10日、日曜日の晩、Curzon Home Cinemaで見ました。ルーマニア映画で、英語題は“The Whistlers”。
関係ないけど、”Whistler”や”Whistlers”が含まれる映画のタイトルってホラーやサスペンスを中心にすごくいっぱいあるのね。
冒頭、ひとり船でどこかの島に向かうハゲの中年男- Cristi (Vlad Ivanov) - がいて、背後にIggyの”The Passenger”ががんがん流れる。島のリゾートっぽい雰囲気とはCristiのくすんだ表情も含めてぜんぜん合っていない。
船が着いたのはカナリア諸島のラ・ゴメラ島(これがオリジナルのタイトル)で、やはり怖そうな男(笑わない)が待っていて携帯もOffにされて、山の上のお屋敷みたいなところに連れていかれ、そこにはぴりっとしたお姐さん – Gilda (Catrinel Marlon)とかどうみてもやくざなおっさんとかがいて、やはり笑わないのでこれからなんかおっかないことをする/されるのだな、と思う。
ここで始まったのはこの島に昔から伝わるシルボ(el silbo gomero)っていう口笛言語のトレーニングで、折り曲げた指を口の中に入れて口笛を吹くのだが、ただの信号とか合図ではなくてちゃんとした文章の伝達までできる(ユネスコの無形文化遺産なのね)。最初は口笛すら満足にできなくて大変そうなのだが、Cristiは怖い人たちに教え込まれながら上達していく。
ていうのと並行して(時系列は遡るのか)、殺伐としたブカレストでCristiのところにGildaが訪ねてきて、監視されているから気をつけろ、ってふたりはコールガールと客の振りをして部屋で会って情報をやりとりし、そういうのからCristiは当局に監視されている警察側にいて、Gilda達マフィアがロンダリングしたお金をどこに隠してどう運ぶのかを捜査している側でもあることがわかる。金の在り処を知ってて拘束されているZsoltをどう使って連中をおびき寄せて潰すのか逃亡させるのかお金を懐にできるのか、最後にCristiはどっち側に転ぶのか殺されちゃうのか。警察側もマフィア側も全員が無表情に仕事してて何考えているのかわからないスリルがあって、そういうとこにマフィア側の通信手段として使われる口笛が鳴り響く。
監視したりされたりし放題だし携帯の暗号化通信だっていくらでも使える荒んだ都市の真ん中で西部劇のインディアンが使うような口笛を使って救出・逃亡劇を仕掛ける(Cristiが捜査側のボス – 女性 -と会って計画にGoを出す映画館でかかっているのが『捜索者』(1956) ってできすぎ)のがおもしろい。夜の闇のなか、口笛を頼りに全員でうろうろして、どっちが敵か味方か背中に気をつけな、って。秘密兵器もないしものすごく強くて鋭い男も宿命の女もいない、こういうところでダブル・エージェントの物語は成立するのか、っていう試みでもあるのか。
やたらマッチョでブルータルになりがちな(気がする)最近の犯罪モノのなかでは静かで口数少なくて爽やかなかんじすらして、悪くなかったかも。
シルボってやってみたいけど、やっぱりスペイン語の文法や単語知らないと無理よね。それ以前にあんな音でないや。
最後に映画館に行ってから2ヶ月が経ってしまった。 WFHが始まってから2ヶ月が経ってしまった。
なんか信じられなくてうう、ってなっているところにBright Eyesの新曲がとってもしみてべそかきながら10回くらい聴いた。
5.18.2020
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