2019年の新作映画のこれがいっぽんめ。2日の昼にCurzonのBloomsburyのいちばんでっかいRenoirていうシアターで見ました。
あのYorgos Lanthimosが撮った時代劇、ということでおもしろいかも、と思ったらやはりなんかおもしろかった。問答無用におもしろい、というよりなんか歪すぎてついじっと見入ってしまうかんじ。
18世紀初、フランスと戦争をしていた頃のイギリスにQueen Anne (Olivia Colman)がいて、政治とか統治にはあまり興味ないようで痛風でひーひー泣いたり喚いたりしながら飲んだり喰ったりアヒルのレースしたりうさぎ17匹飼ったり(いいなー)したい放題で、実際に政治のとこを仕切っているのは側近のSarah Churchill (Rachel Weisz)で、女王にはアメとムチを使い分けながら手懐けて調教してあれこれ掌握しきっている。
その宮殿に貧しい娘のAbigail Hill (Emma Stone) – Sarahのいとこで父親がばくちで破産 - が職を求めてやってきて、一番下層のメイドとして雇ってもらうのだが、炎症で痛んだ女王の脚を森から摘んできたハーブで治したらそれが女王の目に留まって、雑魚寝だったのが部屋を貰ってお気に入りとしてだんだんにのしあがっていく。
政治的なところで戦争も税金もぐいぐい攻めていくSarahと、その剛腕をなんとかしたい勢力 - Robert Harley (Nicholas Hoult) がAbigailに近づいていくのと、当然のことながらSarahとAbigailの”All About Eve”な確執と、そんなことよりあたしを見て構って遊んで、の女王の愛欲 - プラトニックだけじゃない - を勝ちとろうとするぐるぐる三つ巴の戦いがあって、ついにはお茶に毒を盛るようなところまで行って。
そういうお話しを歴史のうねりみたいなでっかい出来事に絡めて波しぶきどどーんてドラマチックに描いていくのではなく、お座敷・ちゃぶ台みたいな小さく閉じた場所でのちっちゃなささくれとか引っ掻き傷 - ちまちまお飯事として並べていって奇怪な宮廷変態絵巻 - 見方によってはじゅうぶんアートよ - として見せようとする。宮廷アートものとして”Orlando” (1992)あたりに近いかんじもあるけど、よく見れば随分ちがう。(今日BFIで、英国宮廷ドラマの古典 - “The Private Life of Henry VIII” (1933) - を見てきて、すごく面白かったのだが、これとの違いについても考えたい)
Yorgos Lanthimosの現代劇 – “The Lobster” (2015)や”The Killing of a Sacred Deer” (2017) - にあったしれっとした顔でとんでもないところに突き落とすような作劇はなくて、全てが先に書いたような壁で囲われた図書室とか寝室とかそういう密空間 - 壁にはタペストリーや肖像画や彫刻がごてごて並んでいる - で気がついたら起こっていて、登場する人相や出来事は既に壁の絵柄模様として予め仕込まれているかのような、そんな空間を作りこんでいる。 お気に入りはSarahというよりAbigailというより、この部屋に籠ったウサギとかも含めたあなたとわたしの果てなくぬくぬくだらだらした時間と空間だったのよ、って。
いくつかのシーンでEmma Stoneの姿はそのままタペストリーのなかにはめ込まれているかのように見えた。女王はそういうのに囲われて食べて飲んで吐いて寝て暴れて、そのえんえん止まない繰り返しのなかにいるだけだった。
3人の女優のトライアングルは見事で、最後は結局だーれも幸せにはならなかった、かのようなどんよりしたところに取り残されてしまうのもおもしろい。なんで仲よく調和できなかったのだろう? て問うと全員自分以外を指さすの。
"Disobedience"と"Favourite"、並べてみるとおもしろいかも。不服従と服従と、どちらもレスビアンもの、どちらもRachel Weisz。(ここの間に”Colette”を置いてみると更にまた)
英国に来ていろんなお城とかなんとか宮殿とかを見る機会が増えて、あの中の冷たそうだったり建付け悪そうだったり暗すぎたり眩しすぎたり、全体として居住めんどうそうな、そういうかんじがきちんと描かれているのはよいと思った。
あと、音楽も含めた音のやかましさ、アタックの強さ。この作品だけではないけど、この人独特のかも。
本をあんなふうに放り投げるのはやめようね。
1.05.2019
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