きのう7日、木曜日の晩、MUBIで見ました。とってもよくて興奮しているのでこっちから先に書いておく。
昼間にMUBIから今晩これやりますー、のメールが落ちてきたときは嬉しくて夕方が楽しみで仕事が手につかなくなった(で、実際につかない。在宅ってこれだから..)。
以下、各映画の邦題は調べるの面倒だし、いちいちうんざりするし恥ずかしいし、なので邦題は併記しません。知りたいひとは各自勝手に調べてね。
わたしはこのジャンルが本当に好きで、ホラー映画好き、SF映画好き、犯罪映画好き、戦争映画好き、そういうジャンルのなかだと圧倒的にromcomで、B級だろうがC級だろうが好きで、日本の映画ファンの傾向が少年ジャンプ - 映画秘宝的なガキ汁満載(の結果としてのromcom軽視)なのに対する幻滅とうんざりもあって、昔からずっと好きで、英国でも映画チャンネルでなんかやっていると必ず見るし、在宅が始まってからBridget Jonesのシリーズはもう2回転くらいみているし、Notting Hillは3回くらい見ているし、とにかく何度見てもぜんぜん飽きないのよね。
さて、あの見事な学園ドラマ考察ドキュメンタリー - “Beyond Clueless* (2014)で音楽を担当していたバンド - Summer Campの片割れ(ヴォーカル担当)のElizabeth Sankeyさんが監督し、同様の手法で古今のRomantic Comedyをちぎって繋いで解析する。 Summer Campのもう一人のJeremy Warmsleyさんは劇伴音楽とProducerをしてて、“Beyond Clueless*の監督 - Charlie LyneさんもContributorとして参加していて、ご近所制作ドキュメンタリー。(彼らはみんな御近所に暮らしているって、2017年のSomerset Houseでのトークイベントに登場したSummer Campのふたりは言ってた)
“Beyond Clueless*が章立ても考えた論文のような体裁になっていたのに対し、まず自身がどれだけこのジャンルを愛してきたか、冒頭が”Made of Honor” (2008)の結婚式のシーン(最初がこれ、っていうのがすごくうれしい)で、自分の結婚式はこんなふうになるのだと思っていた、っていうところから自分がいかにromcomに描かれる愛や結婚の理想形を崇拝し妄想し影響されてきたか、結婚したらしたでこんなことが起こるのだと思っていたわ、って自分にとってのromcomをざーっと語り、そこから時代別にスタイルの変遷を語っていく、ただところどころジャンプしたり巻き戻ってみたり、基本は彼女のromcomに対する火山のように噴き出して抑えきれない愛がドライブしていく。 ついてこれるやつはついてこい! の78分。
時代的には30年代のスクリューボール・コメディ - “Twentieth Century” (1934)、”Bringing Up Baby” (1938)、“His Girl Friday” (1940) - あたりから入って、強い女性が男どもを引っ掻き回す、というスタイル(これらをromcomと呼ぶのは諸説あると思うけど)から、50年代のMarilyn Monroeの登場とそれに続くDoris Dayによりセックス・コメディとなり、それらのエッセンスを継いで、理想に向かって突っ走る愛のどたばたを描くものとして80年代に浮上し、”When Harry Met Sally” (1989)や”Pretty Woman” (1990)のヒットを機にジャンルとして90年代以降に爆発する。
”When Harry Met Sally”以前の80年代で紹介されているのは、“Splash” (1984)、“Roxanne” (1987)、“Working Girl” (1988) とか。まったく異議なし。 (自分にとっての最初のは“Splash” (1984)だなあ。日比谷映画で最初に見た時、3回続けて見たの。いまだにTVでみると最後の方で泣いてしまう)
ジャンルとして確立された頃のromcomは、白人 - ヘテロセクシャル - ミドルクラスの女性をターゲットとした、彼女たちの理想の男、愛、結婚、人生を獲得する or そこに向かうぐじゃぐじゃを描いていくもので、それが今世紀に入って男性にとっての理想(含. 失恋)も入るようになり - ”500 Days of Summer” (2009)とか”Ruby Sparks” (2012)とか、さらにLGBTQの目線で”Kissing Jessica Stein” (2002)とか”God’s Own Country” (2017)なんかも入ってきて、他人種のもあり - ”The Big Sick” (2017)、”Crazy Rich Asians” (2018)、最近はかつてのバディ・ムービーの女性版のようなところ - “Bridesmaids” (2010)、”The Other Woman” (2014)まであり、“Silver Linings Playbook” (2012)のあたりからはオスカーまで狙えるくらいになった、と。
ここまでくるとなんでもありなんじゃねえの? とも思うが、全体としては彼を/彼女を独り占めしたい! っていうところから始まってどうしたら彼を/彼女を幸せにすることができるんだろ(もちろん自分も!)、っていう理想と妄想が引っ掻き回すhuman connectionを描くコメディ、っていうことだと思う。そして、そこにおいてリアリティはあんま関係ないの(これ重要)。
というようなことは見た後でぼやーっと浮かんでくることで、これを見ている最中は、クリップのひとつひとつにあーこれ! えーとこれなんだっけ? あーそうそうこれ! とか鳥肌とか瞳孔そんなのばっかりで、途切れ目なしに100万発ぶちあがる花火大会のまんなかにいるような喧騒状態だった(頭の中が)。 後半の怒涛のキスシーンの連続のとこなんて特に。(ここ、一番好きなのはどれだろ? って思って、”Punch Drunk Love” (2002)かなあ、とか。いやまて.. )
おそらく、監督自身がこれを作っている最中そんな状態だった - それこそromcomの主人公のような嵐とパニックの只中にあったのではないかしら。 だって、ところどころで被さってくるSummer Campの曲がromcomのサントラのようにエモに乗ってサーフィンしていく、その爽快さときたら。 自分で流れを掌握していればこそできること、よね。
たぶん、もう少し客観性を保ちたかったら時代とか経済(バブル)とか女性の地位向上とかフェミニズムとか、そういう角度からの考察あった方がよかったのかも、とかやっぱしMeg RyanとJulia Robertsにはセクションを作ったほうがよかったのでは、とかあるのかもしれないが、監督はその辺をわかった上で外したのではないか。 すばらしい勢いで一気に見れるMix Tapeでもあるの。
そしてもちろんやっぱりいろいろ見返したくなるなー、って。 いろんなベストを考えてしまう。 そのうちもう一回見るかも。
今日(5月8日)は75回めのVE-Day(戦勝記念日)で、忘れてぼーっとしていたら朝10時過ぎ、ものすごい爆音が向こうからやってきて、窓あけたら9つの戦闘機が真上をぶっ飛んでいった。 震えあがるくらい極上の轟音だった。 戦争反対。
5.08.2020
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