11月13日、日曜日の昼、菊川のStrangerで見ました。久々に見ようかなー見たいなー、くらい。
監督はMonte Hellman、邦題は『断絶』。シリアスっぽいけど、原題は「2レーンのアスファルト道路」ってだけだから。
この作品を初めて見たのは2003年のリンカーン・センターで、この時はここでも久々の上映だったらしく(まだデジタル上映なんてないから)35mmのニュープリントで、担当の人(あれ、誰だったのかしら?)は「これはすごい作品なんです!どこがすごいかわかんないと思うけど」ってとても興奮していて、「?」ってなったが見てみたら実際にその通り、ほんとにどこがすごいのかあんまよくわかんないけどすごい! のだった。ものすごい突風とか豪雨をいっぺんに浴びて「なんだったの..」ってなるかんじ。
夜の公道ぽいところでいろんな車がぼうぼう音を立てながらお金を賭けてレースをしていて、グレイで車体の板とかぺなぺなでもっさりした(そんなに速そうには見えない)”1955 Chevrolet 150 two-door sedan” – という種類の車らしい - の運転をするThe Driver (James Taylor)とメカニックをするThe Mechanic (Dennis Wilson)が暗いなかで黙って作業して運転をして、彼らはその時に自分がやることをやっているだけで、その説明もここに至る経緯もなにもない、彼らの名前すら明らかにされない。舗装された道路 - Two-Lane Blacktop – をただ走っていく - 走っていくためにはお金が必要で、お金を得るためにはレースで勝つ必要があって – のぐるぐるを繰り返す、勝って一攫千金はないし、負けて橋の下、でもなさそう - でも死んでしまうリスクは高そう - そんなふうにして生きるのはどんなもんなのか、それを映すために必要なものしか視界に入ってこないし撮っていないし。車の運転も車がどうやって走るのか、どうすれば速くできるのか、わからなくても、この描き方であればわかる。少なくとも彼らの受ける振動や視界がどんなふうなのか。
そうやって東の方(どっちでも)に走りだした車の後部座席に、どこから来たのかわからない少女 – The Girl (Laurie Bird)が住みついて一緒に旅をするようになり、更に途中ですれ違ったり追い越したりしていたいけすかない黄色い車を運転するGTO (Warren Oates) - 彼もなんで走っているのかよくわからないけど隣の車線にいたりして敵対、というほどではない - が目に入ってくる。登場するのはほぼこれだけ。
画面上ではほとんど会話せず車を走らせているだけのThe Driver & The Mechanicに対して、GTOは道端にヒッチハイカーを見かけると乗せてあげて親しげに話しかけたり自己紹介したり(結果出ていかれたり)対照的で、The Girlはあまり明確な意思表明はしないで好きに乗ったり下りたりを繰り返している。
The DriverとGTOは東の方(ワシントンD.C.だったか)へのレース(先に着いたほうが勝ち)をやろうっていうことになるのだが、そこに行くまでの途中でもレースで金を稼ぐ必要があって、気まぐれでシカゴに行かないか、とかも出てきて、結局The Girlは朝のダイナーにいた若者のバイクに乗って消えてしまうし、最後もどこかのレース場で、踏みこんで走っている途中でフィルムが焼けて溶けるように終わってしまう。
そうやってTwo-Lane Blacktopの流れのなかでしか生きられない蛍のような若者たちの姿を、取り巻く社会とか家族とか階層とか、そういうのを一切切り離したところ(=断絶?)で描いて、そこになんの線引きも判定も裁定もしないで、でもドキュメンタリーかというとそうではなくて、でもJames TaylorもDennis WilsonもLaurie Birdの「虚無」とはまた違う方を見ている無表情はなにかを語っていないだろうか?
これを車もない、身寄りもない(自分から切った)女性のバージョンとして描くと併映していた”Wanda”(1970)になるし、彼らが80年代に入って落ち着いてお金とか仕事をもったりすると”Crash” (1996)に登場するようになる - 事故シーンが一瞬ある - のかもしれないし、もう少し主人公たちに喋らせたりすると『国道20号線』(2007) になる。
ほとんど口を開かないJames Taylorの殺気のアウラがすさまじいのだが、少し猫背ですたすた歩いていくところとか、ぼそっと”How are you doing?”みたいなことを言う時、現在のどこから見てもよいおじいさんの彼、が垣間見えたりするので、ずっと走っていっても人って変わるところもあれば変わらないところもあるな、とか。あたりまえだけど。
11.18.2022
[film] Two-Lane Blacktop (1971)
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