1.24.2019

[music] Frederic Rzewski

10日、木曜日の晩にCafé OTOで、今年の初ライブを。2 days公演の初日。
Frederic Rzewskiのことはおおお昔に高橋悠治や三宅 榛名の本で読んで知って、『不屈の民』とかは聞いたことがあったのだが、まだ存命で(失礼よね)Café OTOみたいなとこ(失礼よね)でライブをやっているなんて知らなかった。

見た目はふつうのおじいさんで、ピアノの前にすたすた歩いていって、楽譜を広げて弾き始める。本を読むみたいに、穴が開くくらい食い入るように楽譜を見つめて、一音一音考えながら確かめるように指を置いていって、これ自分で作った曲だよね?  と思うのだがとにかく尋常ではないテンションで譜面を見つめ、けっか叩きだされるタッチも踏みこまれるペダルもすばらしい強さと硬さ。弾き終わってから大きな声で”Winter Night”と曲名を告げるとその場にいた全員が「ふぅー」って溶けた。

もう一曲やってからDuoの共演者のJan Rzewskiさん(彼の息子)がテナーサックス(よね)のソロを披露して、結構長めの休憩に入って、ふたりのDuoになるのだが、曲に入るまでの親子のやりとりが、日々のキッチンでのやりとりみたい(「これ塩の瓶だっけ?」〜「ちがうよ小麦粉だよ」)で面白くて。(ふたりのやりとりはフラマン語?イタリア語?)

Steve Lacyの作品 - NYのLiving Theatreの創設メンバーで詩人のJudith Malinaの詩をもとにした曲をやります、と言ってSteve Lacyとの思い出も少し話してくれた。 Steve Lacyとのリハーサルは厳格を極めてどんな轟音や騒音のなかにあっても元の譜から外れたテンポや音を出すことは許さなかったと、あれでドラッグをがんがんキメながらやってたっていうのが未だに信じられないって。

こうしてふたりのDuoは(親子だからなんていう必要は勿論なく)げんげん、かんかん、さーさーした硬い音同士のぶつかり合いと、衝突がもたらす空間の歪みと拡がりが見事で、最後にペダルを思いっきり踏みこんだピアノにJanが音を吹きこんでみるとその余韻がふぁーんとあたりに舞い散って、ああ冬だ冬だわ、ってがたがた震えながら帰ったの。

Ensemble Modern: Rebecca Saunders Portrait

19日土曜日の晩、BFIの隣のQueen Elizabeth Hallで”That Hamilton Woman”を見たあとに駆け込んで30分遅れだったけど、見ました。(ちゃんと時間確認しろって何千回言ったら..)

SouthBank Centreではどういう趣旨のかきちんと読んでいないのだが、”SoundState”ていう現代音楽に特化したフェスティバルを1週間くらいやっていて、その一部。 この回のRebecca Saundersの他にはClaire Chase, Du Yunといった作家を紹介していて、どれも知らない人たちばかりでおもしろそう。 Rebecca Saunders さんは英国のひとで、丁度1週間くらい前に女性で初めてErnst von Siemens Music prizeていうのを受賞した、という記事を読んで、取ったの。(そしたら重なってたの) お代は£15だったし。

現代音楽は、クラシックやJazzとおなじようにたまにとっても聴きたくなって聴いたってわけわかんないのだがなんかすごいーって震えて帰る、というのを繰り返してこんにちに至る。

演目は”Skin” - for soprano and 13 instrumentsというやつで、sopranoのひとはベケットの”The Ghost Trio”とジョイスの” Ulysses”からMolly Bloomのモノローグを読みあげるというか歌うというか唸るというか、ヒトのそれとは思えないような声も含めて発していて、楽譜にはどんなことが書いてあるのか – それを言うなら13人全員の分はどうなんだ、という他ないくらいに液体みたいに伸びて縮んで沸騰して蒸発して散っていくばらけた音のてんで勝手な渦巻きがスリリングで、とにかくとってもおもしろかった。

そしてこちらも冬の音としか言いようがない冷たさなのだった。

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