard VuillardによるFélix Vallottonの肖像、とか。 あといつもの4階とNavi派のがいろいろ出ていたのでその辺も。


Nicolas de Staël  @ Musée d'Art Moderne de Paris

最終日前日だったせいかなかなか混んでいた。Rothkoよりもこっちのが見たかったかも。
1940年代くらいまでのどこまでも線を引いていって、その線を使ってハサミで切るように切り出していた空間が少しづつ面を為すようになり、そこに光が当てられて厚みが加わり、その厚みが実際の空間とか事物と衝突して小さな音をたてていく。

Rothkoの面がカーテンを引いていくかのようにすべての光を覆っていき、こちらの目の裏に染み入ってくるのとはぜんぜん違う即物の目の前の、強く確かなそこにある表面にぶつかってくるパワーと不思議と。続けて見ていくと抽象のおもしろさがとめどなく湧いてくる、というか。


Viva Varda ! @ La Cinémathèque française

前回ここに来たのはChris Markerの回顧展だったなーそういえば。

Agnès Vardaの回顧 – といってももちろん映画作家としてのそれだけではなく、写真家であり批評家でありフェミニストであり活動家でありいろんな家族がいて猫飼いであり、ものすごく幅広いし、映画だけに限っても長編もあれば短編もあるしドキュメンタリーもあるし、アメリカとの関わりも沢山あるし、そういういろんな点や線をスナップショットから動画から書簡からメモから置物まで、”Viva”としか言いようがない物量で網羅していて、ぜんぶ見ていたら軽く2時間は掛かると思った。

『冬の旅』の撮影時のスナップとか、Sandrine Bonnaireが映画のなかで着ていたジャケットなどが浸みた。被写体としてのAgnèsってほんと素敵なのよね。

ここまでで展覧会の旅は終わりで、各会場でお土産としてカタログを買ってしまったりして、この3冊がどれもなかなか分厚いのでしんどかったのだが、最後にLa Grande Épicerie de Parisに行った。

ここはずっと自分にとってはヘブンで、いようと思えば軽く3時間くらい過ごすことができる。
これからの生活用に塩とかよくわかんないハーブ系スパイスとかブイヨンとか、いろんなマスタードとか、MAYOとか、やっぱり我慢できなくてBordierの瓶ヨーグルトいくつかとか、そういう瓶たちをがちゃがちゃ買って - 電車移動がよいのはこれらの液体とか関係ないことよ - バターとチーズをどうしようか悩みはじめたところでいいかげんにしろよ、ってアタマの奥でハリセンを抱えたもう一人の自分が言った。

帰国便は19:10発で、18時には北駅に戻りたくて、そこはなんとか。ほぼなんも食べていなかった - パリに行ってなんも食べないなんてありえない、って自分に怒っても遅くて、駅構内のPaulでデニッシュ買って食べて、電車乗ったらそのまま落ちて、気づいたら21時少し前、朝いた駅に戻ることができた。

見れていないのはまだいっぱいあって、Musée Marmottan Monetの”Berthe Morisot and the Art of the 18th Century” は行きたいよねえ - とするとまた来月なのかなあー。

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