11月19日、土曜日の昼、シネマート新宿で見ました。
邦題は『君だけが知らない』、ハングルでは” 내일의 기억” – 英訳すると”Memories of Tomorrow”。この邦題、いいよね。 監督のソ・ユミン Seo Yoo-minはこれが長編デビュー作となるそう。
最後に急展開とかどんでんがあるわけではなく時間経過と共に明らかになっていくやつ、なのでふつうに書いていったらなにかバラかしているかも。なかなかおもしろかった。
病院のベッドでスジン(ソ・イェジ Seo Yea-ji)が目を覚ますと、ジフン(キム・ガンウ Kim Kang-woo)が涙を流しながらよかった.. って言ってて、見るからに弱って痛々しいスジンは病院行きのもとになった怪我かなにかで記憶を失っているか混濁している - ということを自分でもわかっている。
起きたときに傍にいたジフンがおそらく自分の夫、そんな彼が当然のように車で連れて帰ってくれた先が彼女たち夫婦の家(モダンなニュータウンの一角)、なのか? と見ている方も思いつつ、家に戻ったスジンのフラッシュバックなのかデジャヴなのかひょっとしたら実際に起こっていることなのかの区別がつかない/つけられない事態とパニックが続いて(退院できる状態だったとは思えない…) そのどのひとつもストーリーに落としこめるほど信用できるものではないが、スジンの経験した事故がとても怖く深く彼女の過去に根をはったものであることはわかる。
他方でジフンは夫婦でカナダへの移住の準備を進めているらしく、ビザ申請に行った大使館でのジフンの急いでいる様子とか、スジンが描いたという夕陽でまっかに染まった湖(カナダにある)の絵をみせたり、でもこんな新築ニュータウンのようなところに入ったばかりのようなのにもう移住するのか/できるのか、とか。
もうひとつは建築資材の盗難(のふり?)事件を追う2人の刑事と、そこの監視カメラに車で立ち去るジフンの顔が映っていて、更にジフンの建築関係の会社が傾いてやばそうであること、などがわかってくる。 流れとしては普通にジフンが怪しいと思うしそういう動きをしているし、おそらく本当の夫ではないなりすましで、でも単にスジンになにか悪いことをするために近づいているのでもなさそうなー。 (ここまでにする)
それが自分の記憶なのかどうかはあてにならなくて、見えているもの、浮かんでくるものは幻覚のようなものかもしれないことがわかっていても、そこに傷や痛みや危機 - 自分だけでなく小さな女の子とかの - が見えてしまうので、スジンは懸命にいろいろ動いて引っかき回しているとそれに跳ね返るように「事実」 - 男たちの顔が浮かんだりやってきたりしてきて、それらの点と線と時間軸が繋がっていく気持ちよさというか(事件の)気持ちわるさというかがー。
自分に見えていることは他人には見えない – これは当然として、ここでは自分の過去が自分のものではなくなっていること、それを知って握っている他人が自分(の過去)をきちんと知らせないままでいることの恐怖があって、この蓋をされたような恐怖もまた他人に伝わるものではない、と – 『君だけが知らない』ままにしておいたことには理由があった、けどどっちみち傷は開いてしまう。あのときスジンが偶然同窓生に会わなければどうなっていただろうか? あのままカナダに渡ってなにも起こらなかったかのように過ごすことと、この結末に向かうこと、どちらがー。
この辺の記憶(を自分が持てないこと、自分のを他人が持っていること、変わってしまうこと/消えてしまうこと)にまつわる恐怖とか強迫観念とか、最近いろんなところで大きくなってきているような気がしてなんなのだろうか、って。歴史修正主義のああいうのとなにか。
あとは舞台となったマンション - 日本だったら団地 – のエレベーターとかフロアに並ぶドアとかの誰もが知っていそうな配列、毎日見ている - どこかで見ているいろんな人の出入りのもたらす眩暈とか。 それが廃墟となった同様の建物に埋め込まれていたなにかによって揺さぶられて真実が.. というあたり。
11.25.2022
[film] Recalled (2021)
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