4.09.2016

[film] Marguerite (2015)

20日のお昼に恵比寿でみました。『偉大なるマルグリット』。

20年代のパリ、郊外のお屋敷で音楽サロンつきのパーティみたいのが開かれようとしていて、新進画家と新聞記者の貧乏若者組がもぐりこんで遊んでいたら、宴のメインはそこの女主人 - Marguerite Dumont(Catherine Frot)の歌唱らしく、始まってみるとそれはそれはものすごい音痴のとんでもない代物だったのだが本人は完全に没入して歌いあげていて、周囲はまたか、ていうかんじで完全に無視していて、その構図の異様さに感動した新聞記者はそのライブを絶賛した記事を載っけてしまう。

それを読んだMargueriteはもちろん大感激で、二人組に誘われるままにパリのクラブでのライブも引き受けて、夫はそんなの大恥だから止めるべし、だったのだが工作に失敗、彼女は舞台に立ってしまって、ダダ・アヴァンギャルド前夜のパリのアングラクラブだったからよかったものの、結果としては散々で、でもというかだからというか、彼女はやっぱしちゃんとした先生についてもらってがんばらねば! となにかに目覚めてしまい、落ちぶれかけていたオペラ歌手Pezzini がトレーナーとして呼ばれ、彼は彼でそのありえないレベルに仰天するものの、なにかが引っ掛かったので協力するようになって、やがて大舞台の晴れの日がやってくるの。

勘違いした猛おばさんに周囲がきりきり舞いさせられ、やがて大円団、ていう小コメディかと思っていたらそんなでもなくて、新聞記者と新人歌手とか、夫人と召使とか、浮気している夫とか、出てくる人たちそれぞれがいろんな想い思い込みを抱えてばらばらに走りまくっていて、そういうなか、音楽は、歌はどんな救いをもたらすのか、或はそれがへたくそでレールから外れていったときに、なにが狂っていくのかいかないのか、狂っているってどういうことなのか、などなどがほんのちょっとの切なさと共に描かれる。  特に終盤の「奇跡」からラストまでのドラマときたら、それ自体がオペラのようだった。 - ていったら言い過ぎ?

オペラのヒロインのコスチュームを着てすっかり役に成りきったMargueriteの写真、でもその彼女の喉から奏でられる音が思いっきり外れてしまっているとき、その「外れ」がもたらすなにかって、いったいなんなのか? 降板? いったい何から? そんな簡単なものではないよね、とか、決して暇な田舎の金持ちが道楽で見て見て聴いて! てやっているだけではない、Margueriteの音痴にはひとをそんな思索に向かわせるなにかがある、というか。 そもそも音程とか音調が合ってしまうことの奇跡というか。

Margueriteのモデルとなったのは実在したアメリカ人のFlorence Foster Jenkins (1868-1944)ていうおばさんで、レコーディングまで残っていて、こっちのお話しはStephen Frears監督、Meryl Streep主演でもうじき出てくる。

ほんもんの方がこうして作られるんだったら、20年代のパリにもうちょっとフォーカスして、”Midnight in Paris” (2011)みたいに実在のアーティストをぱらぱら散りばめてもおもしろかったかも。
(出てきたのはチャップリンくらい?)

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