3.23.2019

[film] Girl (2018)

15日、金曜日の晩、CurzonのSOHOで見ました。初日、だったのかな?
2018年のカンヌでQueer Palmていうのを受賞しているベルギー/オランダ映画。

手足の長いLara (Victor Polster)がバレエのレッスンをしているところが冒頭で、そのレッスンを見た教師は、難しいところもあるけどまずは7週間様子を見ましょうか、という。暫くするとLaraはtansgenderの元は男子で、医師にかかりながらホルモン治療をして性器切除を準備していることがわかる。家族は父Mathias (Arieh Worthalter)とまだ幼い弟のMilo (Oliver Bodart)が一緒で、ふたり共Laraのことを常に考えていてとても暖かい。

Laraは7週間のレッスンをクリアして次の一年間、スクールで本格的に学ぶことになるのだが、女子であればできているはずのPointeの基礎がない、ということで爪先を血まみれにしながらの特訓が続いて、でもバレリーナになるのが夢だから歯を食いしばる。

更衣室もシャワーも女子用なので少し気がひけて隠したりしていると女子からの虐めにあったり、男子を好きになったほうがいいのか、と無理して向かいのアパートの男を訪ねてみたり、レッスンのストレス以外にも辛いことが重なって食べれなくなり、食べないと体力が続かずにレッスンについていくのが難しくなり、これ以上体重を落として体力がなくなると次のステップ(切除)に進むのは難しい、と医者に言われて塞いで暗くなっていって。

最後にLaraはあんなことをしてしまうので決して明るい話ではないのだが、それでも最後までバレリーナへの夢に向けて火花を散らして負けないから、どよーんとしてしまうやつではないし、ラストシーンはちょっと清々しさすら感じさせて、よいの。

transのひとの悩みや痛みが生々しいくらいに伝わってきて、勿論それが当事者の目線でそれなりに正しく適切に描かれているのか、について議論あるのかもしれないけど、彼女が父親になんでもかんでも「大丈夫か?」ばっかり言うな、って噛みついて喧嘩するところとかはとてもよくわかる。 悩みって、あんたにわかってたまるか、と、じゃあどうしろってんだ黙ってるわかにいかない、の狭間に落ちるのよね。

実際に米国ではtransの批評家がレビューでこき下ろして評価はガタ落ちしたらしいのだが、でもどこがひどいのかよくわからないくらい、悩み苦しむ若者の像としては(変な言い方だけど)よく描けていると思った、よ。 ”On the Basis of Sex”は法における性(差)、の話だったが、こんなふうに内面に顕在化してくる性差の話は複雑で厄介で、結局はひとりひとりのこと、になってしまうのか。 いや、でも、だから、こういうのこそ社会が最低限のケアや受容はできるようになっていないといけない気がする。

Laraを演じたVictor Polsterさんがとにかくすばらしいのだが、Laraには実在のモデルのひと - Nora Monsecour - がいて、クレジットはされていないものの脚本には全面参加していて、彼女はまだダンスを続けている。その辺のことが書かれている監督のインタビューはここに。

https://www.theguardian.com/film/2019/mar/12/lukas-dhont-defends-his-trans-film-girl-victor-polster-dancer

あとは、バレエのレッスンのシーンがよいの。LaraをつきっきりでコーチするおばちゃんはMarie-Louise Wilderijckxさんていうコレオグラファーで、”Suspiria” (2018)のもこれくらいシャープだったらなー、とか。

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