3.15.2018

[music] John Cale (2018-1964): A Futurespective

9日の土曜日の晩、Barbicanで見ました。

9-10の二日間のシリーズの一日目で、これまでの全キャリアを総括する、といいつつタイトルは”A Futurespective”となっている。 Blue Noteでの公演メンバー4人(+エレクトロの人?)に加えて左手にLondon Contemporary Orchestraの弦楽(17人)がびっちり、奥手には同Orchestraの管の人達(7人)、右手にはthe House Gospel Choirていうコーラス隊(13人)が詰まって、曲によって入ったり入らなかったりするものの、ものすごく分厚く贅沢な構成。これにゲストでアコギを抱えたヴォーカルのCate Le Bonさんが数曲で参加する。

ビジュアルは奥にでっかいスクリーンと、左右にもノボリ仕様で垂れ下がるスクリーンがあって、計3面でいろんな映像 - 実験映画みたいのからゆらゆら模様まで - 流れていく。

9日と10日では曲目は結構違っていて(10日の”Heartbreak Hotel”、聴きたかったなー)、つまり2日間かけてほぼぜんぶを舐めていくかんじなのだが、基本はCageやLa Monte Youngといった米国前衛音楽の系譜に50〜60年代のポピュラーをぶつけてみて、結果的にものすごく裾野の広い豊かなうねりをもった音楽図鑑みたいなのを見せてくれる。

そこらへん、4人のみのバンド編成だと緻密なコンビネーションとか技巧を凝らした細工に驚嘆してばかりだった気がするが、今回のはやたらスケールがでっかくて深いので曲の特性がダイレクトに伝わってくるかんじ。
もう少し言うと、弦とか管はただ音を厚くしているだけではなくて、Deantoni Parksが右に左に変態ぽく散らしまくる細かなビートの断片を拾ってその延長で全体を揺らしまくるようにダイナミックに機能していて、もうひとつの曲の特性を決める彼のヴォーカル - ものすごく正統に朗々と響く声のほうは、ゴスペルのコーラス隊が正面から受けとめて増幅してくれるので笑っちゃうくらい感動的に響き渡るのだった。
ただ、決してメインストリームに来るような耳触りのよいポピュラー音楽ではなくて、どこまでマイナー道を行くかっこよさ、クセになるかんじがあって、曲のたびにうううって唸るしかないの。

何年前になるのか思い出したくもないけど、彼の初来日公演(パルコ劇場だったかしら?)のソロ(彼の声と鍵盤のみ)を聴いて、これは一生聴いていくやつだわ、って思ったあれが、今回の大編成になってもきれいな弧を描いてつながっている気がした。

あと曲名は忘れちゃったけど、数曲で立ち上がってギターを弾いてた。
エレクトリックギターは客席に背を向けてバンドの音に没入して戻ってこない。Lou Reedのライブにもそういうところがあったけど、えんえん引っ掻き続けて音に浸るのがたまんないぜ、ていう顔を(たまにこっちを向いて)していた。音はごりごりの電気鋸の拷問が渦巻いてて極Sの”Vintage Violence”としか言いようがない。
アコースティックギターのほうは、フォーキーで清らかなCate Le Bonさんのヴォーカルと絡むのだが、”Buffalo Ballet”なんて、泣きそうだった。こんなふうに鳴る曲だったのかよう、って。

Velvet Undergroundの曲は最後のほうの”I’m Waiting for the Man”くらいだったが、シューゲイザーの一歩手前くらいの火炎放射器みたいな音だった。男が寄ってきてもそのまま焼いちゃうみたいな音。

この日は彼の誕生日だったので、ゴスペル隊と一緒にみんなでHappy Birthdayを歌った。
76歳だって。 あんな嬉しそうに笑うのね。

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