7日の日曜日の朝、シネマヴェーラの「映画史上の名作9」で見ました。『天使』。
ルビッチを35mmプリントで見れるのであれば、それはなにがなんでも、どんなもんでも見るんだ。
第一次大戦開戦前夜、マリア(ディートリッヒ)が仮名を使ってパリのホテルにチェックインして、そこからロシア大公妃おばさんがやっている怪しげなサロンに出かけて、そこに来ていた軍人のトニー(メルヴィン・ダグラス)とドアの開け間違いのようなかんじでぶつかって、デートをする。 お食事してヴァイオリンの演奏聞いてロマンチックの潮が満ちて、夜の公園でこれから、というとこで彼女は忽然と消えてしまう。 彼女が残した名前は"Angel"とだけ。
舞台はイギリスで、彼女の夫フレデリック(ハーバート・マーシャル)はSirが付くくらいのばりばりの外交官で、お屋敷も使用人もいて裕福で、夫婦仲もぜんぜんわるくはなくて、妻は不平をもらさないし、夫は妻が幸せだと信じて疑わない。 そんなある日、夫が旧友のすごいいい奴なんだと言ってお屋敷に招待したのがトニーで、お互い目を見てすぐに察するのだが、とりあえずしらばっくれるその裏側で男二人と女一人の間で手裏剣の投げ合いがはじまって、これがすごい。
フレデリックは自慢の妻マリアをトニーに紹介してお互い仲良くなってもらいたいねーえへん、と言い、トニーはそりゃ心底仲良くなりたいけど、そのままいっちゃってよいんですかという目でフレデリックを見てから、べつにいいみたいだけどどうする?とマリアを突っつき、マリアは調子に乗ってんじゃねえばれたらてめー両サイドから串刺しで地獄に堕ちるぞ、という目でトニーを見て、夫にはあんたがこんなあけっぴろげのお人よしだからこんなことになってんだよわかってんのかボケ、と夫をにらむ。
犬(フレデリック)と猫(マリア)と爬虫類(トニー)のやりとりで、先のみえない神経戦の空中戦がじりじり続いて目が離せない。
さいごは再びパリのサロンで、各自最後の決着をつけるべく見届けるべく、それぞれに現地に出張っていって、そして。
ドアの向こうから誰がどんな顔で現れるのかですべてが決まる。 そのスリルと恐怖(or 歓喜)ときたらはんぱなくて吐きそうになる。
絶交だ、お家断絶だ、切腹じゃ、とわーわー騒ぎたてる男性陣を冷たく一瞥し、ディートリッヒは "This is where I belong"とか言い残してドアの奥に静かに消える、というのがいちばんかっこいいシナリオだとおもうのだが、当然そうはならないの。 そのへんのぐにゃぐにゃ柔らかくやさしいとこも含めて、ルビッチなの。
第一次大戦は回避できなかったが、こっちのはできた。 ディートリッヒさんはふん、て言うかもしれないけど、これはルビッチのお手柄なの。
7.16.2013
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。