9.09.2012

[film] August 2012

シアトルに行く前に見たあれこれをまとめて書いておきます。

18日の土曜日、アテネでのルートヴィヒの後、『カール・マイ』182分に突入する覇気はなかったのでシネマヴェーラに行って古典2本だけにしておいた。

The Maze (1953)  『迷路』
カンヌで婚約者とその伯母と婚前バカンスを楽しんでいた男のとこに連絡が入って、スコットランドの古城にひっそりと住んでいた伯父が亡くなったので、至急戻れと。
彼が戻ったあと音信が途絶え、突然婚約も破棄されてしまったので、娘と伯母はスコットランドのお城に乗りこんで行くの。 再会した婚約者はやつれて老けてしまっていて、怪しげな執事とか召使いもいて、すぐ帰ってくれとつんけんされるのだが、ここには何かあるわ、と残り続けるの。
そこでみんなが見たものは…  (ちょっとびっくらした)

短いけどすごくきちんとまとまってて面白かった。リリース時の3Dで見たい。
あとこれ、パーフェクトな坂田靖子ワールドだったかも…

A Girl in Every Port (1928) 『港々に女あり』
船員のSpikeが着く港々でかつて仲良くした女たちのとこに行くと、みんな既にある男のマーキングがされていてあったま来るのだが、そいつとやがて仲良くなって最強無敵の二人組になるの。そうしているうちに宿命の女が現れるの。 
港(D)と酒場(B)と喧嘩(G)と女(K)、これに男ふたり(Vo)。 他にはなんにもいらねえ。 
他にいるものがあるなら言ってみろ、という強さで鳴り続けるバンドの音。 サイレントだけど。 

Louise Brooksの顔がVictor McLaglenの顔の半分くらいの大きさしかなくて、驚嘆。
喧嘩のシーンはほんと惚れ惚れかっこいいねえ。

19日の日曜日、新宿で見ました。

鐡三角 (2007) 『強奪のトライアングル』
ツイ・ハーク、リンゴ・ラム、ジョニー・トーの3人がこの順番で30分づつ撮って繋いだ1本。
切れ目がどこにあるのかぜんぜんわからないし、最初の2人の映画的特性を知っているわけではないのでしょーもないだろ、なのだが、そんなのぜんぜん気にならないおもしろさ。

貧乏で冴えない3人組が、やくざから宝石店強盗に誘われたりしつつ、安酒場で怪しげな老人に怪しげな財宝のありかを示されて、掘りあててみたらこれが大当たり、そいつを巡ってやくざと悪警察と彼らの間で鍋底をひっかきまわすような三つ巴の追っかけっこが繰り広げられる。
 
強奪の三角形は、その財宝を巡ってのそれでもあるし、微妙に捩れてしまった過去とか家族とか、そういうのを取り戻そうとするあがき、でもあるの。
いろんな三角形があちこちにあって、その三角がぱたぱたぎこちなく転がっていく。

アンカーのジョニー・トーのパートはやっぱし彼としか言いようがなく、あたまから例のでぶさん(ラム・シュー)がぜんぶ持っていって、最後は草むらを這いまわってのどんぱちで、たった30分でもやるんだねえ、としみじみ感心した。

なんでこんなに面白くできるかねー、なんだろうねー、と呆れて見るしかないの。

25日、"Twixt"の後で渋谷に移動して見ました。

The Southerner (1945) 『南部の人』
誰もが知っている、ルノアールのアメリカ渡米後の第一作。
アメリカ南部で、綿花の雇われ農家をしている一家で、叔父さんが過酷すぎる労働で死んじゃったのを機に自分で畑借りてやってみよう、とずっと耕されていなかった場所に引っ越してきたものの、家はぼろぼろ穴だらけの廃屋で(下見とかしないのね)、おばあちゃんは拗ねて家に入ってくれないし隣人は井戸も貸してくれないし、それでもみんなで力を合わせてがんばってようやく収穫の季節を迎えたと思ったら大嵐が来てぜんぶおじゃんになるの。 さすがにもうこりは無理だ工場で働くだ、と思ったらCMみたいにストーブに火が入りましたよー、って奥さんに言われてもういっちょがんばるかー、って決意するの。 ほんとに心あったまるお話なの。

主人公の農夫の友人(都会で働いてる)が一家のお話を語る、という構成で、この友人がルノワールでもあるのね。

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