2月23日、土曜日の晩、BFIのBarbara Stanwyck特集で見ました。邦題は『熱い夜の疼き』。
Fritz Langによるノワールで、冒頭のMontereyの波止場の描写でこれ見たことあったかも、て思ったが見たことなかった。たぶん。 でも… Fritz Langのって、おもしろくてもすぐ忘れてしまうのでほんとうのところはわからない。
朝の波止場にMae (Barbara Stanwyck)がどこからかふらりと気だるげに戻ってきて、弟で船乗りのJoe (Keith Andes)のところに転がりこんで、でも彼女はそれまでどこでなにをしてたのか過去のことは余り語りたがらなくて、そのうち弟の船の船頭のJerry (Paul Douglas)とデートするようになって、Jerryは昔から彼女に憧れていたこともあってぼうっとなって熱狂して、やがてふたりは結婚して女の子が生まれる。
そのうちJerryはMaeに映画館で映写技師をしている友人のEarl (Robert Ryan)を紹介して、なんか無礼で変な奴、と初めは敬遠しているのだが、EarlはMaeに自分とおなじ影とか博打気質とかスナフキン体質とかを見たようで、おまえはこんなとこで家庭に収まっているようなタマじゃないだろ、とか執拗に迫って誘うようになり、他方でJerryの子煩悩で家庭人としてのあまりの凡庸さ退屈さとか、Joeと彼のGFで缶詰工場に勤めるPeggy (Marilyn Monroe)の青くいちゃつく様子とかを見ていると、だんだんいろんなことがバカらしくなってきて、Earlと一緒に外出することが多くなり、やがて..
フィルム・ノワールと言われているにしては殺人もあからさまな暴力もないし闇の犯罪集団が出てくるわけでもない、筋だけ追ってみればどこにでもありそうなひと時の家族ドラマでしかないのかも、だがそれだけのお話をそのうち大量殺戮でも起こるかのような怒涛の殺気と緊張感 - 人物配置だけじゃなくて、海辺の朝夕の光とか雲の様子とか湿り気を帯びた波風とか – も含めて描いていて目を離すことができない。そしてタイトルは、”Clash by Night”。
小さな映写窓から日がな映画ばかり見ていて、ここはオレの居場所じゃない、オレはきっとそのうち.. とかそんなことばかりぶつぶつ言ってて、ふたりになるとやさしいし奢ってくれるしちょっと陰があって見てくれも悪くないからくっついてみると、実はネトウヨのレイシストのDV野郎で、ストーカー気質でどうしようもなかった、って、現代にっぽんにもものすごくいそうでありそうなリアルさと、それだけじゃなくて実際に絡まれて噛まれて毒を盛られてだんだんに感染して麻痺して周囲がどうでもよくなっていくそのかんじがとてつもなく怖い。 ホラーとしか言いようがないくらい。
Earl - Robert Ryanのクールで得体の知れない爬虫類の触感も、Jerry - Paul Douglasのホットでなりふり構わずのおっさんの体臭もたまんないのだが、そのふたりの間と負けてばかりだった自分の過去、自分の娘との間と、なによりもあんたそもそもなにをしたいのよ? の間で引き裂かれながらも、どっちを選ぶとかどっちに付く、ではなく、何度ものClashを繰り返しながら最後の最後にばん! って自分で自分の結論を出すBarbara Stanwyckさんがいつものようにかっこよすぎる。
一番最後に一瞬彼女が見せる笑顔がとても素敵で、それってもろ”Stella Dallas” (1937)にあったあの笑顔なの。
数年後、彼女が大阪のおばちゃんみたいになっていてもちっとも構わないわ。
3.05.2019
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