8日、金曜日の晩、MUBIで見ました。MUBIってアメリカとイギリスでやってるの違う(同じのもあるけど)ことに気づいた。これはアメリカのMUBIでやっていたやつ。昼間にCriterion Channelに繋いで、VPNをそのままにしていたらアメリカの方にいってた模様。
Philippe Garrelのモノクロので、英語題は”The Virgin’s Bed”、邦題は『処女の寝台』。
まだ若くていろいろ悩んでいるらしいキリスト(Pierre Clémenti)とマリア - キリストのママ・マリアとマグダラのマリア (Zouzou) - がいて、マリアは横たわっていたり部屋で座っていたりあんま動かず、キリストは白の聖衣を着て原野をロバで行ったりうろうろして(どこでなにをしたいのかわかんないけど)絶叫したり錯乱したり苦しんでいるっぽい。でもなかなか解決しないのか納得いかないのか、ママのとこに行ったりマリアのとこに行ったりして何か言われるとまた外に出ていく。前半はこちらに向かってくる姿が多くて、後半は向こうに遠ざかっていく姿が多い(気がした)。
ふたり以外にはロバの行軍にちょっかいを出してくる若者たちとか、拷問や虐殺が行われている洞窟とかが出てきて、そういった野蛮で荒れた俗世間の原野や水辺を痩せこけて悶々したキリストがぜんぜん懲りないふうに進んでいく。モノクロのスクリーン上に描かれる受難図。コントラストと構図、カメラのゆっくりとした動きがすばらしくて、窓の小さな四角の隅に小さく映りこむキリストの顔まできちんとわかる。シンプルで、でも世界の全体を俯瞰できるような強さがある。
基本は、他のガレルの映画とおなじく、個人の悩みなんて個人の悩みなんだから知るかボケ - 勝手に叫んで泣いてろ、っていうのを天下のキリストさまにもぶっつけているのが痛快なの。キリストさまも悩んで大きくなった、のではなくて、割とどうでもいいことで悩んだり叫んだりしてて、なかなかうざかったのね、って。
Zouzouが素敵で、お腹の大きいマリアが、キリストに「行きなはれ」って言った後にぴょん、て立ちあがって踊る瞬間がすばらしい。彼女が横になっている映画というと断然“Love in the Afternoon” (1972) - 『愛の昼下がり』のChloéだよね。(こっちの方が後なのか)
L'amant d'un jour (2017)
9日、日曜日の晩、MUBIで見ました。こっちはイギリスのMUBIでやっていたやつ。
英語題は “Lover for A Day”、邦題は『つかのまの愛人』。
撮影はRenato Berta、脚本にJean-Claude Carrièreが参加している。
La jalousie (2013) 『ジェラシー』- L'ombre des femmes (2015)『パリ、恋人たちの影』に続く愛の(不毛?)三部作の最後の1本なのだそう。(前のふたつ、もうすっかり忘れているわ.. )
冒頭、学校の倉庫の暗がりのようなところでセックスする中年のGilles (Éric Caravaca)と若いAriane (Louise Chevillotte)がいて、続けて道端でひとりわーわー泣いているJeanne (Esther Garrel)がいて、彼女がひくひくしながらアパートに入るとそれはGillesとArianeが一緒に住んでいるところで、JeanneはGillesの娘で、JeanneとArianeは同い年なのだった。
Jeanneはずっと一緒だった恋人にふられたって飛び出してきたところで、Gillesの家のソファで寝泊まりしながらArianeとそれぞれの恋のこと過去のこと性欲のことなどいろんなことを話して仲良くなっているようななっていないような、併行してGillesとArianeの関係の揺らぎとかJeanneの彼との復縁とか、結婚のような永続的ななにかなんてまったく視野に入ってこない関係の断面が描かれて、それはどんな修羅場を呼びこんでも、悲惨な状態になっていってもべったりすることはない。
どれだけ強く熱く愛していてもセックスしても愛の孤独はひとが孤独である限り(そしてひとは孤独なものなの)絶対に癒されたり解決したりするものではないのだ – 相手がどこかに行ってしまっても死んでしまっても自分が死んでしまっても - ていうのがガレルの愛に対する態度で接し方で、そしてそれは孤独のありようがそうであるように永遠にそこにあって、そんな永遠についてはそのまわりをダンスするしかないのだ、って。 なのでいつものガレル作品のようにダンス・シーンが圧倒的によくて、ここに生も死も愛も別れもぜーんぶ入っている。
3部作のなかでは一番好きなやつかも。
ここ数日間、頭のなかでずっとぐるぐるまわっていた曲がCamera Obscuraの”Lloyd, I'm Ready to Be Heartbroken”と"Let's Get Out of This Country”で、後者はほんとに心の底から歌っていた。 できることなら亡命したい。 あんなクソ以下の政治家たちが自分たちの好きなようにやりたがって、それが許されてしまうような国に暮らすのはいやだ、出よう。 家出、脱藩、亡命、なんでもいいから縁を切りたい。切らせて。
5.15.2020
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