3.08.2015

[theatre] A Streetcar Named Desire

6日の金曜日の晩、日本橋でみました。
ここでたまにやっているNational Theatre Liveのシリーズは行きたいと思いつつ行けてなくてようやく。 チケット取ってから上映(演?)が3時間以上(202分)あることに気づいてびっくりしたが、まったくもんだいなかった。

「欲望という名の電車」。上演はロンドンのYoung Vic、まえにOld Vicは行ったことあったが、Young、のほうはなかった。 Broadwayのだと、2005年に、Blanche: Natasha Richardson, Stanley: John C. Reillyていうのを見ている。

舞台には上に延びる階段、扉にリビング、キッチン、ベッドバスまで一通りの生活セットがコンテナのように置かれていて、これがまるごと、ゆっくりと回転していく。客席はそれを囲んでおなじ目線の高さから、或いは見下ろすかたちで彼らの攻防を見守ることになる。

原作のフレンチクォーターの一角のぼろ住居の、みっしりじっとりなかんじはあまりない。

Staley (Ben Foster)とStella (Vanessa Kirby)の夫婦が暮らすその住処に、Stellaの姉のBlanche (Gillian Anderson)がひとりよれよれと転がりこんでくる。
姉妹の実家はかつて裕福な地主だったが、姉のやつれようからすると、全部売っぱらってすっからかんのご様子。  でも態度だけは高慢でおしゃべりで鼻についてべたべただらだら酒びたりで、そのくせ愛ばかり求める彼女のステイは夫婦の間にも姉妹の間にも波紋を起こして、やがていろんな修羅場を呼んでくる。

全てを失ってもなお愛にしがみつこうとするBlancheと、そこから更に奪って搾りとろうとする野卑で野蛮なStanley、そんな彼を憎みつつも彼に支配され、姉を庇いきれないStella、この象徴的な三者の三つ巴の闘い - としか言いようがない - がぐるぐる回る舞台上で執拗に反復され、その挙句に狂気に堕ちるBlancheと、それでもやはり残るものは残り、伝染するものは −

このテーマ設定は原作が書かれた当時よりも間違いなくアクチュアルに、というか単により多く曝されるようになっただけかもしれないけど、すぐそこにあるやつで、「欲望」という名の電車に乗って「地獄」という名の電車に乗り換えて6つ目の角にあるはずなのに決して辿り着けそうにない「極楽」、みんなが知ってるのになぜ、なお。

皮膚の裏側までキズだらけトゲまみれのようなBlanche - Gillian Andersonと全身分厚いゴムの筋肉とタトゥで覆われているようなStanley - Ben Fosterの絡み、特にふたりが闇のなか最後に対峙する場面の殺気はとんでもなくて、あれ、客席からみたら格闘技のように見えたのではないか。

音楽はこの作品のために作られた伴奏もあるのだか、決定的な場面では曲が鳴る。
PJ Harveyの”To Bring You My Love”、Chris Isaakの”Wicked Game”、ラストにはCat Powerの”Troubled Waters”が。 そして吼えるようにSwansの強烈な轟音。
なかでも愛欲と憎悪、野蛮の間で鳴り渡るPJの曲のはまりようときたら。

カメラは定点ではなくて複数、基本は喋っている人物に寄っているのでどうかしら、だったのだがあんまし気にはならなかった。 この作品の場合はこれでよかったけど、劇作の内容によるよね。
どちらにしても映画の画面を見るのとは全然違う経験。

次は5月の”Of Mice and Men”だね。 これはぜったい。

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