1月29日、日曜日の午後、昨年8月の第一弾に続く上村彰子さん、鈴木喜之さんによるトークの第二弾。
今回はデビューから”Grotesque (After The Gramme)” (1980)あたりまでを中心に、そもそもThe Fall(Mark E. Smith)はどこから来たどういうバンド(ヒト)なのか、をこないだ出たマーク・フィッシャー『奇妙なものとぞっとするもの』とかアーサー・マッケンとか、ラヴクラフトなどを参照したりしつつ紹介していてとても勉強になった。
帰りにマーク・フィッシャーの本を買って帰ってざっと読む – 近年の小説・映画・音楽などの文化表象を「奇妙なもの」(The weird)と「ぞっとするもの」(The eerie)に分け、これらをフロイトの使うウンハイムリッヒ(unheimlich)- 再帰的な「不気味さ」からの退避・分離としてあるもの、って位置付けて分析をしていく体裁で、前半の「奇妙なもの」パートでThe Fallについては『「身体は触手だらけ」、グロテスクなものと奇妙なもの』というタイトルの1章が割かれている。 章のタイトルで言及されている通り、ほぼRough Tradeからの最初のアルバム - ”Grotesque (After The Gramme)”についての分析で、内容はそうなんだろうなー、くらいのものなのだが、でもMarkがこれ読んだらやはりてきとーぬかしてんじゃねえよ! って悪態つきまくることになるのでは、という予感が溢れてくるのが素敵。
英国の田舎の美しさ、ってそりゃあるのだろうし、いくらでも頷いて合意するけど、そういうのとは別に、奇妙なものもぞっとするものも路地の奥でも階段の隅でも歪な犬とか羊とかほんとうに湧いているようにいるしあるし、なんで? って聞いても、そういうのから逃れようとしてもしょうがないの。いるんだから。 その、いるんだから!! っていうありようのどうしようもなさときたらあんなふうにがうがう歌うしかないんだわ、って。
わたしがThe Fallを最初に聴いたのは、Rough Tradeが最初に徳間から紹介された時のオムニバス盤の”Clear Cut”に入っていた"City Hobgoblins"で、”Grotesque”にも入っていないシングルのB面なんてよく入れたもんだと思うけど、あの”Clear Cut”のなかではいちばんクリアじゃない1曲としてたまんないのだった。(ただ、曲順でいうとJosef KとOrange Juiceの間ってさあ..)
で、The Fallへのクラウトロックの影響、という話でThe MonksからMoebius - Conny Plank - Mayo Thompson の”Ludwig's Law” (1983)が流れて、そういえばMayo Thompsonって米国南部のHobgoblinsみたいのを追い続けていたねえ、と思って、そこからRed Crayolaと並行して彼が一時期いたPere Ubu(David Thomas)のことも思った。"City Hobgoblins"の歌詞でもユビュ王が言及されているし、どっちのバンドも中心人物以外めまぐるしくメンバーが変わっていくし、日本紹介も同期 - 同じ徳間のリリースにPere Ubuあった - し。 アルフレッド・ジャリえらい。
あと、トークの最初の方で言われていたBBCのドラマ - ”Mayflies”- 見れるかなー? と思ったら見れたので1話(全2話)だけ見た。Andrew O'Haganの同名小説 (2020)が原作。1986年のスコットランドで高校の仲良し5人組がもう中年の50近くになり、そのうちのひとりが癌で死期が近いのでバケットリストを作って仲間で親友の作家が実行しようとするのだが、そこにスイスに行って安楽死したい、っていうのがあって.. ところどころに高校時代の回想シーンが入って(映像のトーンも変わる)、冒頭にNew Orderの”Blue Monday”が流れて、The Skidsの”Into The Valley”がきて、ウェディングのシーンではCocteau Twinsの”Pearly-Dewdrops’ Drops”などが流れてたまんないのだが、The Fallについては、回想シーンで”Living Too Late”が流れるなか、マルクスがThe Fallに入ったらどのパートをやるのか? とか話しあったりしている(グロッケンシュピール? ベースじゃね?)とか、少しあとに“Totally Wired”も聞こえてくるのでThe Fall濃度つよい。
80年代のシーンで、高校の先生が主人公に向かって、この学校でEdith Sitwellのことを書いてくるのなんてあなただけよ、絶対にここを抜け出しなさい、そして二度と戻ってきてはいけない、って強く言うとこ。(トークのテーマに繋がる)
暗いお話なので(BBCこんなのよく師走に流したねえ)もう見るのやめようと思ったのだが、気になったので今日続きを見てしまった。 冒頭は高校時代の5人組がマンチェスターのハシエンダに行ってThe SmithsとNew Orderを見ようって冒険する話で(バックに流れるのはThe Wedding Presentの”You Should Always Keep In Touch With Your Friends”)、現在の方では安楽死の件を奥さんに黙ってスイス行きを進めたのでぐじゃぐじゃになるけど、最後にはなんとかスイスにたどり着くの。実行の日に彼が着ているシャツは Joy Division(黒じゃない、明るい色のUnknown Pleasureの)なの.. The Fallは最後の晩餐でも少しだけ..
ドラマとして悪くはないのでちゃんと書いたほうがよいかも、だけど見ていてかなしくてさー。
第三弾もやるしかない。
RIP Tom Verlaine..
あれこれもうほんとにかなしい。 自分にとっての大切なギタリストは、もうみんなしんじゃったわ..
(あとは、Vini Reillyくらい?)
最後に見たのは2005年、BAMでのPatti Smithの”Horses” 30周年記念ライブだったか。
でもやはり87年、よみうりホールでのソロ公演がとてつもなかった。生涯のベスト10にはいるくらい。
1.30.2023
[talk] 冬のPsykick Dancehall ~今年も聴きたいTHE FALL講座
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