3.09.2018

[film] Dark River (2017)

23日の金曜日、いろいろあったので会社を休んで、空いた時間にCurzonのBloomsburyで見ました。
理由ははっきりしていて、PJ Harveyさんが主題歌を歌っているから。

ヨークシャーの田舎のほうで羊の毛刈りとかをしているAlice (Ruth Wilson)は父親(Sean Bean)が亡くなったとの報を受けて実家の農場に戻る。本来であれば自分がそこを継ぐことになるはずだったのだが、戻ってみれば飲んだくれで喧嘩っ早い弟のJoe (Mark Stanley)はいるわ、手続きだのなんだの問題だらけで土地と同じくらい厄介でその泥々にぐったりする。

更にAliceには父親から性的虐待を受けていたトラウマもあり、実家の佇まいや物陰、いろんな音、などなどからその亡霊とおぞましい記憶が蘇ってきて彼女を苦しめる。 父親が残した土地には当然のように過去の残滓がこびりついていて、同時にそれは自然の一部でもあるので風雨があり濁流があり簡単に納まってはくれなくて、更にそれを継ぐにはいろんな義務だの手続きだのが降ってくる。 ではさっさと手放してしまえばよいか、というとそれも違って、自分はこの土地から離れて生きられるほど器用じゃない、ということも判っている。

主題歌の“An Acre of Land”は冒頭と終わりの2回流れて、”My father left me an acre of land~”で始まるその歌は、柊よ歌え~蔦よ歌え~諦めよ ~ のようなことが止まない風のように繰り返される。 そんな彼女の歌がぼうぼう吹けば吹くほど立ち去ることができず、吹きっさらしの中で立ちつくす強い想いがくっきりと浮かびあがってくる。

荒れて寂れた農場の辛そうな感じ、湿地、冷たく重い雨、川の深み、それらに囚われて動けなくなってしまうイメージの連なりは見事で、他方で物語は割と簡単に決着してしまうので、そこだけ少し惜しかったかも。

こっちに来て農場もの、みたいなジャンルがある気がしていて(気がするだけだけど)、昨年だと”The Levelling“ (2016) とか”God's Own Country” (2017) - 未見、見なきゃ – とかいろいろあって、あと米国だけどKelly Reichardtさんの映画もここに含まれると思うのだが、日々の辛い農作業労働とか農場経営とかの間に、それでもひとはどう生きるのか、例えば土とか泥とかのように爪の間に愛なんかがどう挟まってくるのか、をざらざらと具体的に描いていて、よいの。 日本でも十分ありうるテーマのひとつだと思うのだが。

あと、今作も”The Levelling“の監督もKelly Reichardtさんも、みんな女性だということ。
“The Levelling”とこの作品は少しだけ似ていて(あーでも違うか)、とてもよいので日本でも公開されてほしいなー。

この日、ぷらぷらしつつ、この近所で以下の展示も見た。

Living with gods: peoples, places and worlds beyond  @ The British Museum

宗教、とか大括りにしなくても、人は大昔からこんなところに、こんなふうに神とかその痕跡とか兆しとか効能とかを見たり近づこうとしたりしようとしたものなのじゃよ(ていう口調になる)、ていう具合に古代から現代まで世界まるごとを網羅した大風呂敷。 こんな壮大な展示、大英博物館以外にできるとは思えない。

お祈りやお祓いのためのいろんな道具、シンボル、お飾り、衣装、お化粧、楽器、などなどなど。
世界のあちこち、時代のそれぞれで不思議と似通ってしまっているもの、ぜんぜん違っているもの、が現れてくるのは当然だと思うし、日本からはちっちゃい神棚とか、なんとか権現の木彫りの男根とか(選んだのはだれだ?)。

あの木彫り、Shopで売ってみればいいのに。(御守りだし)

Fate Unknown: The Search for the Missing after the Holocaust @ The Wiener Library

タイトル通り、ホロコーストの後に後方不明になってしまった人々を探そうとする、延々と続いている活動の紹介。消えてしまった個々人からの手紙、写真、遺された品々から、複数の捜索機関がどのように膨大な情報の山の中から不明となったその人を同定し、特定し、不明と(あるいは死亡と)認定するのか、を具体的な書類や証拠物件から例示している。 戦争で人が後方不明になるのは当然、というかもしれないけど、自分の肉親や友人がある日突然消えてしまうような異常な事態は、今でもどこかの国で起こっていることだし、日本だっていつそうなってもおかしくないよね。あのバカが居座っている限りは。


今日(もう昨日か)は、International Women’s Dayで、Skyの映画チャンネルの番組リストには以下のような映画が並んでいる(いた)。 “Wonder Woman”(今日から)、Hidden Figures”、”Rogue One: A Star Wars Story”、”Suffragette” (2015)、”Dreamgirls” (2006)、”Erin Brockovich” (2000)、”A League of Their Own” (1992)。 

いいよねー。

(そういえば昨日はなぜか「この世界の片隅に」をやってた)

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