9.04.2012

[film] Cosmopolis (2012)

火曜日の夕方、映画を見るためにいちいちシアトルに通っていたらお金がなくなってしまうので近隣で探さねば、と思っていたらホテルのすぐ裏にIMAXつきのシネコンがあるのを発見した。 
ホテルとも一体になったコンプレックス施設で、2階にボーリングとゲーセン、3階がシネコン。
でも、どの映画も最終の回はだいたい22:30くらい。 つまんない。

で、水曜日の晩にそこで見ました。
原作はDon DeLilloの(読んでない)。
22:10の回、客は自分をいれて2人だけでした。

近未来のマンハッタンで、金融でビリオネアになった主人公(Robert Pattinson)が自身のロングストレッチのリモでマンハッタンを横切って床屋に行く、という。 お付きは丁度今大統領が来ていて道路が渋滞してて動かない、と止めるのだが、いや、行く、といって車を進めるの。
で、そののろのろ進んでいく車中で(時折車の外で)、どこから来たのか得体の知れない人たちと、いろんな、抽象的な対話をしたり、交尾したり、放尿したりする。

最初のうちは自分がなにをどうしてこうなった、ような独り言に近いあれこれをとりとめもなく話しているのだが、途中でOccupy Wall Stのようなデモ隊の抗議に巻きこまれ、世界の、世界の突端にあるこの街をぴかぴかのリモで安全に移動している自身の位置を再確認し、でもそれは内省とか懺悔とかには向かわずに、ぎらーんとした暴力への衝動のようなとこに彼を追いたてていく。

車中の人物として登場するのは、Juliette Binoche(いきなり後背位で。わざとかもだが、あまりうまくない)、Samantha Morton、パイ投げのアナーキストにMathieu Amalric、などなかなか豪華。最初のほうの思弁的な会話は、- これもわざとだろうが - 脚本を棒読みしているかんじで、それらしい臭気は漂うものの、これがCronenbergだろうか?  という感が漂いだしたあたりで最後の15分くらい、Lower Eastの廃墟のようなアパートの一室でのPaul Giamattiとの最終対決で突然ギアがはいる。 映像のテンションもモードも鮮やかに反転する。

Paul Giamattiの役は元アナリストで今は完全に堕ちて鼠のような暮らしをしている「敗者」で、彼は明らかに「勝者」であるRobert Pattinsonを殺そうとしている。

昨年の"A Dangerous Method"は、見た当時は面白いと思ったものだったが、あれ、今となっては印象に残っているのはKeira Knightleyの下顎だけだったりする。 よくもわるくも。

で、この映画では、この最後のとこだけ、" A History of Violence" (2005) ~ "Eastern Promises" (2007) にあった暴力の突発的噴出、その予兆、みたいのに溢れかえり、主人公自身の言葉で"Violence"と"Crime"に関する定義が語られる。 「我々はなぜViolenceを求めてしまうのか」のようなところまで。

主人公の大金持ち役には当初Colin Farrellがキャスティングされていたらしいが、Robert Pattinsonくんもなかなかわるくない。この人、きりっとした顔のときもあるのだが、たまに蠅がぷーんて集っていそうな死人顔を見せることがあって、その汚れたかんじがなかなかすてき。

音楽は前作に続いてベースがHoward Shoreで, でもメインのテーマはMetric。
遠くで鳴っているマシンビートが前面になだれこんでくるところはこのバンドならでは。

そして、フランス、カナダ、ポルトガル、イタリア資本で作られた映画である、ということ -

あと、Pollockで始まってRothkoで終わる、そういう映画でもあるの - モダンアートは衝動をいかに平面に塗りつぶしていったのか - とか。


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