11.12.2023

[film] ゴジラ -1.0 (2023)

11月4日、土曜日の晩、109シネマズ二子玉川のIMAXで見ました。

もはや世界的ブランドとなってしまったゴジラの『シン・ゴジラ』 (2016)に続く本家からのリリース、生誕70周年記念作品、らしいのだが全く期待はしていない。昭和のシリーズが好きだから、というわけでもなく、最初期の数本が絶対だからというわけでもなく、『シン・ゴジラ』にあった単純な自衛隊万歳 - 日本負けるな、って歯を食いしばって突っこんでいくノリについていけなかったから。 最近のハリウッド版のほうが派手だし荒唐無稽でまだ楽しめるし。

今回のは敗戦によりすべてを失った日本をゴジラが襲う、と。 そいつはまじでやばいかも知れないな、って思って見に行ったのだが、基本はあんま変わらなかったかも。ポジティブ、なのかバカなのか。

冒頭、日本軍の戦闘機が修理工場のある島に降りたち、憔悴して具合が悪そうなその操縦士敷島(神木隆之介)は、機の具合がどうも.. って修理を依頼するのだが、飛行機はどこも悪くないのでひょっとして貴様は.. ってなった晩にその島を怪獣が襲い、敷島は機銃を撃つこともできずに立ち尽くしてそこにいた隊はほぼ全滅してしまう。

戦争が終わって敷島が焼野原の東京に戻ると家は燃えて両親は亡くなっていて、赤ん坊を抱えて彷徨う女性典子(浜辺美波)を見ていられなくて自分の掘立て小屋に住ませてあげると、その赤子も彼女の子ではなく、誰かから託されたものだという。そしてそんな彼らを横から見てられないよ、っておせっかい/助けにくる安藤サクラとかもいる。誰もがみんなすごくよい人たち。

働き口がない中、お金にはなるから、と海上に放置されている機雷を除去する仕事を見つけてきた敷島とその仕事仲間 - 吉岡秀隆、佐々木蔵之介等 - は、海上でゴジラに遭遇して、これが東京に上陸したら大変なことになるぞ、って戦慄するのだが、やっぱりゴジラは上陸してひと暴れして典子を彼方にふっとばして海に戻り、次の上陸はなんとしても阻止せねば、ってみんなで知恵を絞って作戦を立てる。

戦争に負けてからっけつの日本の軍と助けに来てほしい米軍はソ連を刺激したくないから、と動けないし動かないし。自分たち有志で(→ いまのクラウドファンディングみたいに)なんとかするしかないんだ、って残っていた船とかゴム会社とか終戦間際まで開発中だった戦闘機とかを総動員してその時を待って..

1954年の第一作で原爆の脅威と恐怖そのものだったゴジラは今作では(日本が)克服すべき敗戦のトラウマ、でしかなくて、ここでやっつけなければ自分が死ぬしかない、だから「生きて、抗え」で結局誰ひとり死なないし、こんなこともあるから自衛の軍は持たなきゃいけないし(→ 自衛隊)、こんな安っぽいプロパガンダに使われてしまうゴジラが本当に哀れでかわいそうだ。

米国の核実験の話は出てくるけど、広島・長崎に原爆が落とされたこと、なぜ日本がこんなことになってしまったのか、自分たちがトリガーを引いた戦争についての言及はない。いつまでたっても”Oppenheimer” (2023)の公開がされないのは、これとの対比で語られることを嫌がったのだな、としか思えない。

子供の頃(リアルタイムではないよ)に見た54年版ゴジラでの芹沢博士の自死は、本当にショックで理不尽で怖くて、でも彼の抱えていた絶望はなんとなくわかった。今作でなんで主人公たち誰もがあんな元気にがんばって生きようとしているのか、自分にはよくわからない。それはいまのこの国がそんなふうにあることへの気持ち悪さにも繋がっていて、なるほどな、しかない。

俳優さんはみんな「熱演」だと思うけど、どう呼んでよいのかわからない少年漫画みたいな「なんでだぁー拳」のような演技スタイル & キャラクターの置き方 - 女性はほぼだいたい女神 - がぜんぜん好きではないし、昔の映画を見てきて、あの時代の人たちがああいう喋りや振るまいをするとは思えないので、どうかなー、とは思った。 あの時代の人たち、でいうとみんな - やたら「みんな」のように括りたがる傾向も含めて - 穏和で秩序を重んじて助けあうよい人たちすぎるし。『風の中の牝雞』 (1948)の鬼畜みたいなありようの方がふつうだったのでは。

怪獣の描き方はよい、すごい、って言われているようなのだが、そもそもこれって怪獣映画なの? ただ怪獣を仮想敵に置いただけの 「自衛隊 1.0」じゃん。

そんななか、伊福部昭の音楽だけは変わらずに最強なのだった。


あー LITURGYみたかったよう…

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