モスクワから戻ってきたところで、あそこってずっと氷点下数10℃の世界、川はぜんぶかちんかちんに凍っていてひー、だったのだが、先週のベルリンから今週のロンドンの大寒波で、モスクワ、とくると怖いものないわ、になってきた。春なんていらねえ。
2月24~25の週末にベルリンに行って、24日の晩にRosa-Luxemburg-PlatzていうところにあるVolksbühne Berlinていう見るからに重厚そうな劇場でみました。
Albert Serraの初の舞台演出作にIngrid CavenとHelmut Bergerが出る - これを知ったのが1月の頭で、あー見たいかも、と思って、曜日を見たら土日にやるし、ベルリンはまだ行ったことなかったのでついでに行くかーと思って、チケット取ってひと通り手配したらぜんぶ済んだ気になってすっかり忘れていて、直前の観光情報仕込みは一夜漬けで現地に行ったら顔を上げる気にもならないありえない寒さで、地点Aから地点Bまでを移動する(の繰り返し)だけで精一杯なかんじだった。
劇場の中に入ったら席はなんでか一番前のまんなかで、チケット取った時には気にしていなかったのだがこんなことでよいのかしら間違いではないか、ときょろきょろ見渡してみたのだがどうしようもない。
舞台の上には奥手に向かって土が緩やかに盛ってあって草が散らしてあって、端のほうに打ち捨てられたかんじの屋根付き馬車の荷台(?)が置いてある。村のはずれ、森のはずれ、のような場所。ずっと鳥とか虫がしーしーきーきー鳴いている。
幕が開くと奥のほうには緑があって川だか泉だかがあって、若い兵士ふたりが休みを取りながらぶつぶつ話し合っている。ふたりはフランス革命前夜、Louis XVI統治下のがちがちのフランスから逃れてきてドイツの自由思想の持主Duc de Walchen (Helmut Berger)と会って、更にはばりばりの底抜けに狡猾なあばずれDuchesse de Valselay (Ingrid Caven)をドイツの貴族社会に解き放ってぐだぐだのアンモラルな世界を実現しよう、ていう企みがあるようなのだがそんなのはどうでもよくなって、とにかくその広場みたいなとこには陽が沈む頃になると従者の若者たちが担ぐ荷台が運びこまれ(舞台上には打ち捨てられたのがひとつ、どこからかやってくるのがひとつふたつ)、その中で待っているひととそこを訪れるひとがその中でいろんなやらしいことをしてて、Duc de WalchenもDuchesse de Valselayもそれを荷台のカーテン越しに覗いたり自分もやったり家来とやりあったり、そういうのが延々続いていく。要するに18世紀末、カーセックスしたがりが集う公園の外れみたいな場所があって、王朝だの貴族だの社交だのあるけど、あるいは”Liberté”とか言ってるけど、やってるのはそんなようなことなの。荒地の果てのようなとこで。
Duc de Walchenが荷台から這い出てくるのは2回くらい、よれよれで倒れたりもしていて(「家族の肖像」の教授みたいな)後はほとんどただの覗きじじいで、Duchesse de Valselayは対照的に元気にきーきー騒いでいるが若者たちからすると変なおばあさんでしかない。彼らは若者から畏れられたり崇められたりしているものの、結局は色とエゴに狂ったエロ老人たちでしかない。
舞台に運ばれてくる2台の荷台と置かれている荷台の間で行き来し絡みあうねっちりした眼差しと、それが隠れている人達、荷台の外にいる人達に引き起こすヒステリックな挙動やじたばたがおもしろくて目を離せなくて、極めて映画的なテーマであり構図であるようにも思うのだが、これを舞台でやる、というのはどうなのかしら、というのは少しだけ思った。ワゴンのカーテンの影からDuc de Walchenがちらちら覗きをするシーンとか、前の方にいたらその動きがわかるけど、後ろの席のひとにはわかんないよね(と、NY Timesのレビューのひとも書いてた)。あと、これは自分のせいでもあるのだが、英語字幕の出る場所が舞台のすごく上のほうだったので、字幕を見て舞台を見る、その上下往復運動が結構しんどくて、もう少し後ろの席にしたほうが全体を見渡せたかなあ、って。
Albert Serraの“The Death of Louis XIV” (2016)での死につつある絶対権力者に向けられた視線と寝室という場所の磁気、重力のありようと、”Liberté”での屋外に点々と置かれた移動式個室の上/間をすごい勢いで飛び交う視線に哄笑におしゃべりに。更には前者で圧倒的な密度で描かれた「死」に対するエロス(リベルテ?)。やがて革命を起こされてしまう側と起こす側の態度とか身なりとか。
バックスクリーンに“The Death of …”を流しながら上演しても面白くなったかもしれない。
そして ”Louis XIV”のJean-Pierre Léaud から Ingrid Caven - Helmut Bergerというクラシカルな重鎮の起用と。最後に聞こえた力強い歌声はIngrid Cavenだと思ったのだが、あちこち見回してみてもどこで歌っているのかわからなかった。
それにしてもIngrid Caven、すごいわ。2012年のNYFFで彼女のライブドキュメンタリー - “Ingrid Caven, Musique et Voix” (2012)を見て痺れてから一度ほんもの見たいなー、と思っていた夢がようやく。ライブやってくれないかなあ。
休憩なしの一幕もの、2時間強で、終わってなんかもっと、のかんじがしたので地下鉄で隣のAlexanderplatzに行って、ああこれが”Berlin Alexanderplatz”だわ、って、Franz Biberkopf みたいのが歩いてないかしら、と思ったのだが、遠くでクラブミュージックみたいのが鳴ってて、ただ寒いばかりなので諦めて(なにを期待してた?)帰った。
ベルリンの他のはだらだら書いていきま。
3.03.2018
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