10.02.2019

[film] Lust for Life (1956)

9月13日、金曜日の晩、BFIで見ました。絵画の映画ということで。 邦題は『炎の人ゴッホ』。

最近のゴッホ映画というと”At Eternity's Gate” (2018)  - Willem Dafoe主演/Julian Schnabel監督のがあったが、これはIrving Stoneの同名小説(邦題『炎の生涯 ファン・ゴッホ物語』)を原作にしたもの。結末の彼の死因も両者ではちょっと違っている。こっちの監督はVincente Minnelliで、クレジットされていないが一部のシーン(Theoのアパートのところ)をGeorge Cukorが撮っている。

上映はデジタルで、もうちょっときれいなデジタルのがよかったかも。冒頭で作品の画像提供に協力してくれた美術館の一覧がばーっと出て、こんなにいっぱい.. ってちょっと感動する。

伝道師として修業をしているVincent van Gogh (Kirk Douglas)がいて、ベルギーの炭鉱に赴くのだが炭鉱夫たちの悲惨な生活の現実に直面して伝道どころではなくなって破門され、やっぱり絵しかない、ってがんばるのだがぜんぜん売れなくて、パリで印象派の動きに触れてPaul Gauguin(Anthony Quinn)と出会って励まされ、他方で病気が悪化して弟のTheo (James Donald)に助けてもらい、でもどっちにしたって自分には絵しかない、描きたいんだ、で最後には.. 

そんな彼の生涯の節々に彼の描いた絵がストップモーションで挿入され、それがその時の彼の状態や感情を説明してくれるわけではない(よく見ればあるのかしら?)のだが、絵のために生きて、生きるために絵を描いた彼の生涯をその横で静かに照らしているのと、別にそういうのなしでも絵はずっと、ただそこにあるというー。

“Lust for Life”で、『炎の人』で、そこにあの燃えあがるような絵 – 「暗い」っていう人もいるけどわたしはゴッホの絵はふつうに「明るい」と思う - が重なるので、全体のトーンはとても強くて、悲劇的なトーンはあまりない – Kirk Douglasの演技は熱量たっぷりでも、画狂人とか狂気の方には最後まで振れていかないような - のはよかったかも。でもほんとここって、どこまでも強い弱いがどす黒く支配する男の世界だよねえ、ていうのと、今の時代だったら軽くはじかれてすぐに潰されちゃったかもしれないねえ(交付金でないよ)、ていうのと。

7月に見たTateでの”Van Gogh and Britain”には英国時代の彼の絵が結構展示されていて、その頃のは割とちがうかんじ– それこそ”Lust for Life”で、あとFrancis Baconの描いた3枚の絵 - ”Study for Portrait of Van Gogh IV”, “Study for Portrait of Van Gogh VI”,  “Van Gogh in a Landscape” があって、どれも1957年製作なのだが、年代とか色合いから、この映画からの影響が指摘されていて、館内では小さな端末からこの映画の映像が流れていた。(実際には機械が壊れていて見れなかったのだが)(のがこの作品を見たいと強く思った理由)

ゴッホその人とかそのパッション、Lust、はこの映画でだいたいわかるのだが、ゴッホにはふつうの田園風景や人物がなんであんなふうに見えていたのか、あんな技法で描かれなければならなかったのか、をそれなりの説得力で追ってみたものが見たい。本ではあるのかもしれないけど。  Dr. Paul Gachet (Everett Sloane)が出てきたのでなんか言うかしら、と思ったのだけど。

ただ、あの時代の画家を描いた映画、絵画映画としてはものすごくきちんとしていて - 美術館を抜けてきたかんじがして - よかったかも。

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