7月8日の金曜日、会社を休んで見にいった「コジコジ万博」と「Gerhard Richter展」の隙間にTohoシネマズ新宿で見ました。
監督は”Doctor Strange” (2016) のScott Derricksonで、彼は次に控えていた”Doctor Strange in the Multiverse of Madness”を蹴ってこっちを作ったそうで、原作はJoe Hillによる同名の短編。
1978年、デンバーの郊外の町に住む小学生のFinney (Mason Thames)は少年野球のピッチャーで、試合の土壇場で勝負に出たら日系の子に打たれてあーあ、になったり、学校でやな連中に虐められているところをメキシコ系の子に助けてもらったりしているのだが、彼らが突然失踪して町中に捜索依頼の貼り紙がでるようになり、事件に繋がっていると思われる不思議な夢を見る妹のGwen (Madeleine McGraw)と一緒に風船男のことを心配し始めるのだが、いつも酔っ払っている父親(Jeremy Davies)はうるさい、って相手にしない。
そうしているうちにFinneyは気がついたらそこにいた風船をもった男 = The Grabber (Ethan Hawke)に一瞬で捕まって車に押し込まれ、抵抗したけど拐われてどこかの地下室に閉じこめられ助けを求めて叫んでも逃げようとしてもなにやっても無駄だって言われる。部屋にはコードの切れた黒電話があるくらいでドアにはカギがかかっていて、窓は高いところにしかなくて始めのうちはいろいろ試みてみるもののぜんぜんだめで、自棄になっているところに黒電話が鳴る。
その電話に出ても向こう側の音や声は明らかに異世界の異様な空気感でもって伝わってきて、電話の向こうで喋る方もはじめは自分が誰だかわかっていないらしく、自分の名前すら憶えていない。 Finneyも最初は相手にしないのだが、その声がひとりではなく代わりばんこで複数いて、順番に失踪した子供たちの声であることに気付くと彼らのアドバイス - カーペットをたてかけろ、穴を掘れ、こうやって戦え、などなど - を聞いて従っていくようになる - うずくまって泣いていたってどうにもならないし。
でもGrabberの方も間抜けなようでいてバカではないらしくFinneyの企ては端から潰されていって、でも黒電話からの指示にもなんとなく手応えを感じられるようになり、他方でGwenは警察を巻き込みながら場所に繋がるような夢を見たい/見れれば - なのだが夢頼みというのが厳しくて、 でもなんとか場所のあたりがついてくるのと、そうは言ってもGrabberがFinneyを料理してしまうその時が..
繋がっていないはずの不吉な黒電話が鳴って変な声が語りかけてくる、それだけでふつうの怪談ふうで嫌なかんじだし、その前には学校のいじめの結構陰惨な描写もあったりしたので始めのうちは見るのもきつかったのだが、幽霊の(幽霊になっていると思われる)子達がFinneyを励ましたり背中を押したりするようになり、悪玉のEthan Hawkeがクレバーなのかバカなのかわかんなくなってくるあたりから手に汗握るようになってしまった。
“IT”のピエロの底が抜けたような極悪の悪魔感とも、”The Stranger Things”のなにがなんだかわからない迷宮感とも別の、シンプルで小さい世界だけど突然誘拐されて幽閉されたらどう対抗する?/どう捜しだす? っていうテーマにうまく迫っていると思った。 と同時に、実際に消えてしまったままになっている/なってしまった可哀想な子供達や残された家族の悲嘆も強くわかりやすく見えてきて、それもまたきつくて悲しい。黒電話があってくれたら…
恋人たちのお話だった”Ghost” (1990)の子供達版のようなかんじもあって、でも”Ghost”がラストの切ないお別れに力点があったのに対して、こっちはありがとうがんばるから、になっている。
でも黒電話を通したまわりくどい現れ方をするくらいなら、不思議な力を持つGwenを使ってうまく立ち回ればよかったのに、とかわざわざリモートで出ないでその場にダイレクトに現れて”Home Alone”みたいに寄ってたかってEthan Hawkeをぼこぼこにしちゃえばよかったのに、とか。
あと、the GrabberってどうしてもJokerを思い起こしてしまうのだが、Grabberがなんでああなってしまったのか、について少しでも触れられる場面があったりしたらもう少し怖さや哀しみが増したかも、とか。
7.22.2022
[film] The Black Phone (2021)
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