9月10日、金曜日の午前、Metrographのバーチャルの一回きり上映会で見ました。
夏休みの2日目だったので、朝9時からのでも見れた。前の日に見たやつの重めのが残っていたのだが、スチールを見たら見たくてたまらなくなるやつ - なるよ、そんなOscar Isaac - だった。
こないだのヴェネツィアにも出品されたPaul Schraderの作/監督作品。”First Reformed” (2017)の次のー。
Executive ProducerにはMartin Scorseseの名前もある。
William Tell(自称)(Oscar Isaac)はポーカープレイヤーとして全米を渡り歩いているのだが、宿泊するモーテルに着くとまず部屋に貼ってある絵や飾りを外してどけて、ベッドや椅子や照明を持参した布と紐でぐるぐるに覆って縛って、カード賭場での「仕事」と食事やバーでの時間以外はその上で書き物したり寝たり、僧侶のようにものすごく潔癖で規律に貫かれた日々送っている。ギャンブラーのタイプとしては”Hard Eight” (1996)でPhilip Baker Hallが演じたSydneyのような。
彼自身のナレーションでカードプレイ - ブラックジャック、ポーカーからルーレットまで - の攻め筋とか決まっている極意のようなものを淡々と語りつつ、そんな彼のストイックな洞察や生活態度がどうやって生まれてきたのかについて、かつての刑務所での服役生活が語られ、更にそれをもたらしたアブグレイブの収容所で囚人を拷問してその様子を嬉々として写真に撮ったりしていた過去 - が語られる。
やがて途中で拾った若者Cirk (Tye Sheridan) -「カーク」だけど”C” - との会話から、CirkはTellと同様アブグレイブにいてその後逮捕されて自死した父親を持ち、その仇として当時収容所の上にいながら無罪放免となったGordo (Willem Dafoe) - 現在はセキュリティアドバイザーのようなことをやって稼いでいる – を付け狙っていることがわかる。
カードのトーナメントの資金調達をしてくれるかつての恋人La Linda (Tiffany Haddish)とCirkの3人でアメリカを旅して、緩く - 次はどこそこで会おう – 賭場に集まっては散ってを繰り返しつつ、全米から賭場に集まってくるいろんな人たち – “Mr. USA”っていう勝つと”USA! USA!”って雄叫びをあげるうざい奴 - とかを横目で見つつ、ひたすらカードに集中してカウンターに向かうTellの姿を浮かびあがらせる。
カードに向きあって集中して黙考する彼の姿は十字架に向かう聖職者のようであり、Edward Hopperの絵(になかったっけ?)に出てくるなにかを抱え込んで逃げられず動けなくなってしまった都市生活者のようでもあり、永遠に次のカードを待ち、その次をどうすることを考えることでのみその生を維持している人、のよう。
やがてトーナメントでそこそこの勝ちを収めたTellは、手元に貯めておいた札束の殆どをCirkに渡し、これで借金を返してオレゴンの母親のところに戻って一緒に暮らすように諭して別れるのだが、その後にCirkはGordoのところに向かって..
上映後の監督とのQ&Aでも指摘されていたように最後の方は”Taxi Driver” (1976)を思わせたりもするのだが、どちらかというと”First Reformed”の流れで、苛烈だった過去から逃れらないまま固まってしまった男がかつての自分のようになにかに憑かれて彷徨う若者の魂と出会って動揺しつつある行動にでる、そういうドラマ、なのかもしれない。”First Reforned”のEthan Hawkeが日記を書いていたようにTellはカード・カウンターに向かう。書くこととカードを待つこと、そして次の手 - 勝ち負けとは少しちがう決着をつけることについて。
それにしても、旅の最後に立ちはだかるのがまたしても加虐指向を煮詰めたような怪物Willem Dafoeであるってどういうことだろう。 ”The Lighthouse” (2019)で対峙するRobert Pattinsonのことも思うとほぼ定番の怪物扱いのような。
そしてEthan Hawkeのよい意味でのわかり易さとは反対側にあるOscar Isaacのよい意味での黒光りする不気味さと異様さ。
でっかい音で聴いたら気持ちよさそうな音楽は、Black Rebel Motorcycle ClubのRobert Levon Been、この人はPaul Schraderの”Light Sleeper” (1992)の音楽を担当したMichael Beenの息子さんなのね。
とにかく低気圧をなんとかしてほしいのだがそれ以上にー。
9.18.2021
[film] The Card Counter (2021)
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